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組織のイノベーションを「場」から生み出すために何を考えるべき?

こんにちは。きびです🙋‍♀️ 
この記事は組織のイノベーションを「場」から生み出すために何を考えるべきかについてお話しします。2019年に私が所属する一般社団法人FCAJと6社が合同で行ったリサーチ結果とそのフレームワークをもとに書きました。

イノベーションの場のインパクト調査・EMIC (Evaluation Model for Innovation Center) サマリー版

※一般社団法人Future Center Alliance Japan (FCAJ)は、産学官民が参加・連携する組織であり、経済と社会を繋ぐオープンイノベーション の「場」として、自社や自組織の枠を超えた社会課題や未来課題への対応、新たな産業を構想する活動を2016年より行っています。
https://futurecenteralliance-japan.org/

イノベーション=よりよい未来のための試行錯誤

現代企業の経営活動の中枢として位置付けられている”イノベーション”。

既存事業の延長にあるもの、新規事業につながるもの、社会を変えるような革新的なもの、など様々なイノベーションの捉え方がありますが、

FCAJ代表である紺野氏の本「WISEPLACE INNOVATION」にも

イノベーションは技術革新や新技術の事業化をさすことではありません。イノベーションは究極には社会を変えるような、(社会的)経済的活動です。
よりよい生活環境や社会を企業・行政・研究機関そして生活者である市民が共に創造するソサイタルイノベーション

とあるように、FCAJが目指す”イノベーション”は単なる技術革新ではなく、よりよい未来のために複数のステークホルダーが連携し、生活・社会制度をアップデートするための試行錯誤であると私は捉えています。

組織のイノベーションのための場が求められている

VUCAと言われるこの時代、組織が持続可能であるためには、今までとは異なる分野やセクターを超えた共創がますます必要になっています。
そのため、今までと異なる分野や視点に出会う機会を設けたり、技術をより深く探究したり、新しいコンセプトやビジネスモデルが求められています。

しかし、本業のための効率的な組織体制や単なる労働のための空間では、こういった「未来のための試行錯誤」には適していないため、企業をはじめ様々な組織は多様なイノベーションのためのチームと新しい視点や異なる分野とつながる開かれた場(イノベーションセンター、フューチャーセンター、リビングラボなど)を設けるようになりました。

このように、イノベーションのための場は組織と社会が交わる、接点のような存在とも言えます。

世界でイノベーションセンターが増加、でも成果を測る方法がない

イノベーションセンターの数は2015年から2017年にかけて、約2倍に増えています。つまり、企業はイノベーションセンターの投資を積極的に行っています。

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にも関わらず、その投資に対するリターン(有形無形の成果)の把握が難しく、Capgeminiの調査では、イノベーションセンターは世界的にみても急増しているにも関わらず、その多くが十分な成果を生み出していない等の見解もあります。

イノベーションのための物理的な場を持っていると答えた企業が9割近いのに対して、成果が出ていると答えた企業は2割に満たない・・・。

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※出典:Capgeminiのレポート2017
「The discipline of innovation: Making sure your innovation center actually makes your organization more innovative」より引用

そこで、この研究をとっても簡単にいうと、イノベーションの場が成果を出している・いないの2択ではなく、場を成功に導くための要素をもっと解像度をあげて見て行こうぜ。という感じです。
そうして、組織のイノベーションを「場」から生み出すために考えるべき要素をモデル化したEMIC(Evaluation Model for Innovation Centers)を作成しました。

目の前の短期的な従来のKPIで見るのではなく、長期的、多角的な視点を持つことでその価値を共有することができるかもしれません。

また、自組織のイノベーションの場を評価することができたり、他の場と比較して強みを把握したりすることで、次の戦略を考える材料とすることもできます。他にも新しく場をつくる人たちにとっ、この指標を元にどのように場を作っていけばいいかも考えられるでしょう。

EMIC:組織のイノベーションを「場」から生み出すために考えるべき要素のフレームワーク

まずはEMICを見てみましょう。

EMICモデル

EMICは3つの視点と4つの要素から構成されています。
まずは縦を見ていきましょう。
3つの視点は、場をソト・ナカ・ウチに分けて考えるもの。
モデルも左から場と外部(社会)との関係、イノベーションセンターの場そのもの、場と内部(組織)との関係となっています。

