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第32回 マンション防災を考えよう

災害時の情報共有システム3

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
マンション防災を考えるこのシリーズ、現在は災害時の情報共有システムの必要な機能、要件について考えています。

今回はその3回目として、災害時の情報共有の入口、安否確認です。
マンションをはじめとして、防災活動を考えるときには最初に安否確認から考え始める方が多いのではないでしょうか。
もちろん、災害発生時に最初に確認をしなければならないのは家族の安否確認です。これは、一番身近にいる家族が互いに安否を確認し、命を守る行動を取る事が必要だからです。
でも最近は、家族が一番身近にいるとは限りません。現代では、勤務先、通学先、出張先、旅行先、すべてが短時間で遠方まで行けるため、災害発生時に家族と対面で確認し、必要な時に直接自分の手で救助を行うことは難しくなっています。

東日本大震災以降、日本では爆発的にLINEが普及し、今はほとんどの家族が災害時の安否確認はLINEで行うことができるようになっています。

しかしながら、LINEでできないことが大きく2つあります。
一つは、スマートフォンを持っていない高齢者やお子様、要配慮者の方などはLINEを使えないということです。
もう一つは、家族でLINEで安否を確認した時に、安否の「安」、備時だった場合は問題ないのですが、安否の「否」、助けが必要な状態だった時です。もしもあなたが外出先、勤務先などに居て、自宅の家族が「タンスに挟まれた。助けて!」と連絡が来たらどうしますか?

災害発生時に外出先、勤務先に居た人は、「3日から7日間は移動しない」というのが現在の行政の指導です。すぐに帰宅できない、移動できないので、隣近所の家の人に連絡をして「ウチを確認していただけませんか?」とお願いをしなければいけません。
ところが、その隣近所の方は顔も名前も知っているのに連絡先を知らない場合が多いのです。これは一戸建ての住宅にお住いの方より、マンションなど集合住宅にお住まいの方がその傾向が強いようです。

そんな時にでも隣近所の方に連絡ができる仕組みやツールがあると便利ですね。
もちろん、一つ目のLINEでできないこと、スマホを持っていない人も安否確認ができる手段というもの、同様に必要なことです。

これは、特にマンションではそうですが、防災活動を考え始めたときには必ず課題として壁になってくるものです。そのような相談、悩みを多数のマンション管理組合様、防災委員会様からおうかがいしてきました。

これも重要な災害時の情報共有システムに求められる要件・機能です。

ちなみに、あるマンションの方からこのようなご意見をいただいたことがあります。
「マンション内の人の安否確認は必要だが、マンション外に居た居住者の安否確認はする必要があるのか?」
さて、みなさんならどう考えますか?

私はこう思います。
熊本地震の際に、マンション内で各住戸のドアをノックして安否確認をして回った管理組合様がありました。もちろんほとんどが無事で玄関に出て来て確認をしたのですが、ある住戸がノックに応えず反応が無かったそうです。高齢者がお住いの住戸だったのですが、その住戸が、「外出中で居ない」のか「中で倒れているのか」の判断がつかず、困りはてた挙句、玄関ドアを壊して中を確認したそうです。
結果として外出中で無地だったので良かったのですが、ドアの修繕費で後々、大モメしたそうです。
このように、マンションの安否確認では、無事か救助が必要かだけでなく、【マンションに居ない】ことを確認、把握することも、とても大切なことなのです。
確かに外出先に居た方が救助を求めていてもその場には行けないでしょう。しかし、外出先に居るということがわかるだけで、マンションの防災活動、安否確認では次の行動に進めることにつながるのです。

またこのシリーズでは前に話したかもしれませんが、マンション内で亡くなる方、ケガを放置される方などをそのまま放置するようなマンションでは資産価値が下がりますし、避難所に支援物資の取り置きを依頼する場合にも人数、状態の把握は必要です。
このように、安否確認は災害時の行動の入口ですが、最重要なことでもあります。皆さんでよく考えて計画しましょう。

今回は以上です。次回はこの安否情報の共有について考えます。
今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングのご依頼をおまちしております。よろしくお願い申し上げます。

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