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読書感想文『結局、まじめな人が一番強い!』を読んで

 私は今病気で休職中です。双極性障害とうつ病で精神を壊してしまい、1ケ月仕事をお休みしています。どうやら私はかなりまじめすぎるところがあるらしく、ちょっと仕事をやり過ぎて無理が出てしまいました。

 その休職中に書店に立ち寄った時に出会ったのが『結局、まじめな人が一番強い!』です。自分のまじめさに悩んでいてそれを直したいと思っていたところに、むしろまじめさを全肯定するタイトルに思わず引かれて、この悩みを解消できるかもしれないと期待して手に取りました。

 この本はまじめな人が楽に生きることができるようアドバイスをしてくれるというものです。しかし「まじめをやめよう」という本ではありません。不まじめを目指すべきではないし、不まじめな振る舞いをしてもまじめな人は自己嫌悪に陥ってしまい楽にはならないと説いています。まじめさの価値を基本的に肯定しながら、まじめなままで少し行動を変えてみて生きづらさを和らげていこうというのが本書の要旨です。

 本書ではまじめを「よいまじめ」と「悪いまじめ」に分けて、『「よいまじめ」は今のままに保ちつづけ、「悪いまじめ」を減らしていけばいい』ということが語られます。「よいまじめ」は誠実さ、我慢強さ、努力、几帳面、責任感の強さといったまじめな人の強みです。一方「悪いまじめ」は融通が効かない、冗談が通じない、物事に執着しすぎるといったいわゆる「くそまじめ」な態度です。

 何故悪いまじめに陥るのかというと、それは「自己規制」が強すぎるからだといいます。自己規制とはものごとはかくあるべしというルールを自らに課すことです。もちろんこれは自分の行動を抑制し規範を保つために必要なことではあるのすが、これを細かく設定しすぎる、また強くそれにこだわってしまうのが「悪いまじめ」だといいます。この悪いまじめに陥るのには、第一に自分がルールを破るのを絶対に許せないということと、また他人の目を過剰に気にするという原因があります。他人からどう思われるか、ダメなやつとか信頼できないとか思われるのが嫌だと恐れるあまり自分を許すことができなくなるのがまじめな人間の特徴だともいいます。この自己規制を柔軟に使い分け、時には例外を設けたりたまにはみ出したりすることができるのがよいまじめであるとし、こうした柔軟な態度のことを本書では「やわらかまじめ」と呼んでいます。自己規制を緩め、周囲の目を気にせず粘り強さや着実さを発揮することで、自分を楽にしながらまじめのよい面を更に発揮させることができるということです。

 そうはいっても無分別に自己規制を破るのではなく、その場の状況をルールと照らし合わせてはみ出してもいいか葛藤した上で行動に移すのならさほど問題ないとしています。そうしてはみ出していいことと悪いこと学んでいき、上手にはみ出す感覚を体得していくことができるのです。そして「まじめな人のはみ出しはさほど大きな問題にはならない」ともされています。まじめな人は自己規制を破ったとしても過度に迷惑をかけたり、恥知らずだったり他人に許されないような範囲のことはしないし、そもそもそんな大胆なことはできません。その辺りの分別が身についているのがまじめな人の良さなのだといいます。なので安心して自己規制を少し緩めればいいのです。

 こうした「やわらかまじめ」は「それができたら苦労はないよ」という気もします。それがなかなかできないからしんどいのです。でも自分にはそういう癖があるのだ、そういう感覚が大切なのだと意識をするだけでも違ってくるかも知れません。自分の心を守るためにも「やわらかまじめ」は心掛けたいですね。

 またまじめな人は「努力の才能に頼りがち」ともいいます。コツコツと努力することが得意なので何でも時間をかけて地道にこなそうとしてしまいます。それで思うようにいかなくても「努力がたりない」「もっと頑張らなければ」と思ってしまうのがまじめな人です。私はまさにこのタイプです。しかし「努力の才能」が通用するのはある程度の段階までで、結果が伴わなければ同じやり方にしがみつくのではなくやり方を見直すことが大切ということです。こういう柔軟さがまじめな人には必要なのですね。私は本当にこれが足りないなと思います。一度決めたやり方を続ける方が楽ですし失敗もしにくいでしょう。だからそれにこだわってしまうのです。でもそのせいで時間がかかったり、結果残業が長くなったりしてしまうのですよね。それで結局は精神を壊してしまいました。ちょっと仕事への姿勢も変えなきゃいけませんね。

 この本を読む前は自分はまじめさのせいでしんどい思いをし続けなきゃいけないのか、これからも同じように心を壊しては治して、また壊してを繰り返すのかと思っていました。しかしこの本は基本的にはまじめなことはよいことなのだと説いてくれます。自分には誠実さ、粘り強さ、几帳面さがあり、それは周囲からも見てもらえているはずで自信を持ってよいのだと教えてくれたと思います。すぐに素直に自信満々になったり、「やわらかまじめ」を習得したりはできませんが、そこはまじめらしく粘り強くコツコツと、少しずつ自分を変えていこうかな、と思います。


和田秀樹『結局、まじめな人が一番強い!』三笠書房 2021

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