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春にしてマンガを想う。

ひさびさに神保町の某古書店に行き驚いたのは80年代当時の週刊少年ジャンプがムチャ高値になっていたことだ。「きまぐれオレンジロード」や「CITY HUNTER」新連載掲載号が1万円以上だもんなァ。もちろんレジ横ショーケース入りなので手に取りページをめくったりすることはできない。当時170円とかですよ。当時両方買ってるんだけどせいぜい保管して1〜2年だった。こんなに高くなるんなら捨てなかったよってキリがないよ!

おそらく高値を呼ぶ理由が表紙は描き下ろしで単行本にも流用されてないパターンなら尚更。実際オレンジロードもここでしか使用されなかったカットだったと思う。ああ、そういや「奇面組」もあったなァ。ボクの中であの作品はつまらないとは言わないけど実はあんまりよくわからない作品群のひとつだ。「ついでにとんちんかん」はいけたんだけどね。でも単行本買うまでじゃなかった。

で、思ったのがこういうものってもはや貴重な記録レベルの話じゃないですか。この数年で原画展とかだいぶ増えたけどまだまだ足りないと思うんです。全国に点在しちゃってるミュージアム、全面協力で1個集約するような施設って作れないもんなのかしら。そこにいけば日本のマンガのリアルタイムものも含めた歴史がわかるぐらいで。レベル的には国立博物館クラスのやつだ。

入り口を入るといくつかのコースを僕らは選択できる。戦前の田河水泡の時代からなのかな。まあ「鳥獣戯画」とか江戸時代、明治の風刺画とかになるとボクも知識が怪しくなるのでまあそれなりに。戦後は手塚治虫、トキワ荘といわゆる日本のポップミュージック史における「はっぴいえんど史観」コース、さいとうたかをなど劇画工房からの大人向け&貸本系コース+ガロ系コースを大枠2つにして「青年誌の時代」とかで2つのコースがクロスするような導線作り。90年代以降のサブカル/ヴィレバン系マンガの勃興とかも必要だよなァ。

企画展は充実したい。これまで絶対やらなかったようなものを週単位でやらなきゃダメでしょ。柳沢きみお特集、ボクなら半年タームでやりますよ。ギャグの時代、ラブコメへの移行、サラリーマン/ハードボイルド路線へと3つに大枠分けての全作品単行本をフリースペースで読み放題。ついでに軽食コーナーを設置、コラボメニューとして「具を入れない」インスタントラーメン、「真夜中のカップ焼きそば」、「駅スタンドの立ち食い蕎麦」を用意したい。監修は「大市民」山形鐘一郎ですよ。話題になると思うんだけどな。どうよ?
もちろんコラボグッズも作ります。「翔んだカップル」田代勇介監修のボクシンググローブ(3万円)、「SHOP自分」チョク監修の紅茶染めTシャツ(5500円)、「妻をめとらば」九十九八一監修のヨレヨレネクタイ(3000円)、「特命係長只野仁」監修のメガネフレーム(9000円)、原画を使用したポストカードの推しは「妻をめとらば」から八一の歴代彼女の原画ポストカードで1枚200円でどうだろうか。って、書いててほぼ実現不可能にしか思えなくなってきた。あ、ポストカードはセット販売も可ってのはどうかな。ダメ?

まあ言いたいことはひとつ。エンタテインメント全般のアーカイブ、特にデジタルで体験できるものこそ直接目に触れる、できれば手に取れるものを残して欲しいし、そういう機会をもっと作って欲しいんだよな。メタバース時代の到来とか無邪気に喜ぶのは他の方々にまかせますよ。多角的でオッケーな時代だもん。トキワ荘ミュージアムだけじゃ物足りないんだよなー。

いっそ1960〜70年代の神保町界隈、飯田橋、音羽あたりを大江戸博物館並みに再現してだな、、「当時の原稿持ち込み青年」を年代別に人形で解説もありなんじゃないかと。数年前にやってた70`sヴァイヴレーションで当時のユーザーの部屋を再現してたけど、ああゆう時代風俗も絡めた設備って残しておいて欲しい。ローリングストーンズ展でもあったじゃないですか?デビュー当時のメンバーが住むタコ部屋完全再現。こういうのはデジタルアーカイブじゃダメだと思うんですよ。その場の空気、匂いみたいなとこまで突っ込んで欲しいもんで。

