FUKAIPRODUCE羽衣 稽古場レポート③&糸井幸之介さんインタビュー

『女装、男装、冬支度』は、2014年初演のFUKAIPRODUCE羽衣の代表作です。
降り続ける雪が印象的な、真冬の愛の“妙―ジカル”。
生と死、生そして性、それらすべてを丸ごと肯定するような、悲哀と歓びに満ちた人間讃歌を、有り余る熱量で歌い踊り、どうしようもなくみじめでちっぽけな人間たちを大きな愛で包み込みます。

こちらのnoteでは、稽古の模様を全五回に分けてレポートします。

☆本記事の後半では、作・演出・音楽の糸井幸之介さんへのインタビューを掲載しております!
ぜひご一読くださいませ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『女装、男装、冬支度』稽古
7月8日(土)13:00~21:00(17:00より合流)

17:00~21:00
とあるシーンの稽古。

能島瑞穂(青年団)さんは今回が羽衣初出演。
穏やかでありながら確かな言葉の芯を感じさせる語りは、しっとりとした質感をもって柔らかくたおやかに響き、冷え切った真冬の空気をそっとあたためるような人肌の温度を宿します。

能島さんとペアを組む日髙啓介さんは、FUKAIPRODUCE羽衣を初期から支える、劇団にとってのお兄さん的存在。
しっとりとした大人の魅力とチャーミングな茶目っ気に溢れた日髙さんと能島さんのつくる世界は、慌ただしい都市に染み渡る一滴の清涼剤として、どこまでも澄み渡った純然たる風景を眼前に浮かべさせます。

二人の醸す空気に呼応するかのように音楽が流れると、ささやかな幸福をそれぞれに携えて人々は歌い出し、まるで二人を祝福するかのような愛が舞台いっぱいに降り注ぎます。
日常のとある風景から“妙-ジカル”へのシームレスな移行は、FUKAIPRODUCE羽衣のつくる音楽や踊りが単なる非現実にとどまらず、私たちの生きるこの世界を美しく彩り希望を解き放つためにあるのだという実感を与えてくれます。

“妙-ジカル”で歌い踊る人間たちは、自分たちの生きるいまこの瞬間を全身で謳歌し、喜怒哀楽のもっとも純粋な形を追い求め表現するかのように、生を燃やし尽くしその輝きを解き放ちます。
人間は本来、もっと自由になることができ、もっと純粋な輝きを放つことができる。
いまを生きるすべての人たちにとって大切なことを、FUKAIPRODUCE羽衣はこの先何度でも、私たちに思い出させてくれることでしょう。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

稽古を終えた作・演出・音楽の糸井幸之介さんに『女装、男装、冬支度』についてのお話を伺いました。
『女装、男装、冬支度』をより深く楽しむためのインタビュー。
ぜひご一読ください。

・『女装、男装、冬支度』は糸井さんご自身にとってどのような位置づけの作品でしょうか?

勢いや激しさで作品をつくっていた若い頃と、ちょっとずつ成熟して大人になってきた頃の変わり目にある作品だと思います。
ほとばしった若いエネルギーと大人の落ち着きがちょうどいい感じにミックスされて…そういう「いい時期」につくった作品ですね。
特に音楽は、ロックっぽい若さがいい感じに残っていたりして、良い曲が多いんじゃないかと思います。

撮影:金子愛帆

・2014年の初演時から、ご自身の創作において最も変わった部分を教えてください。

作品をつくる上での根拠のない自信みたいなものがなくなったのが大きいと思います。
現実に目を向けないといけないことが増える中で、「自分は誰も観たことのない大名作をつくれるんだ」という思い上がりがなくなった。
それはもちろんマイナスな面もあるんですが、他人に丁寧に届けるということに真摯に向き合うようになったということでもあります。
ちゃんと人に伝えるということを大事に思うようになった。
それが一番大きな変化ですね。

・客演さん3名はそれぞれどんな俳優さんでしょうか?

森下さんは長い付き合いで、小劇場の同じフィールドで頑張ってきた同志です。
明るさと暗さの両方が強くあって、若い頃は華やかできらきらしてた印象が強かったですが、歳を重ねて暗い面にも深みが出てきたんじゃないかと思います。

能島さんは言葉をとても大切に扱ってくれる方です。
相手の言葉で心が動いて自分が発話する、というシンプルで大事なことをとても大切にしてくれる方だと思います。

牧迫さんは身体能力が高く、ダンスがとても得意です。
オーディションを経て出演してもらうようになった方で、今後がとても楽しみな俳優さんです。

撮影:金子愛帆

・ご自身の考える、『女装、男装、冬支度』の推しポイントを教えてください。

性愛についてのエゴイスティックさだったり、人を思いやるという素朴さだったり、そういう両面が浮かび上がっているところでしょうか。
前半と後半で感じ方が変わる作品ですが、善悪でひとくくりに出来ない両面が描かれていると思います。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

こちらのnoteでは、FUKAIPRODUCE羽衣主宰・深井順子さんをはじめ、出演俳優の皆さまへのインタビューも順次公開する予定です。
真冬の傑作“妙-ジカル”『女装、男装、冬支度』を120%楽しめること間違いなし!
ぜひご注目くださいませ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

FUKAIPRODUCE羽衣第28回公演
『女装、男装、冬支度』

2023年7月21日(金)- 7月30日(日)
吉祥寺シアター

〇公演詳細https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1004908.html

(担当:小西力矢)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?