推したい会社は、誰かを推している
こんにちは、きびです👋
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この文章は、Money for Goodとnoteで開催する「#推したい会社」の参考作品として主催者の依頼により書いたものです。
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推したい会社というお題を見たとき、意志のあるトップがいる会社や、事業を大きく変化させて社会にとってより良いものに転換した会社など、色々思い浮かんだのですが、今回はそんな先頭に立って自分で引っ張るリーダー的な事例ではなく、誰かの想いを支えるフォロワー的な企業の取り組みに注目してみたいと思います。
デレクシヴァーズの有名な動画「社会運動の起こし方」から「最初のフォロワー」の重要性を学んだ人は多いのではないでしょうか。社会運動も最初に踊り出した変なやつが全てではなく、「一緒に踊り出す人」が増えてムーブメントがつくられていくように、「賛同し、一緒に動くこと」はとても重要です。だからこそ、これからの推したい企業の要素に「誰かの想いに賛同し、一緒に動くことで、より大きなインパクトをつくる」ことを挙げました。
組織が出す結果に対して「リーダー」が及ぼす影響力は1-2割。 対する「フォロワー」が及ぼす影響力は8-9割にものぼるといいます。
今日はそんな社会にとってより良い想いある活動を、自分たちのビジネスに組み合わせることでより大きな社会的インパクトにしてきたフォロワーシップのある企業について、3つの社会的な意義ある団体を軸に紹介します。
1. 海洋廃棄プラスチック問題に取り組む海洋環境保護団体「Parley for the Oceans」の想いを支える企業たち
海洋環境保護団体「Parley for the Oceans(パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ)」は、様々なパートナーと海洋廃棄プラスチックの回収の仕組み化から新素材化、既存のプラスチック製品の代替化、さらには教育プログラムの運営まで海とプラスチックに関する課題の構造を変化させるダイナミックな取り組みをしています。
海洋汚染は実は私たちの生活にとても密接に関わっています。たとえば、わたしたちが10回吸う息のうち7回分は海でつくられていることは意外と知られていなかったり、大量のプラスチックゴミが分解されることなく細かい破片となって魚のエサとなり、食卓に並んでいるかもしれないこと、このまま海洋汚染や乱獲が進むと2048年までに漁業の対象となる魚介類のほとんどが絶滅してしまう危険性さえあることなどが挙げられます。
彼らが今特に注目しているのがプラスチックによる海洋汚染です。現在、毎年約800万トンのプラスチック廃棄物が海に流出しています。パーレイは「3R(リユース・リデュース・リサイクル)」ではなく、「AIR戦略:Avoid(防ぐ)、Intercept(回収する)、Redesign(再設計する)」を掲げて、そもそも新たにプラスチックを使わない、プラごみを回収してその資源を再度活用する仕組みをつくることを呼びかけています。
アディダスは2015年という初期の段階からパーレイの想いに共感し、共に活動している企業です。モルディブ沿岸等でパーレイと共に海洋廃棄プラスチックを回収し、Ocean Plastic®と名付けた新素材を作ることでその素材をつかったアディダス製品を世界中の消費者に届けています。
最初は100足の靴をつくりインスタグラム・キャンペーンを通じて無料提供。その後、世界7000足限定で一般販売を行い、2018年には100万足、2019年には1100万足と現在では2024年までに全製品をこのリサイクルポリエステルに移行することを目指しています。
アディダスのような大企業が自分たちの商品に関する素材の調達方法をアップデートし、「海を守る」ことをビジネスモデルの中に組み込むことで、大きなインパクトを生み出すだけでなく、海洋問題に関心がないスニーカーファンやスポーツをするひとの手にもパーレイコラボの商品が届き、関心を持つひとが増えるはずです。
他にもステラ・マッカートニー、DIORなどのファッションブランドが製品にOcean Plastic®を取り入れたり、世界のクレジットカード製造を行うTHALES社がカードの選択肢にOcean Plastic®製を入れたり、世界銀行のプログラムでは海洋プラスチック問題を抱える南アジアの8カ国と共に海洋廃棄プラスチックを回収する仕組みと教育プログラムを実行したり、アメリカの大手ビールメーカー、アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)とプラスチックボトルの製造中止で合意するなど、700以上の企業と様々な交渉とコラボレーションにより社会的インパクトを広げています。
Parley for the Oceans の目的は「海の美しさと脆弱さへの社会の認識を高めること」。
そして「Parley」は対話という意味だそうです。