展示だけじゃ物足りないので紙としての漫画を支えた編集者たちの当時のエピソードを含めたトークライブはデイリーでやって欲しい。80年代を支えた方々がそろそろ現役引退なんてひとも多いと思うんです。文字で残して欲しいけどそれじゃまどろっこしいなんてひとは喋るってことで記録を残しておくべき。だって直接関わってきたひとの言葉はいちばん重いし貫通力あるじゃないの。

おそらく電子書籍は今後も伸びるだろうしアーカイブも含めてどんどんビジネスとしてそっち寄りになると思うのです。だけど同時に大友克洋全集じゃないですがああいった形で手に取れるものを残すことも(少々高値なれども)増えていく。ならばそれら世の中に残された作品群の詳細な記録は絶対必要というか。手塚治虫や赤塚不二夫、藤子不二雄Aの「まんが道」シリーズだけじゃもはや補完できないわけだし。かといって故西村繁男の「さらば我が青春の少年ジャンプ」だけじゃ創刊当時の記録として貴重だけど情報はもっと残していくべきじゃないですか。角南さんの「メタクソ編集王」もあるけどやっぱり資料としてはまだまだ足りない。語れるひとはどんどん語って欲しいんですよ。

ジャンプはとりあえず西村編集長、次代の後藤編集長までは活字として残ってるのが現状です。角南さんも語ったしあとはインタビューではちょいちょい小出しにしているけど堀江さん、鳥嶋さんあたりか。もう5年ぐらいしたらバクマン世代も語っていくべきタイミングかもしれない。

チャンピオンは壁村伝説がコミック、活字と出始めたけどまだ足りない。カベさんの右腕的存在だった阿久津さんあたりが隠し球エピソードを山のように持ってる気がするんですよ。書いてくれないかしら?1975年の少年チャンピオンみたいなタイトルで。無理かなー。

講談社のマガジン系となると、まず宮原照夫元マガジン編集長が「実録少年マガジン編集奮闘記」を1冊残しているのと、小林まことの「マガジン青春譜」。こちらほんの一瞬だけ柳沢きみおが登場したりするので必読。小野新司の描かれ方も新鮮だった。ほら、世代的にボクはあだち勉(あだち充実兄)経由の描かれ方で育ったもんで。もしかするとこちらのほうが真実の姿に近いのかもなー。ヤンマガ元編集長、関純二による小説「担当の夜」ってのもあります。マンガ編集者を主人公にした連作短編、この角度は新鮮だしモデルとなった作家を想像するのも容易なので読んだことない人は手に取ったほうがいい名著。あ、マガジン3代目編集長の内田勝氏著「奇の発想」なんて本もありました。内田さん、生前「きまぐれオレンジロード」作者のまつもと泉氏の闘病記の原稿、見てたはずなんですよね。アレは結局世に出ないまま埋もれてしまうんだろうか。。

と、考えると小学館系が圧倒的に少ないんですよね。名編集者、小西湧之助を主軸にした「ビッグコミック創刊物語」とのむらしんぼが描くコロコロコミック創刊の話ぐらいだ。ネタはいくらでもあるだろうに。あ、「赤塚不二夫のことを書いたのだ」の武居俊樹さんは小学館か。少年サンデーとマガジンが火花を散らしていた時代の話を読むことはできるけど80年代以降の話がほぼないのが惜しいところ。やっぱ誰かが書くべきなんだと思うんですけどね。ボクは個人的にどうしても80年代から90年代のビッグコミックスピリッツの物語を書いてみたいと思っている。表紙にグラビアが毎週のように登場する時代までの、青年誌のトップランナーとして(部数ではなく感覚という意味で)疾走していた頃のスピリッツの物語を。もしやるとしたら2年ぐらいかかっちゃうのかなあ。でも書いてみたいんだよね。どっか誌面用意してくんないかなァ。

とにかくマンガにまつわるものは原画だろうと紙のメディアだろうと、そして関わってきた記録すべてを残していくべき。あとはそれを受け継いで次世代が新しいものを生み出し続けることを信じるのみですよ。

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