EMIC解説図.001

次に、横に見ていきましょう。
大きくは場を作る時に考えておくもの(ハードファクター)と場ができた後に徐々にできていくもの(ソフトファクター)に分かれます。

EMIC解説図.002

これをさらに2つずつに分け、4つの要素で見ていきます。
・基本機能(その場の役割・位置付け)
・プラットフォーム(場における体制や仕組み)
・エコシステム(繋がり・関係性)
・インパクト(成果・影響の度合い)

EMIC解説図.003

以上より、12ブロックのフレームが出来上がります。
ここに、国内7箇所のイノベーションセンターへのヒアリングとエスノグラフィック調査の分析・海外13箇所のベンチマークを踏まえ、指標を作成しました。

詳細項目についてはサマリーレポートの最後に載っています。
気になる方は是非FCAJのHPをご覧くださいませ!

EMIC解説図.004

イノベーションのための場が完全に組織から切り離されていても組織を巻き込めないし、外部とうまくつながることができていなくても新しい考えを取り込めない、場そのものが試行錯誤できる環境でなければそもそもイノベーションのタネが育たない。

このように、組織のイノベーションを「場」から生み出すためには、そもそも目的はなんなのかを起点としながら、場そのもの、組織との関係、社会との関係の3つの視点をもち、活動を推進していく必要があります。

■ 目的の明確さ
イノベーションを推進するうえで不可欠なのが目的である、目指す世界は何であるのか、なぜそ こを目指すのかを明確にしているかを評価する。
■ 外部受容性:ステークホルダーとの接点がどのようにデザインされているか
・基本機能:どのような空間を構築しているか、場の設えを評価する
・プラットフォーム:イノベーションプロジェクトの実践を評価する
・エコシステム:イノベーション活動に参画するプレーヤーやコミュニティを評価する
・インパクト:イノベーション実践の場として、外部からの認知度を評価する
■ 場の機能・能力:イノベーション実践の舞台としてどのように運営されているか
・基本機能:イノベーションを推進するプロセスや手段を評価する
・プラットフォーム:イノベーションセンターの運営を評価する
・エコシステム:課題解決や価値創造に必要な知へのアクセシビリティを評価する
・インパクト:イノベーションの実践レベルや運営パフォーマンスを質的側面で評価する
■ 組織・政策適合性:戦略や組織と整合のとれたイノベーションマネジメントがなされているか
・基本機能:イノベーション組織のミッションや形態を評価する
・プラットフォーム:イノベーションマネジメント力を評価する
・エコシステム:組織内部での連携度や事業化への協力レベルを評価する
 ・インパクト:イノベーション成果を定量的な側面で評価する
■ 総合的評価
目的に見合ったイノベーション成果が挙げられているか、そしてイノベーションセンターがその役 割を十分に果たしているかを評価する

EMICフレームに当てはめた事例の紹介

リサーチサマリーでは海外の13のベンチマーク先から以下の2事例を紹介し、フレームに当てはめて紹介しています。

事例1:ING Labs(デジタルディスラプションを目的としたイノベーションセンター)

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事例2:Medicon Village(大コペンハーゲン地域にまたがるライフサイエンスクラスターの中核施設)

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リサーチペーパー(サマリー版)とシンポジウムの動画はこちらから

この記事は当方も研究に関わった、一般社団法人FutureCenterAllianceJapanが出したレポート 「イノベーションの場のインパクトに関する調査-成果を生み出す場に必要不可欠な要因のモデル化 Evaluation Model for Innovation Centers-」の内容を、自分が重要だなと思った部分を中心にわかりやすくした個人的な解説記事です。
詳細はFCAJ公式のレポートやシンポジウムの動画をご覧ください!
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この調査は2019年度にFCAJとメンバーの6企業(小田急電鉄・コクヨ・日建設計・フジクラ・富士フイルム・UR都市機構)合同で行われ、国内7拠点・海外13拠点をリサーチした上でまとめられました。

今年度の調査について

FCAJでは今年度も継続してリサーチを行っております。
この指標もまだβ版ではありますが、2020年度はより多くのイノベーションセンターに関わる皆様と連携し、ブラッシュアップしていきたいと思っております。ご連絡させて頂いた際には是非WEB 調査にご協力くださいませ🙇‍♂️

・この調査に自分も参加したい!
・会社のイノベーション活動を評価するのに使いたい!
という方がいらっしゃいましたらFCAJのHPのお問い合わせまたは吉備のtwitterDMまでご連絡くださいませ。

📖 引用した書籍はこちらです。イノベーションと場の繋がりについてもう少し深く知りたいよ〜という方はよければ是非ご覧ください。


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