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「海の部屋」-ラジオと海の音- 2020-02-24

2月の終わり、とある劇を観劇した。

物語は、2つの家族とお隣さんを巡るもの。

内容は割愛。 
(これ、元々は大学の友達向けに書いてたからね、書く必要なかったんよね)

まず、
様々な場面転換の中で、交差していく各キャラを見ていくのが楽しかった。

序盤の、いわば「思わせぶりな演出」は、終盤の展開の背中を押していたように思う。その間合いに、私はくたびれたり、飽きることは無かった。

全体のストーリーのペースについて、

海の部屋は、良い意味でメリハリがなかった。(けっっっっして悪い意味ではないことは念を押したい)

ストーリーは緩やかに進んでいった故に、登場人物の心情やストーリーをじっくり考えながら観ることができた。
これは、私が前に観劇した卒業公演とは対象的だったのでより印象深かったのかもしれない。
私がいいなぁと思ったのは、緩やかなストーリーの中に激しさを持って揺れ動く一人一人の心情があり、際立っていた部分である。ダイレクトに言葉が届く場所であったからこそ、強く心に残った。

このストーリーの核の内容は、後半にかけて判明する。「医療ミス」という重いトピックが後半のストーリーにのしかかってくる。だが、暗くなりすぎずラストまで、どこか明るさ/希望を感じさせる前向きさがあった。
弁護士である松井の存在が上手くストーリーを繋いだと思う。
「医療ミス」という題材を無理やりつけたような印象にさせなかったのは彼の存在があったからだと思う。
また、お隣さん(そしてストーカー)という宅間の存在。彼がいた事によって、森家の人の良さや、母(利子)の人柄を裏付け、際立たせていた。

ストーリーが扱っているものが重いものであったがこの作品を観たあとに私は前向きになったし、笑顔になれた。それは、こういうことからなのかなと思った。

この劇の明るさは座組の雰囲気でもあるのだろうな、と思った。良い関係なんだろうなと、部外者ながらそんなことを考えた。

音と照明については全体的にシンプルであったが、それがストーリーにあっていると思った。(聞いたら会場の制限によるものだと知ったけど)
音に関しては、会話が際立っていたというのは勿論である。最初のお金を取り合う場面、ラジオがBGMの役割を果たしていた、家感があったのでリアリティがあった。観たあとに考えると、全体のキーポイントになっている「ラジオ」の存在を改めて考えた。

・ラジオ
この劇のキーポイントは「ラジオ」なのだろうな、と思った。開演ギリギリに入ったらラジオが流れてた、あ、これTwitterで連日流れてきた例のアレか…となった(おもしろかった!)
ラジオがしばらく流れ、スっと始まる劇。そこで既に、観客の私はストーリーの中に知らぬうちに取り込まれていたような気がした。

そして、
ラジオが関係性を表しているように思った。

白田初月が寝そべり、ラジオが不調になる。
初月はそのラジオを投げつける。割れる窓の音が響く。
ずっとあり続けてきたもの、ずっと傍にあったもの(ここなら初月と錦子の親子の関係)が揺るぐ、という展開と重なっていたように思う。

召季についてもそうである。
森一家のラジオも「調子が悪くなる」、しかしラストで「彼が」直し、「彼が」ラジオをする。
召季の存在によって、各家族の関係は「壊れかける」、しかし終盤にかけて「彼が」中心となり各家族
の関係性をもう一度編み直す。

スタートの、母がお腹の子供と一緒にラジオから流れる曲を聞いている場面。
ラストで召季がラジオでその曲を流す。
ラジオで始まり、ラジオで終わる。
同時に、その曲が彼にとって大事であることが描かれる。そこで私は、彼の母(錦子)の思いが、時間を超えて/物語の中で、実を結んだんだなと思った。

最後に流れていたのは「海の幽霊」。

帰りに余韻をお土産に、たまプラ付近の静かな住宅街を歩きながら聞いてみた。

あー、なるほどね。

ここからは考察ヲタクの顔つきになってしまう…🤪

あの星を見に行った場面も、召季がプラネタリウムを持っていることも、街中で錦子が彼を見かけてハッとしたもの…あー、なるほど、あー!😇

ヲタクの顔つき終わり。

「海の幽霊」は好きな曲のひとつになりました。

静かなストーリーの中、時に激しい心情が響く。

海辺のような、静かで、ザザーっと大きな音が響くような、そんな印象を持った。


2月の終わり、海辺を歩いている時


そんな時


きっと私はこの劇を思い出すと思う。


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