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木についていろいろ教えてもらった

少し前に材木店の方とお話させていただいて、その時に埼玉の木は質が良いんです、という気になるワードをもらい、ずっと突っ込んで聞いてみたいなあと思っていました。
今回埼玉県ときがわ町の木にふれるイベントにお声がけいただいたので家族で参加してきましたよ。

◯まずは体験ということで木の貯金箱を製作

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このころは子供達も楽しんでいた

◯お次は実際の作業場などを見学

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ここで木にまつわる話を聞きます。個人的にとても興味深いんだけど子供達は飽きていた…。
ディズニーランドですら午前中で「飽きた。帰ろう」と信じられないことを言い放つ超インドア派な我が子たち…でも工作は好き。

◯埼玉県の木が良いという理由

まず林業が他の一次産業と大きく違う点は、一本の木が育って商品になるまで、50年ほどの歳月がかかるので、2〜3世代を越えて営むものであること。決して1人で完結する仕事ではないのですね。
なので、過去の影響を受けやすいという特徴があります。

木材においての本場は京都。その理由としては首都としての歴史があるからで、当然その周辺の木は今でも質が良いらしいです。
江戸時代になって今の東京が栄え始め、その周辺でも木材の需要が爆発的に増えました。
埼玉は東京に近く、しっかり手間暇をかけて木材を作れば適正価格でバンバン売れたので、高品質の木を育てるという伝統が受け継がれてきました。
埼玉よりも離れてしまうと、東京までの輸送にコストがかかりすぎて、同じように手間暇をかけられなかったらしいです。
現在ではあまりイメージできませんが、その時代のことを考えると納得です。

◯では、良い木って、どんな木?

大きくわけて、育て方と、乾燥のさせ方に違いがあるようです。

1・しっかりと中身(年輪)がつまるように、ゆっくり育てる

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木の価格は、実は強度とかは関係ありません。見た目と、需要と供給のバランスです。
で、この見た目の要素というのは、節があるかないか、が一つです。
本来、木というのは、枝があって葉を茂らせたほうが、光合成うんぬんで早く育ちます。
でも、節をなるべく作らないためには、若いうちに枝を切っておく必要があります。
枝がなくなるので、結果的に成長が遅くなり、年輪が密になるのですね。

2・低温で時間をかけて乾燥させる

木材として使うには、十分に乾燥させて水分を飛ばさないといけません。
この乾燥方法には、高温で短時間と、低温で長時間の二つのやり方があります。

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一般的に行われるのは高温短時間乾燥です。
短時間でできますが、急激なダイエットは具合が悪くなるのと一緒で、木の本来の成分も一緒に抜けてしまうというデメリットがあります。ヒノキには防虫成分がありますが、それも抜けてしまいます。
ツヤも無くなります。木の香りも無くなります。代わりに、燻製を燻したような匂いがつきます。これを木の香りだと勘違いしている人も多いという話。

それと、木は根を張って水を吸い生きていたわけですから、時間をかけて乾燥させると外側から水分がとんで乾いていくので、多少なりとも表面が割れます。実は表面の割れは、強度的には関係がありません。

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高温乾燥の場合、一気に乾燥するので表面が割れることはありませんが、内側が割れます。こちらは強度に影響するんですね。

でもちょっとまって。先程書いた通り、木材の値段は外見の美しさで決まります。強度は関係ありません。木の本来の長所の有無も関係ありません。表面がキレイに仕上がり、短時間でどんどん仕上がるので、現在木材の加工のほとんどは、高温乾燥で行われているそうです。

一言で無垢材といっても、そうとうピンキリあるようですね。
ちなみに、どうやったらまともな木に素人が辿り着けるかという質問に、「そういう木材を選んでくれる建築士さんや工務店さん(入り口)を見つけるしかないのでは?」とのことでした。

◯植樹されている森を見せてもらう

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実際の現場を見せてもらいました。歩いてみて感じたこと。結構ちゃんと人が通るところとして作られた山道がすでに結構険しい…。林業はさらに木が生えている道なき場所で作業をするわけですから、キツい仕事ってのも納得です。

林業の人手不足は、このキツい汚いということもありますが、先が見えない仕事だということも理由の一つとのことも印象に残りました。
農業は1年ごとに成果がでます。しかし、林業は1サイクルが50年。基本的に今やっていることに対して結果が見えにくい仕事なんですね。
そんな構造も木を扱う仕事に人が集まらないのかもしれません。

◯木の本来の性能を求めなくなった世界

今の林業の問題は
①人手不足なこと
②過去に木を植えすぎてしまったこと
③想像以上に木が使われなくなったこと
④結果最終価格が低すぎる
が主なところかなという印象を受けました。

ちなみに、そんな状態で使われなかったら、最終的に木はどうなるの?と質問してみた。
需要がない限り切りとられることはなく、山は荒れる。一度荒れてしまった木は、建材として使うのは難しい。結果として、その場所でそのまま朽ちるだろう。
そして今、ちょうどその分かれ目なのではないか、という話でした。

◯モノと体験へのアクセスのしやすさ

根本的な問題解決はなに?という質問があって、その答えが「最終価格が上がること」

たしかに(まともな)木は今の時点でも高い、ということが今回家を建てるにあたってよく分かったんだけれども、それはほかの消耗品と同列に並べての価格比較なわけで。
実際、木の製品というのは世代を超えて使えるものだから、その全期間でならすと適正価格に戻したとしてもそこまでバカ高くはないわけで。
さらに個別注文で製造とかからませちゃうと費用がグンと上がっちゃうから、生活用品やちょっとした建具なんかは、気軽に自作できたら良いなあと個人的に思います。材料費とDIY製作費のみで、さらにオリジナルを作る体験という価値を含めれば、比較できる価格なのでは。

AIが発達して仕事が無くなると多くの人が貧しくなると思うんだけど、僕はそうなったら、人は自分で使うものは自分で作るようになるんじゃないかと考えています。
自分で作ったものだから、機能さえすれば、買うとなったらとても成立しない品質だとしても問題ないわけです。
つまりプロのレベル(過剰な見た目の綺麗さ)が今ほど重視されなくなる。
その時に、いかにアクセスしやすい環境があるかというのが木が選ばれるためには重要な気がする。
そのためには材木屋さんと個人がつながりやすかったり、必要な工具をすぐつかえるような工房があるとかまたは必要な時だけすぐ手元に届いたりとか、作る過程で専門的な相談が容易にできたりとか。
一言で言えば、ファブラボなんだよなー

実際に生活に直結して使えるオリジナルを作るという体験がストレスなくできるシステム(=モノ)があって、材料費と工具利用費だけで本物の木に触れやすいようにして良さを経験してもらい、理解してもらう。
という流れがあって初めて、人の前に「ちゃんとした木を適正価格で使う」という選択肢が現れるんじゃないか。

なーんて、素人がパッと考えたことをツラツラと書きましたが、この問いもなかなか面白いですね。
僕が今家を建てているのも、住むこと半分、もう半分は実際モノを作ってみようがあったのですが、両親が逝った暁には一室をミニ工房みたいにして1日レンタルするのも面白いかもしれないなあ。

いやー、勉強になった。楽しかった。

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