マガジンのカバー画像

読書感想文

8
読書の、感想文です。
運営しているクリエイター

記事一覧

『僕の人生には事件が起きない』 ラジオDJと俳人の共通点

『僕の人生には事件が起きない』 ラジオDJと俳人の共通点

この本は、ハライチ岩井が日常の中で体験した些細な出来事について綴った25本のエッセイをまとめたものである。これを読んで私はその出来事のあまりのどうでもよさ、そしてそれを受け止める岩井の感性の豊かさにとても心惹かれた。

いきなりだが私は俳句を嗜んでいる。句会にも参加してそこそこ真剣に取り組んでいる。私は始めこの本を単に好きな芸人の面白いエッセイ集と思って読んでいたが、読み進むうちに極めて俳句的な要

もっとみる
読書感想文『僕僕先生 さびしい女神』 王弁、災いの女神を救うため単騎異世界を駆ける!

読書感想文『僕僕先生 さびしい女神』 王弁、災いの女神を救うため単騎異世界を駆ける!

※ネタバレあり

 僕僕先生シリーズの4作目となる、『さびしい女神』。私はすっかりこの世界にハマってしまいました。

 中国は唐の時代、ぐうたらなボンボンの「王弁」が美少女の姿をしていながら超自然的な力を持つ仙人「僕僕」に弟子入りして中国全土や異世界を旅して様々な怪異に出会うという壮大なファンタジーです。

 今回王弁たちが訪れたのは旱に苦しむ苗(ミャオ)族の国。苗の人々が祭る神様の神殿に仕えてい

もっとみる
読書感想文『しゃばけ』―陰陽の取り合わせが映えるファンタジー捕物帖

読書感想文『しゃばけ』―陰陽の取り合わせが映えるファンタジー捕物帖

※ネタバレあり

 今回読んだのは、僕僕先生と同じく日本ファンタジーノベル大賞受賞作品の「しゃばけ」。シリーズ開始から20周年を迎えた大人気シリーズです。

 物語の舞台は江戸時代、裕福な商家の若だんな「一太郎」は病弱だけど優しくて知恵のはたらく男。そんな彼の周りにはたくさんの妖怪たちが常におり、若だんなはその妖怪たちとともに江戸を騒がす連続殺人事件に立ち向かうことになるのです。

 表紙の絵が可

もっとみる
読書感想文『僕僕先生 胡蝶の失くしもの』を読んで

読書感想文『僕僕先生 胡蝶の失くしもの』を読んで

※ネタバレあり

 まず表紙!先生が違う服着てる!キャー可愛い!これ苗(ミャオ)族の衣装なんですって!

 さて今回は前巻の明るい雰囲気とはうってかわってシリアスな内容となりました。迫真の戦いと報われない悲恋の物語がこの巻の中心です。

 まず登場するのは王宮の暗殺集団「胡蝶」。その中でも指折りの使い手である劉欣(りゅうきん)は、なんと僕僕と王弁の暗殺を命じられます。しかし彼にはどうしても譲れない

もっとみる
読書感想文『僕僕先生 薄妃の恋』を読んで

読書感想文『僕僕先生 薄妃の恋』を読んで

※ネタバレあり

 前回感想文を書いた『僕僕先生』の続巻です。『僕僕先生』が面白かったのですぐに次巻にも手を出しました。やっぱり格調高くもリズムのいい文章と、魅力的なキャラクターに引き込まれました。

 さてまず目次を見ると
・王弁、料理勝負に出る
・雷の子、友を得る
・王弁、熱愛現場を目撃する
・王弁、女神の厠で妙薬を探す
・僕僕、異界の剣を仇討ちに貸し出す
・僕僕、歌姫にはまる

もう面白い。

もっとみる
読書感想文『僕僕先生』を読んで

読書感想文『僕僕先生』を読んで

※ネタバレあり

 私は歴史ものの物語が好きで、特に世界史、その中でも特に中国が好きです。中国の武術とか、歴史とか、あるいは仙人みたいなのが出てくる面白い話が読みたいなと思っていたら、どストライクの本が見つかりました。そのタイトルが『僕僕先生』。全11巻にのぼる長編シリーズのようです。この本をまず見たときに思ったのが、表紙の絵が可愛い。表紙で本を選ぶだなんて軽薄ですが、親しみやすい絵柄に惹かれて手

もっとみる
読書感想文『結局、まじめな人が一番強い!』を読んで

読書感想文『結局、まじめな人が一番強い!』を読んで

 私は今病気で休職中です。双極性障害とうつ病で精神を壊してしまい、1ケ月仕事をお休みしています。どうやら私はかなりまじめすぎるところがあるらしく、ちょっと仕事をやり過ぎて無理が出てしまいました。

 その休職中に書店に立ち寄った時に出会ったのが『結局、まじめな人が一番強い!』です。自分のまじめさに悩んでいてそれを直したいと思っていたところに、むしろまじめさを全肯定するタイトルに思わず引かれて、この

もっとみる
読書感想文『ヒストリエ11巻』を読んで

読書感想文『ヒストリエ11巻』を読んで

※ネタバレあり

私は小説も漫画もほとんど歴史ものばっかり読んでますが、中でもヒストリエはとんでもない作品です。

舞台は古代ギリシア、複雑な生い立ちの主人公「エウメネス」は、並外れた知略と弁舌、時には剣の腕を便りにギリシア各地を渡り歩きます。そして幼い頃の「アレクサンドロス王子」やその父親「フィリッポス」に仕えながら動乱のギリシア世界を生き抜く、というのがこの物語の大筋です。と、今だからここまで

もっとみる