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うちの猫に早く会いたくなって、帰り道を急いだ|『猫にかまけて』読書感想文

町田康さんのエッセイ「猫にかまけて」。


初めはその独特な文体に慣れず、なかなか読み進められなかった。いったん置いておこうかと悩んだ。
それでも読んでいくと、ついつい笑ってしまう猫たちとの日々。猫は言葉をしゃべらないはずだけど、本当はしゃべっているのでは?と思える猫たちとの「会話」の数々。
うちの猫もこんな風にしゃべっているように見えること、あるある。

ある子猫との出会いの場面から、わたしはページをめくる手が止まらなくなった。


言葉の通じない猫との生活は、時に苦しい。
これが本当に猫にとっての幸せなのか、何が正解で何が良くないのか。猫に訊いてみたってわからない。
だけどやっぱり、あたたかい場所で、元気に過ごしてほしい。それはみんなきっと思っていること。

「みんな」思っていると信じたい。
そう願わずにはいられない。

猫ブームだなんて言うけれど、可愛いだけではない世界。それをわかっていたつもりでも、実際に飼わないとわからないことってたくさんある。
ソファはもちろんぼろぼろだし、こちらが疲れていたってお構いなし、うるさいくらい鳴く。すぐ人の食べ物に近づいて舐めようとするし、キッチンに上がって足跡いっぱいつけて、なんならシンクにも入ってべちゃべちゃの脚で床を歩き回る。などなどなど。

それでも、なんだかんだ愛おしい。
「ダメ!!」と「可愛いね」を交互に言う生活。どうしようもなくムカつくけど、どうしようもなく好きで大切な存在。

子育てしたことないけど、ちょっと近いところもあるのかな。


「猫にかまけて」は、猫とのリアルな生活、その儚さ、そしてやっぱり『家族』だということを、改めて思い知らされる。

帰りの電車で読んでいたわたしは、駅に着いて、小走りで家に帰った。

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