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第9話»New店長

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あの騒動の後、店長は出向と言う形で他業種へ移動した。適材適所の考えであって、責任を取らされた訳ではなかった。当の本人も納得し、移動先に喜びを感じていたと聞く。さすがはRPA+AIだ。奈美も店長に心からエールを送った。そして代わりの人材が新たにVIE LENTEへ。
新風巻き起こるか。

その日、奈美が出勤すると皆の顔が緊張していた。
今日、新しい店長が赴任するからだろう。
先入観を持ちたくないので叔父には何も聞いていない。
聞いたとしても叔父が人事を全て担当している訳ではないので
余計な問答は必要ないだろう。
朝礼が始まる。

「この度、皆様が盛り上げ発展させてきたVIE LENTEの店長を仰せつかった柳田夜月(ヤナギダヤツキ)です。どうぞよろしくお願いします」その後も紹介が続き、最後にふふふっと笑みを浮かべると挨拶が終わると各スタッフが簡単な自己紹介をし、朝礼は終わった。店長の一見冷たそうな顔立ちは言葉のトーンも相まってスタッフ達の印象はとても良いとは言えるものではなかった。

しかし

店長の仕事ぶりは決して悪くはなく、ソツなく業務は進行していく。別に 問題はない。ないのだけれどいつの間にかスタッフ間ではヤナヤツと言うあだ名が付き、そう呼ばれる様になっていた。表向きは良好な店舗だったが内側には奇妙で不思議な間柄が出来上がり、良い雰囲気とは言えない。
不味いなぁこれ。ひそかに奈美は思った。

数日が過ぎて奈美がトイレ掃除をしている時、背後から「奈美さんは普通の女性とは違ったモノを持っているわね」ドキっとするような事を言われた。「変な意味じゃあなくて」振り返ると店長が奈美に向かって付け加えた。少し話がしたいから終わったらAのカウセリングルームに来てくれる。待ってるわ」そう言い残し、場を離れて行った。

なんだろうか。

ドアをノックした塚元は、自分の名を告げ指定された部屋の扉を開けた。
ここはお客様のプライバシーを徹底的に守れる場所で一段と豪華な造りになっている。広さは10畳程で最新の施術ベッドも置かれていた。防音で絶対話し声は外に漏れない。そんな部屋に奈美が呼ばれた。拷問でもされるのだろうか。まさかねぇ。 

部屋に入ると奥のソファーに店長が座っていた。「奈美さんこちらにおかけになって」手で誘う。ハイっと言って座ると「奈美さんこちらで何年?」眼鏡の縁がキラッと光った。1年半くらいになりますと答えると「へぇ~ならOPENスタッフかな?」ハイ、叔父がと言いかけそうになるのを留め、そうですとだけ答えておいた。
私の経歴くらい人事からのデータで解っているはず。
敢えて聞くところからして奈美に関心を示しているのだろうか。
それとも、うーん微妙なNew店長だ。






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