私は変わるのだ！　第一話

ここは都心から離れた郊外のマンション。
そこに何かの神が舞い降りようとしている。
着地地点を決めた神は迷う事なくスルリと下って行った。
«««««««««
塚元奈美には悩みが有った。
嫌、出来たと表現したほうが解りやすいだろう。
»»»»»»»»»

６時15分。
奈美は目覚ましが鳴り響く前にベルを止めた。
ふっ、止めることが出来た。
この目覚まし野郎。
奈美は勝ち誇った自分を褒め称えた。
いつもはそのけたたましい音にビビっていたけど
今日から私は変わるのだ。
その瞬間、ワンルームの1室が光輝いたのだった。
»»»»»»

3日間前だった。
請求書に混じり、郵便受けに届いたモノが
悩みの種となっていた。
友人からの結婚式への招待状だ。
出たくない訳ではない。親しい友だ。
行かないわけにはいかない。
だが、しかし、うーん。
ここからが悩みなのだ。
奈美は布団を蹴飛ばすと
ベッドから降りた。
窓辺に行くと小鳥がチュンチュン
はしゃいでいる。
浮かれ過ぎなんだよ、みんな。

奈美は飛び回る鳥達が羨ましかった。
さりとて、招待状が来るまでは奈美も
小鳥同様に弾けていたのだ。
奈美は窓辺にもたれ、天井を仰ぐと
腕を組み、思案した。
うーん、問題の悩みは2つ。
取り敢えず１つは速攻改善に向かわ
なくてはならない。
何故なら時間との戦いだからだ。
期日は式当日までの10ヶ月。

残り約300日と少々。
奈美としては有り難い時間だけど
そんなに先でも良いのかいな。
その間に不仲になり別れちゃったりは
しないのか。友人だけに心配である。
何でも早目に予約することで割引が
適用されるそうだ。
招待状の冒頭には、ホワイトチェンジ
リフレッシュチャペルと書かれていた。
スッげい式名。

プランナーの顔が見たいものだ。
しかし
そのヤケクソ感が盛り込まれた式名は
何故かこの胸にグサッっと刺さるモノがある。
どうしてだろう。

散らかった部屋の隅に奈美は歩いて行った。
覆いかぶさっていたモノをどかすと、体重計を引っ張り出す。
壊れていないことを祈りながら
そぉお~と左脚を乗せた。次にゆっくりと右脚。
デジタルが荒々しく駆け巡っている。
︽︾︽︾︽︾︽
突如、信じられない数字が稲妻の如く
奈美の目に飛び込んできた。
Oh No!~~　衣服量引かなきゃ。
−10㌔　❑お前はピッコロかっ❒
どこからか声が聴こえたような。
気のせいだろう。
かわりに、奈美は渾身の溜息を吐いてみた。
うーん。
少しは減るかと思ったが
計りは無情だ。

少なくとも現状の2割は落とす必要を感じる。
欲を言えば3割。4割。5割。消えてしまいたい。
オーノーーーーー。

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➡次回、さてさて