第60回 マンション防災を考えよう
マンション防災を実行する管理組合と自治会の関係
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
本日1月28日08時59分、東京湾を震源とする最大震度4の地震が関東地方で発生しました。
通常であれば普通に通り過ぎてしまうのですが、今回の地震では少し注意点があると思っています。
まず震源地ですが、東京湾の北部、湾の内側のあたりということです。この場所は首都直下地震の震源地予測として挙げられている場所で、ここで発生した最大震度4の地震がこの周辺の断層にどう影響するのかが心配です。
また、1月1日の能登地震の震源地は能登半島沿いの断層ですが、日本の上は地球のプレートが4つも境界を接しているため、能登地震がプレートに影響して関東にもひずみ等の影響が出ているとしたら、今後はもっと大きな地震が発生する可能性もあり、大変心配になるところです。
今後も小さな地震なども見逃さず常に意識して災害に対する準備をしていきたいものです。
さて今回は、マンションの防災を担う組織は管理組合なのか自治会なのか、組織はどうすればよいのかについて考えていこうと思います。最近、あるマンションの自治会の方より、防災活動に利用する情報共有サービスの導入に際し、自治会、理事会、総会と決議決裁が段階を追っていかなければならないことについての相談をいただいたことがあります。
この連載の中でも、以前に組織論について考えた事もありますが、少し整理しながら考えていきましょう。
分譲マンションでは、それぞれの部屋を購入した方(区分所有者)で組織する「管理組合」が自動的に結成されます。その管理組合がマンションの管理運営を行っていくので、当然ながら防災活動も管理組合が主導することが求められます。
ところが、マンションではその管理組合とは別に主にマンション居住者、周辺地域との連携を担う自治会という組織が同時に存在する場合があります。ほとんどは管理組合の結成よりも後に、地域の要請に応じて、もしくはマンション内で自主的に結成されます。
では、防災活動についてはどちらが担うべきなのでしょうか。
これは、究極を言えばどちらでもいいと思います。
管理組合が担う場合は、予算の確保・使用を含めてマンション内の組織が簡素で分りやすいですが、その分管理組合理事の負担が大きくなる、理事が持ち回りの場合は継続した活動が難しくなるなどの一面もあります。
また管理組合で活動する場合に、管理組合直下の組織として「防災委員会」を立ち上げ、その活動を管理規約または使用細則などで規定して活動をすることで、理事会の負担軽減と継続的活動を狙う場合も多くあります。
対して自治会が担う場合、管理組合理事会とは同時並行で別の組織として活動する為、コミュニティ活動を主に自治会で担う場合は理事会の負担が軽減される、コミュニティ活動が継続的、また活発印活動できるなどの良い点がある一方、予算に関しては管理組合の管理費から拠出しなければならない場面も多く、手続き上、自治会・理事会と両方の決議決済が必要になるなど手間がかかることもあります。
どちらのケースもあるので、マンションごとに地域の中での自治会・町会との関係や、普段のコミュニティ活動の頻度、規模、メンバーなどによって決めるのがよろしいかと思います。
少し違った目線でのポイントになりますが、準備活動を行う組織の主要メンバーが災害時にマンションにいない場合も考えられるため、自治会の中で会社等を引退した方を中心に進められているケースも結構多くあります。またその場合、発災時の災害対策本部の設置も円滑に進む可能性が高くなりますので。そのような点もマンションの居住者構成、環境により判断材料としてはあるかもしれません。
ちなみに、もうひとつ考慮する要因となることとして、マンションの所在する自治体(市区町村)ごとに、現在は自主防災組織(名称はまちまち)の結成を推奨していると思いますが、その登録にあたっては地域の自治会・町会を基準としていてマンション管理組合単独での組織登録を認めていない場合もあるので、その条件に沿うために自治会として組織を結成する場合もあります。
どのケースにしても、マンション居住者のコミュニティを基盤とした災害時の助け合い(共助)の環境を整えるということを目的として活動を実現することが求められるので、そこを総合的に考慮して組織を結成しましょう。
今回はここまでです。
次回は、マンション防災活動を組織的に行うには規模が小さくて継続して担当するものがいない、負担が大きい、というマンションの防災活動について考えていきたいと思います。
また次回以降も引き続きご覧いただければ幸いです。
マンション防災研究所 所長 城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?