デザイナーでありパーレイの代表のシリルグッチ氏は、初期の頃から影響力の大きい民間企業とのパートナーシップの必要性を感じ、彼らと積極的に対話をしてきました。
そして、多くの企業がフォロワーとしてこの目的と彼らの戦略に賛同したことで、構造的な課題が大きく変化しようとしています。
2. 人と人のかかわりや対話の大切さに気づく体験を生み出す「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の想いを支える企業たち
ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)は暗闇のプロである視覚障害者のアテンドと共に普段と違う「光のない世界」での体験を通して、人と人とのかかわりや対話の大切さ、五感の豊かさを感じる「ソーシャルエンターテイメント」です。
DIDは子どもたちへの多様性教育として、障害のある人にとっての希望として、言語を超えたエンターテイメントとして、企業の教育研修やチームビルディングとしてなど様々な目的で体験されています。
体験の提供だけでなく、視覚障害者の繊細な感覚を活かして、今治タオルや会津漆器といった伝統工芸の製品開発に取り組むといったコラボレーションや、対話の森がある竹芝周辺の横断歩道に音響式信号機の設置を働きかけ、実現に至るなど、まちの変化にまで影響を広げています。
DIDのはじまりは35年前、1988年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏の発案によって生まれました。これまで世界47カ国以上で開催され、900万人を超える人々が体験しています。
日本では、1999年11月の初開催以降、短期イベントから始まり、2009年にオープンした外苑前での初の常設展示を経て、2020年竹芝に「対話の森ミュージアム」として2コンテンツを同時開催できるさらに大きな規模になりました。これまで24万人以上が体験しています。
こう聞くとすごく成功しているように見えるDIDですが、真っ暗闇に入るこれまでにないエンターテイメントを実現してきた背景には様々な壁がありました。
照度0の暗闇を歩く体験に対しての保険を受け入れてくれる保険会社が日本中探しても見つからなかったり、照度0を実現するために建築基準法をどうクリアするかの調整が必要だったり、暗闇のエンターテイメントに場を提供してくれる不動産会社が中々見つからなかったり…
そのひとつひとつに、ダイアローグの想いに共感し、リスクをとって前例のない挑戦を共にしてきたフォロワーシップのある企業や個人がいたからこそ今があるといいます。
今回はそんな様々なコラボレーションの中でもダイアログ・イン・ザ・ダークの体験をより一般的に開く機会になった、TBSドラマ「ラストマン」とのコラボレーションを取り上げます。
TBSラジオはダイアログ・イン・ザ・ダーク初期の頃(2004年から2007年までの間)短期イベントを共催していたパートナーでした。
そこから15年以上経ち、『ラストマン-全盲の捜査官-』というドラマで再びコラボレーションすることになりました。ラストマンは、全盲の捜査官が登場するドラマで、視聴率は最終回で13.4%という高視聴率を収め、そのリアルな演技も話題になっています。
『ラストマンー全盲の捜査官-』の主演の福山雅治さん、全盲所作指導を行ったダイアログ・イン・ザ・ダークの志村季世恵さんとアテンドのはなやんさん
DIDを運営する一般社団法人ダイアローグ・ジャパンソサエティは、「全盲所作指導」として監修に入っており、主演の福山雅治さんや監督、撮影スタッフにもダイアログ・イン・ザ・ダークを体験してもらい、視覚障害者のアテンドと共に動きや考え方を教えていました。
同時に、竹芝にある常設のミュージアム「対話の森」にて、ドラマの世界を体験できる「ラストマン・イン・ザ・ダーク」を展開し、より広い一般の方が暗闇のプロである視覚障害者のアテンドと照度0の世界を歩くエンターテイメントを体験することにも繋がりました。
ダイアローグ・ジャパンソサエティの設立当初から変わらぬ目的は「対等な出会いと対話を通じて、人間の関係性を回復する」ことです。老若男女・障害の有無・出身国の違いを超え、声を掛け合い助け合える社会の実現を目指している彼らにとって、そこに課題意識や関心があるひとの層だけでなく、より多くの人にDIDを体験してもらうきっかけを広げた今回のコラボレーションがもたらすインパクトは大きいのではないでしょうか。
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3. 福祉実験ユニット「ヘラルボニー」の想いを支える企業たち
福祉実験ユニットヘラルボニーは、福祉領域を拡張するスタートアップで、日本全国の主に知的障害のある作家とライセンス契約をし、彼らの作品をプロダクト化していく会社です。
彼らは「異彩を、放て」というミッションのもと、障害は欠落ではなく違いや個性であるということを、アートを通して発信し、社会の意識を変えていくという想いで活動しています。
