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一日一通のラブレター|🇺🇸米軍ガールフレンドダイアリー

彼が航海に出て約2ヶ月。

休職中のわたしが毎日続けられている数少ないことの一つは、彼との1日1往復のメールのやりとり。

彼からは、
今日は誰々と初めて話したよ。同じ艦艇なのにまだ話したことのない人がいるなんて不思議だよ。
○日頃にどこどこの港に寄ることになりそうだけど来られる?
やっぱりキャンセルになっちゃった。でも予定より早く帰れそうだよ。
〇〇の試験の勉強が忙しいけど、毎日君のことを考えて頑張ってるよ。

わたしは、
わたしは今日はいつもより元気。
梨泰院でこんな悲しい事件があってね、わたしは別の理由で通勤電車が怖いことを思い出したよ。やっぱり在宅ワークじゃないと復帰は難しいかも。
友達の〇〇と会ってこんな話を聞いて、こんな美味しいものを食べたよ。
でもやっぱりあなたに会えないのが寂しいな。
お気に入りのキャンドルをうっかり使い切っちゃった、帰ってきたら買いに行こうね。

こんな感じ。

英語でのメールなので、日本語にするとやたら惚気っぽいけど。

でも、この毎日のラブレターがあるから、
英語力が少しずつ(本当に少しずつ)上がっているだけじゃなく
平凡よりも落ち込んでしまうことが多い日々の中に、感情を動かせるような出来事を自分で作れる。
散歩に出掛けて、何か発見したくなる。ニュースを見て、彼に伝えるような出来事がないか考える。

もしかしたら、何もない海のど真ん中という閉鎖的な環境にいる同じ相手に、いつまでも興味を持ってもらえるような話題を提供できるという点では、
コミュニケーション能力と、ユーモアのセンスも磨けているかも。なんてね。

休職していると、誰とも話さない日なんて全然あるから、言葉すら忘れてしまいそうだけど
こうして彼と一日一通のラブレターを交わすことで、わたしは言葉を失わず、何のエネルギーも使わずに自分の日々をシェアできる。

暗黙の了解なだけでルールはないけど、これが一日一通ずつなのがまたミソなのかもしれない。
毎日目覚めてメールが来ていないかと楽しみだし、「一通くらいなら」と母国語でなくても時間をかけて丁寧に書ける。

意外とちょうどいい、クレイジー遠距離恋愛

わたしは、航海中のわたしたちの関係のことを「クレイジー遠距離恋愛」と呼んでいる。

どれだけ遠くにいても、地球上なら24時間以内に会えるけれど、海軍の艦艇乗りという彼の職業上、どこにいるかもわからないし、いつ帰ってくるのか、いつ会えるのかもその日が来ないとわからない。

普通の遠距離恋愛なら、もちろん時差は本当に大変なことだけど電話はできるし、顔も見られる。SNSも更新されて様子がわかる。
乗艦中は、わたしから写真を送れても、彼からは写真を送れない。わたしの様子は伝えられるけど、彼の様子は文字でしかわからない。

ね、ちょっとクレイジーでしょう?笑

海上自衛隊の艦艇乗りのパートナーの皆さんも、世界中の海軍の艦艇乗りや潜水艦乗りのパートナー、それから宇宙飛行士のパートナーも共感してくれそうな、クレイジー遠距離恋愛。

でも、このクレイジー遠距離恋愛、意外とわたしの性に合っている。

元来わたしは少々ドライな性格で、いまいち恋人への接し方や愛情表現がわからない。
アメリカ人の彼の非常にオープンで(日本人にとっては少々オープンすぎるくらいの)豊かな愛情表現と、英語というわたしに曖昧な表現や皮肉なユーモアを許さない言語のおかげでだいぶ上手になった。

だがしかし、わたしの「ときどき自分のスペースが必要」な性格は全く変わっていないので、そういう時にこの“クレイジー遠距離恋愛”は役に立つ。

彼は定期的に航海に出るので、陸にいる時はできるだけずっと一緒に過ごして、航海に出たらわたしは勉強や自分のやりたいことにすべての時間を使う。
彼に提供するのは、メールを書く時間だけ。これは彼が言い出した、クレイジー遠距離恋愛との上手な付き合い方だ。

彼はわたしより年下で、見た目も中身も、かっこいいというよりキュートな感じだが
こういう時に意外としっかりしている。というかいつも自分が年上なのを忘れるくらい、彼は大人だ。

そんな彼のアドバイスをもとに、わたしはクレイジー遠距離恋愛の利点を最大限活かして生活している。

ただまあ、正直2ヶ月は思ったより長い。
そろそろ帰ってきてくれるといいのだが。

度胸のある米軍ワイフたち

そんな時は、彼と同じ艦艇に乗っている彼の同僚や上司のパートナーと出かけるのがベストだ。

なんだか米軍ワイフというのはみんな肝が据わっていて、駐在先が未知の国 日本であろうとどこであろうと帯同し、寄港の際には仕事と折り合いをつけてできるだけ夫に会いに飛んでいくのだ。
みんな手に職をつけて未知の国でも堂々と、いろんな意味で自立し、愛するパートナーを支えている。

そんな彼女たちと出会えたことは、わたしの価値観を大きく変えた。
わたしはバリバリ働くことこそが自分の幸せだと子供の頃から考えていて、休職してかなり落ち込んだが、彼女たちを見ていて、まさにワークライフバランスの幸福度への影響を目にした気がする。

もちろんその献身性を、アメリカ合衆国の莫大な予算、米軍人への優遇措置が支えているのは否定できないが、
彼女たちの度胸と忍耐、そして素晴らしいポジティブマインドが支えているのもまた間違いない。
そしてその献身性が、わたしたちが想像できないほど過酷な環境と緊張感の中で日々を送るパートナーたちを奮い立たせる力強いエールになる。

前に読んだ在沖米軍周辺の女性についての本で、米軍ワイフになることへの不安があったけれど、実際にワイフたちと関わってみて、たくさんのロールモデルがいることがわかって、自分の将来に少し自信を持てた。

わたしもいつか、彼女たちのように胸を張ってパートナーに会いにいく
経済的にも精神的にも自立したワイフになりたい。

そのためにもこのクレイジー遠距離恋愛の時間と上手に付き合っていこう。



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