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09話 刹那

クリスマスが近い年末と言うこともあり、お互い家族には忘年会と言って出かけた。優斗と結菜は、クリスマスが近づく年末の夜、親密な一日を過ごしていた。二人はお互いにパートナーと子供がいるという事実を抱えながらも、その事実を忘れるかのように笑顔を絶やさず、楽しい時間を共有していた。

プラネタリウムでは、優斗と結菜は手をつないで、暗闇の中でお互いを見つめ合っていた。星々が天井に広がり、幻想的な雰囲気に包まれた中、二人の心は一つになっていた。結菜は優斗の手をしっかりと握りしめ、彼の温かさを感じながら、幸せな瞬間を静かに楽しんでいた。その時、二人の間には言葉がなくても通じ合う特別な絆があった。

水族館では、優斗と結菜はペンギンやクラゲなどの海の生き物を楽しんだ。色とりどりの魚たちが水槽の中を泳ぎ、幻想的な光景に二人は見とれていた。特に、ペンギンが愛らしい動きを見せるたびに、結菜は笑顔を満開にし、優斗と一緒にその姿を楽しんでいた。
水族館を後にすると、外には美しいイルミネーションが飾られていた。色とりどりの光が夜空を彩り、ロマンチックな雰囲気を演出していた。優斗は結菜の手を取り、一緒にイルミネーションの中を歩きながら、その美しい光景を共有した。結菜は優斗との時間を大切に感じながら、心から幸せを噛みしめていた。

雰囲気の良い九州料理専門店の個室では、優斗と結菜は心地よい和やかな雰囲気の中、美味しい料理を楽しんでいた。
まず最初に、季節の新鮮な刺身盛り合わせが運ばれてきた。脂ののった鮪や、甘みが強いハマチなど、海の恵みがぎっしりと盛り込まれた一皿は、見た目にも美しく、口の中で広がる旨みに二人はため息をついた。特に、結菜は鮮やかな色合いと口当たりの良さに感動し、優斗と分け合いながら笑顔を見せていた。

次に運ばれてきたのは、焼き鳥や串カツなどの焼き物の盛り合わせだった。ジューシーな焼き鳥は口の中でほろりと崩れ、香ばしい香りが広がる。結菜は特に焼き鳥の串を手に取り、優斗に微笑みながら「これ、絶品だよね」と言った。優斗もうなずきながら、結菜の笑顔を見つめていた。
最後に、九州名物のもつ鍋が登場した。熱々の鍋の中から立ち上る香りは、一気に二人の食欲をそそった。野菜やもつがたっぷりと入った鍋は、濃厚なスープが口の中に広がり、温かさと旨みが身体を包み込んだ。結菜は優斗に笑顔で「もつ鍋、私の大好物なんだ」と告白し、二人でたくさん食べながら、楽しい会話を交わした。

その後も、二人は美味しい料理と共に、互いのことや家族のことなどを話し合いながら、温かい時間を過ごした。食事が終わる頃には、二人の距離はさらに近くなり、結菜は優斗に寄り添いながら、幸せな笑顔を浮かべていた。

優斗は時計を見た。もうすぐ22時だ。結菜とのデートもそろそろ終わりにしなければならない。彼は結菜に笑顔を見せたが、心の中では焦っていた。家族には忘年会と嘘をついて出かけたが、あまり遅くなると怪しまれるかもしれない。それに、結菜と付き合う時に約束したことがあった。一日の最後にはお互いの家族の元に帰ること。それが優斗の決めたルールだった。

優斗は結菜がいつもよりも大き目な荷物を持っていることに気が付いていた。それは何を意味するのか、人生経験が長い優斗にとっては十分すぎるほど理解をしていた。クリスマスが近い年末だったし、今日はプラネタリウムと水族館に行って、とても楽しかった。
結菜は雰囲気の良い九州料理専門店の個室で食事をして、優斗との距離も縮まったと思った。彼女は優斗にもっと近づきたかった。でも、優斗は帰りの時間を気にしているようだった。

「優斗、今日はありがとう。楽しかったよ」

結菜は優斗に言った。彼女は優斗の反応を見て、期待と不安が入り混じった表情をした。

「結菜、こちらこそありがとう。俺も楽しかった」

優斗は結菜に答えた。彼は結菜の顔を見て、優しく微笑んだ。でも、その微笑みには何か遠慮があった。

「優斗、今日は一緒に帰ろうよ」

結菜は彼女は優斗の手を握って、勇気を出して言った。

「結菜、ごめん。俺は帰らなきゃいけないんだ」

優斗は結菜の手をそっと離して言った。

「優斗、なんで?私たちは好きなんだよね?」

結菜は優斗に問いかけた。彼女は優斗の目を見つめて、涙ぐんだ。

「結菜、俺たちは好きだけど、それだけじゃないんだ。俺たちには家族がいるんだ。俺は家族を裏切れない。それに、俺たちは約束しただろう。一日の最後にはお互いの家族の元に帰ることを」

優斗は結菜に説明した。彼は結菜の涙を見て、申し訳なさそうにした。

「優斗、そんなの嘘だ。本当は私のことを愛してないんでしょ?私のことをただの遊びだと思ってるんでしょ!」

結菜は優斗に向かって叫んだ。彼女は優斗の言葉に怒りを覚え、荷物を手に取り立ち上がった。優斗は彼女の言葉が的中したように感じ、何も言えないまま結菜を引き止めようとしたが、彼女は優斗の手を振り払い、部屋を飛び出した。結菜の後を追おうとしたが、彼女はもう姿を消していた。

その日の出来事はお互いに深い傷を残した。

(つづく)

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