"心にボーンと響く演劇"――オフィスコットーネプロデュース『兵卒タナカ』インタビュー

 2024年2月3日(土)~14日(水)まで 、吉祥寺シアターにて上演されるオフィスコットーネプロデュース『兵卒タナカ』。戦時下の日本を鋭い眼差しで滑稽に、哀れに描く演劇作品です。本作の上演を記念して、演出の五戸真理枝さんと、主演の平埜生成さんにインタビューを行いました。その様子をお届けします!

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――初めて台本を読んだ時の感想を教えてください。
五戸)初めて読んだのは15年くらい前です。演劇全集(『現代世界演劇01 -近代の反自然主義1』)に収録されていて、私はその全集を読むのを義務にしていました。そんなに面白くないだろうと思って読み始めましたが、一気に最後まで読んでしまいました。なんだこの吸引力は、と驚いた記憶があります。前半は人の会話が克明に描かれていて、会話の温度感が分かりやすかったです。途中からは急展開が始まって、ミステリーを読んでいる時のように先がどうなるのか気になりました。
 
――五戸さんから見て平埜さんはどんな俳優ですか。
(平埜さんが耳を塞ぐ)
五戸)なんで耳(笑)
平埜)だって聞きたくない(笑)
五戸)職人っぽい俳優だと思います。役の作り方や、稽古場にいる雰囲気が職人のようです。あんまりふざけたりも落ち込んだりもせず、ずっと冷静でいます。生きることそのものが、稽古することになっているような印象があります。
平埜)やっと終わった(笑)
 
――平埜さんは、ご自身が演じるタナカはどんな人物だと思いますか。
平埜)百姓出身で、徴兵された兵士です。村人や他の兵士、両親の話を聞いていると良いやつだなと思います。でも最近は、彼の欠点は何だろうかと考えています。純朴さ故の頑固さがあるようにも思えます。『正しいものは正しい』というセリフが出てくるのですが、社会に決められたルールや、自分で作り上げたルールに対してまっすぐ向かっていく姿は、ネガティブな部分でもあると思います。
 
――印象的な他の出演者の方はいらっしゃいますか。
平埜)個人的な話ですが、土屋佑壱さん、つっちーさんとは共演したことがあります。十年前にご一緒して、十年ぶりの再共演です。少しは大きくなれたかなという思いです。昔から自分を見てくれていた方がいて心強いなと思います。
 
――平埜さんは、五戸さんはどんな方だと思いますか。
(五戸さんが耳をふさぐ)
平埜)そんな偉そうなこと言わないですよ(笑)とにかく優しいなと思います。こんな優しい人に会ったことがないから、俳優仲間に「五戸さんの演出を受けた方がいいよ」って言いたい。先輩後輩関係なくみんなが意見を言い合える稽古場の環境づくりをされていて、自発的に意見を言い合える稽古場になっています。
五戸)チームワークがすごくいいですよね。
平埜)それは完全に五戸さんの力だし、人柄だなって思っています。優しさです。
五戸)いやいや、優しさだけじゃいかんのよ(笑)
平埜)演出家さんと話し合って作品を作っていくという、初めての体験をさせてもらっています。
五戸)みんなからアイデアを吸い上げています。
平埜)すごい人です。
五戸)そんなことないです。頑張ります。
 
――インタビューをご覧の方にメッセージをお願いします。
平埜)稽古をしていた時に、五戸さんが言った言葉がとても印象的でした。「人の話を聞くときに、皆が座っているから自分も座ろうとか、皆が立っているから立って話を聞こうとか、そういう意識はあまり持たなくてもいいかもしれません。」自由な身体で居ていいということは、この作品の核になっているのかもしれないと思いました。『兵卒タナカ』というタイトルから戦争というイメージが強かったのですが、コアは違う部分にあるのではないかと思っています。
 
五戸)私も、これは戦争の話ではなく、人間の集団の話なんだなと思います。人間の集団が持ってしまう「歪み」についてのメッセージがかなり強く含まれています。この戯曲はメッセージを言葉で出してくるタイプではなくて、観客を笑わせたり泣かせたり、心を揺さぶることで(気持ちを)ついてこさせて、気が付いたらメッセージがわーっと響いてくるように仕立てられています。
社会派の演劇は、かしこまって見ないといけないと思いがちです。ですが、この作品は盛り上げたり、シンとさせたり、どうしたら人の心を伝えられるかを考え抜いてセリフや構成が作られています。実際に大きな声でしゃべるわけではありませんが、観客の心にボーンと響くような大きな音がする演劇になりそうです。ぜひ、劇場へ見に来ていただきたいと思っています。
五戸・平埜)よろしくお願いします。
 
――本日はありがとうございました。

公演情報:オフィスコットーネプロデュース『兵卒タナカ』
〇80年前にドイツの劇作家により書かれた、ある「タナカ」の物語

貧しい農家の出身である兵卒タナカは、休暇をとり、戦友ワダとともに実家を訪れる。軍人となった息子が帰ってくることを一家は喜び、贅の限りを尽くして迎え入れるが、村は不作が続き、大飢饉のまっただ中にあった。 自身の軍人という身分が、もっとも身近な存在の犠牲により成り立っている現実を突き付けられたとき、タナカが信じて疑わなかった世界が音を立てて崩れていく―――。

2月3日(土)18:00◎お得チケット
2月4日(日)13:00
2月5日(月)19:00◎お得チケット
2月6日(火)13:00★アフタートークあり
2月7日(水)休演日
2月8日(木)13:00★アフタートークあり
2月9日(金)19:00◎お得チケット
2月10日(土)13:00/18:00
2月11日(日)13:00
2月12日(月・祝)13:00
2月13日(火)13:00/19:00
2月14日(水)13:00

公演詳細:https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005842.html
ご予約:(公財)武蔵野文化生涯学習事業団
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/sameShowList?en=377

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