うつになって学んだこと。

うつの症状が出た。こんなに無気力で人に会うのが怖くなってしまったのは、十数年ぶりのことだった。
もし同じように辛い状況にいる方がいたら、何かの助けになるかもしれないと思ったので書いている。

普段私はおそらく、あまり悩みのなさそうな、元気でパワフルな人というイメージを持たれていると思う。
そういう人ほど、一度うつ状態になると、いつもの自分とのギャップを受け入れられず、なかなか人にも話せず、どんどん落ち込んでいってしまうのだと知った。
人間の心というのは、いつも天気のようにコロコロ変わっていく。いつもであれば、ネガティブな方に行きそうな時は、それを行きすぎないようにコントロールできているはずだが、ちょっとしたきっかけでバランスが大きく崩れてしまうことがある。

今回うつになってしまった大きな要因の一つは、音楽家として創作活動に没入していったということがある。
音楽は救いの一つだと感じている私にとって、作曲とは誰かの悩みを自分で探しにいって、同じ気持ちになるような作業。
心の闇の深い部分に入っていって、そこから光を探す。
感情に寄り添っていく分、些細なことに敏感になり、すごく傷つきやすくなっている、いわば無防備な状態。防寒具なしでアラスカにいくようなもの。
そんな時はどうしても、ネガティブなことが起こったりすると、その方向に引っ張られてしまう。

思い当たるのはまず、先日の安倍元首相の銃殺事件の衝撃。深い悲しみとともに、同じ人間として、そんな行動にまで及んでしまうことへの憤り、恐怖心。そして、その行為に対する世間の反応。
選挙期間だったということもあり、SNSを見ると、人の死を死とも思わないような信じ難い発言の数々。そして、これは仕方がないのだが、勝ち負けを争う選挙というものはどうしても各人の政治的な思惑やエゴが見え隠れして、揚げ足の取り合い、貶し合いがあり、いつもすごく人間の醜い部分を見るような気持ちになってしまう。特に今回はこの事件によってより分断が深まり、人のことが怖くなってしまった。

それから、私の人生に必要不可欠なものであったトレーニングが肘の怪我により、できなくなってしまったことも大きい。モチベーションが高いことはいいことでもあるが、限界を超えて追い込むことで故障のリスクが上がり、結果として怪我をしたら、しばらく休まなければいけなくなってしまう。
ルーティンがある人は、なんらかの理由でそれができなくなることは非常に大きな精神的ストレスだ。
今回のことで、どのくらい自分にとって日々のトレーニング心の拠り所になっていたのかと改めて気づいた。

それから、毎日のライブ配信を2年以上続けていることも、人前に自らを晒すということでそれなりのストレスになっているだと気づいた。
ずっと視聴者からのリクエストを受けて演奏していたので、その期待に応えなくてはと自分にプレッシャーをかけ続けていたんだと。
対面ではない分、コンサートのようにリアクションがダイレクトではないし、日によって体調が良くなかったり、疲れている時などは、話したことや、歌ったことに対してチャット上での反応が薄かったりすると、これでよかったのかなと不安になってしまうこともある。
誰かに必要とされることは力にもなるが、それにちゃんと応えられない時には、自己嫌悪にもなってしまう。

以上のことが私の思い付く、うつになってしまった主な理由。

一つのことだけではなく、複合的に色々なことが同時期に重なってしまった。

幸い、しばらくしっかり休んだお陰で、今はほとんど回復してきている。

ここで、うつから抜け出すために実践したことを、並べてみる。

1、SNSから離れる
2、人と会わない時間を作る
3、自然と触れ合う
4、無理をしない
5、よく運動してよく寝る
6、苦しい想いを伝える

1、SNSから離れる
SNSで不特定多数の意見を目にすることは、自分にパワーがない時は、そのエネルギーに飲み込まれてしまう。まずは意識的に見ないようにすること。ネガティブなことだけでなく、誰かの楽しそうな姿を見ててもイライラしたり、落ち込んだりしてしまうので、とにかく他人のことを気にしないでいることが大事。

2、人と会わない時間を作る
特に人と関わることが多い人は、いつもいろんな気を受け続けている。他人に会って、全く気を遣わない人なんていないので、どこかでストレスがかかっている。無理に自分をよく見せようとしたり、ちゃんとした人間であろうとすることもプレッシャーになる。他人との関わりを避けて、1人で読書をしたり、映画を見たり、とにかく自分だけの時間を意識的に作る。

3、自然と触れ合う
緑のあるところで、ぼーっとしたり、芝生に寝転がったり、今、この瞬間、自然の中で生きていることを感じる。人の念がこもった人工物に囲まれていると、結局人間の世界から抜け出せない。
鳥の鳴き声や川のせせらぎに耳を傾け、自然の一部に還る。この感覚がとてつもない癒しになる。

4、無理をしない
返信をしなきゃいけない。仕事に行かなきゃいけない。生きていると〜しなきゃいけないことばかり。別に少しくらいラインやメールの返信しなくたって、仕事を休んだって死にはしない。今は何もしない。という開き直りもとても大事。それで離れていくくらいの人間関係なら最初から必要ないはず。むしろ自分をそんなにも追い詰めるようなことなら、自分の人生にとってよくない影響を与えるので、離れたほうがいい。

5、よく運動してよく寝る
心配事があると寝れなくなる。そういう時はまずは運動をして身体を疲れさせる。その後温泉にいって2時間も浸かれば、確実に眠くなってくる。よく寝れれば、気力と体力は回復してくる。

6、苦しい想いを伝える
ちゃんとしている自分でいようとすればするほど、自分の弱さを見せるのが怖かったり、恥ずかしかったりする。私もそうだった。でも、1人で抱えきれない場合は素直にそれを伝える。落ち込んだことがない人なんていないから、誰かはあなたのことを気にかけてくれる。ちょっとした一言だけでも、すごく救われたりする。自分が思っているより、弱い部分を見せることはみっともない行為ではない。人は支え合って生きている。

以上、今回私がうつになって感じたこと、そしてそれを克服するために実践したことを書いてみました。

今回、想像以上に辛かったので、同じようにうつで苦しんでいる人がいたら、何かの助けになれば幸いです。