仮囲いからハンカチや商品パッケージまで今では様々なコラボレーションをおこなっているヘラルボニーですが、創業期はなかなか仕事にならずに苦労したといいます。そんな中、パナソニックが運営する施設「100BANCH」に入居していた際、まだ実績がない中でアートそのものと活動理念に共感したパナソニックのオフィス改装責任者の方がオフィスの色々なところにヘラルボニーのアートを採用してくれたというストーリーがありました。まさに最初のフォロワーです。
他にも、2021年から行っている丸井との共創プロジェクトにて、ヘラルボニーカードの発行をスタートしています。
ヘラルボニーカードは、ヘラルボニーが契約する知的障害のある作家が創作した絵が使用されており、このカードを使うことで、ポイント(通常0.5%の還元)の0.1%がヘラルボニーに寄付されることになります。
株式会社丸井グループは、小売と金融を組み合わせたビジネスモデルが特徴です。元々、創業時には家具を販売し、それが高額になるためローンを組んでいたということから、小売でありながら金融の側面を持つ会社でした。それが今では、実店舗であるマルイで小売の事業を手がけつつも、マルイで買い物をするとポイント還元が多くつくなどのインセンティブでエポスカードというクレジットカードを提供し、一度に多く買い物をしてしまった際などにキャッシングや分割払いなどに対応することで、手数料による金融の収益を得ています。どちらか一方をやる会社は多くありますが、あえてどちらもやり、相乗効果を生み出すビジネスモデルを持っています。
だからこそ、これまでお買い物で使うたびに「お得になる」カードを、使うたびに「社会を前に進める」カードとして、社会貢献に参加できる仕組みをつくることができました。
通常、こうした企業の社会貢献性のある取り組みは、寄付や協賛など、単発のお金の支援で終わってしまうことも少なくありません。ヘラルボニーカードの取り組みは、単なる寄付ではなく、使うたび、社会を前進させるカードとしてうち出し、売上の一部が寄付される継続的なしくみにしているのです。
もちろん、比較的若い世代のお客さんが多い丸井グループにとって、ヘラルボニーカードは社会課題に関心のある新たな若い世代にマルイにきてもらう仕掛けとしても機能しているため、両方の会社にとって社会性もあり、経済性もある取り組みにみえます。
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このように、想いのある組織とのコラボレーションは単なる寄付やCSR活動としてではなく、実際のビジネスモデルの中に活動を組み込み、自分たちも共に行動し、変容していくのだということが見えてきたように感じます。
今回取り上げた事例は特に、ファッション・エンターテイメント・アート・食などの生活に紐づくものがきっかけとなり、合理的な説明よりも、社会の変化に大きく寄与していることが伺えたのも興味深いです。
これからの時代に必要なのは、複雑でやっかいな課題に対して、立場を超えた対等な関係でともに考え、行動していくことだと思います。
そんな中、企業に期待したい行動として、変化の先頭を切ることはもちろんありつつ、一方で誰かに賛同し、一緒に行動を起こしていく姿が増えることも期待したいと思い今回のnoteを書きました。
共創は案外フォロワーシップのある会社がより社会的に大きなインパクトと、ビジネスとしての経済合理性を獲得できるのかもしれません。
(参考
https://parley.tv
https://www.wwdjapan.com/articles/638274
https://preview.thenewsmarket.com/Previews/ADID/DocumentAssets/389985.pdf
https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/33.html
https://sustainablejapan.jp/2016/11/20/parley-adidas/24329
https://parley.tv/initiatives/world-bank
https://www.thalesgroup.com/en/worldwide-digital-identity-and-security/bank-payment/magazine/how-parley-oceans-offers-eco
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/
https://meguru-urushi.com/meguru-way/birth-story.html
https://goldpearl.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=1801012&sort=p
https://www.facebook.com/DIALOGUEMUSEUM/posts/5933878593299054/?paipv=0&eav=AfYBupaBL5jCRcmG0ZtBH09bpfiA5hb63khpjlqWdhrYrTWlGGArBy_xskJoatEbP6U&_rdr
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