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こんな時代だから、みやたけしの「めざせ1等賞」を語ろう。


神保町のコミック高岡が閉店した瞬間、ボクの青春が、いや青シュン!が終わった。と冒頭からみやたけしフィーリングをぶちかましてみましたが気がつきました?

みやたけしといえば週刊少年チャンピオン連載の「めざせ1等賞」が最高傑作なので未読の方はぜひ全巻読破をおすすめ。泣けますよ。
なんせ主人公の名前が「1等 賞」ですからね。
このマンガの歴史からほぼ抹殺、いや無視され続けてる名作はマラソン漫画なんです。なんつったって主人公の苗字が「1等」名前が「賞」。すげえよ。

破壊力ありすぎ。そして最終巻はまじで感動。チャンピオンコミックスで全16巻。ジャンプにかつて連載していた「ブンの青シュン!」(みやたけしの野球マンガ)でも主人公の父ちゃん死んじゃうけど、こちらも冒頭で父ちゃん死んじゃう。だけど死ぬ間際に父は叫ぶ。
「おまえの名前はなんだ?1等賞だ。ならばマラソンに出て1等をとってこい」
有無を言わせず主人公のみならず読者を巻き込むこの強引さ。病床で死ぬ間際に父ちゃん叫ぶ、叫ぶ。貧乏で仕事しすぎで病気になってたんですね。
この設定をバブル全盛期にぶっこむみやたけしも凄い。残される母ひとり子ひとり。
それでもその道産子ならではの粘り強さ(あ、北海道から話始まるのです)でマラソン関係者の目にとまりプロランナーとしての道が開いたかのように思えるが、、いやあ軽く韓流越えてますよ、ストーリー的に。「ブンの青シュン!」もなかなか強引なストーリーでしたけどやっぱり「めざせ1等賞」にはかなわない。そして主人公はオリンピックのフルマラソン出場を目指していくってこの話ね、結末は言いません。なぜなら読んでほしいから。Netflixで「楽園の夜」サイコーって思った方にはぜひ(意味ないです)。

みやたけしといえばジャンプ離脱後、サンデーに移籍。「はしれ走」でサッカーマンガにたどり着き(主人公の実家はお好み焼き屋)のちチャンピオンに。「風のフィールド」なるサッカーものを長期連載のち始まったのが「めざせ1等賞」なんですね。初めて読んだのは93〜4年頃で連載はとっく終わっていた。

さて。みやたけしじゃなくコミック高岡の話だった。
2019年3月末日。ボクはその最後の日に立ち会うことも出来なかった。

初めて訪れたのは90年代初頭。きっちり1990年だった。あれはポール・マッカートニーの東京ドーム公演があった年。ボクはポール公演を5公演観ている。
そのために神田のカプセルホテルを拠点に1週間ぐらい連泊したんじゃないかと記憶している。
1ヶ月肉体労働のバイト(ホテルにベッド運び込む仕事)して移動交通費宿泊費チケット代を捻出、プレイガイドで買ったのは4公演分であとは深夜に「夜のヒットスタジオR&N」(名前のまんまロック、ニューミュージック特化の夜ヒット)でいきなり「今だけ。今だけ買えるんです」と番組内で特別予約が始まっちゃって勢いで電話したらチケット取れちゃったんですよね。それが5公演目。勢い余ってってことありますよね。まさにソレ。

昼間、ライブまでの時間をボクはあてもなく東京の街を彷徨った。新宿の中古レコード店、神保町の古本屋。その流れでボクはコミック高岡をみつけたのだ。
狭い店内ところせましとマンガが並ぶ中、ボクは井浦秀夫の「天晴れ桜田」なる単行本を1冊だけ買った気がする。アフタヌーンコミックだったかな。だけど実際その店の魔力にハマりこんだのは数年先のことになる。

1998年、ボクは京都から東京に居を移した。
とりたてて知り合いもなく、休日はやることがない。ゆえに彷徨い歩くわけですよ。渋谷に出てレコードショップでCDを山のように買いあさり、そのまま半蔵門線で神保町古本屋めぐりが定番コース。コミック高岡の魅力に気づいたのはこの頃だった。

まず他の書店ではとっくに返品してるようなマンガがある。そして新刊コミックの早売りである。
別に発売日まで待てばいいじゃんって思うひともいるだろう。そうじゃないんだよ。読みたいじゃん。誰よりも早く手に入れたいじゃないの。なのでボクの体内カレンダーには主要出版社のコミック新刊発売日が
ほんのひきだしレベルでインプットされている。前日ゲットのみならず早けりゃ1週間レベルで
早売りされているときがある。至福ですよね。

同じように早売りといえば2018年に閉店してしまった渋谷南口の山下書店。ここは発売日前日のだいたい夜9時過ぎから商品が並ぶ。深夜営業だったし重宝しました。電車逃してタクシーもしくは深夜バス乗車前に
山下書店に何度チェックインしたことだろう。

5年ぐらい前からマンガを電子で買うことも増えて早売り目的で本屋をめぐることも減った。
だってねえ、電子だと発売日になればダウンロード可能なんだもん。日付変わった瞬間Amazonクリックで完了。紙で永久保存しなくてもよき作品&作家ならそれでいい。たとえば「クッキングパパ」や山本おさむの「そばもん」はまさに電子枠ですね。
いましろたかしは電子枠にいきそうだったけど「未来人サイジョー」、これは紙でしっかり購入しました。
柳沢きみおは電子でもいいけど80〜90年代初頭の青年誌移行期の作品、これは紙で読みたいし持っておきたい。当時のビッグコミック系単行本の紙がちょいヤケ具合がいいんですよ。単行本に風合いがでて実にいいから。単行本装丁でいえばボクは80年代のビッグコミック系、ヤンマガ系に猛烈な愛情を感じる。あとはチャンピオンだよなー。

今だと吉祥寺のルーエですかね。ここで買うときは必ずカバーをつけてもらう。好きなんですよね、ここのブックカバー。そのまま本棚に陳列して結局タイトルわからず忘却しちゃって同じ本をもう1冊買うなんてことはボクの場合よくある話なんですけどそれでもいいんだ。なぜならこの本屋が好きだから。早売りしてないけどね。

ある種早売りで購入ってのはボクの中の最大評価なんですよ。小説や新刊本は流通がコミックほどかっちりしてないから都内でも八重洲とか新宿あたりの大型店なら2〜3日前に着荷陳列はいまだにあるし、好きな作家や読まずにいられない系の本なら今でも早売りマジックを求めて都内を彷徨うことはある。行動としては作品や作家の磁場に吸い寄せられる思いに近い。今だとTwitterで「入荷しました!」情報見つけやすいですからね。「2016年の週刊文春」とか近田春夫の自伝はSNSで「入荷しました!」告知を見つけて30分後にはその場所(本屋)に到着して買ってたもんね。便利な時代ですよ。

それにしても「めざせ1等賞」どうして誰も読んでないんだろうか。マラソンってジャンルでいうと小山ゆうの「スプリンター」(DUNKなる雑誌でさくまあきらが絶賛)、マガジンで連載されてた「マラソンマン」(井上正浩著)、「奈緒子」(原作/坂田信弘 漫画/中原裕)ぐらいしか思いつかないんだけどボクとしてはみやたけしがまさに1等賞かなァ。「鬼滅の刃」も「呪術廻戦」もいいけど読んでほしいですね。もちろん「めざせ1等賞」をね。

ちなみにボクが「めざせ1等賞」とめぐりあったのは94年の春。世の中的には小沢健二とスチャダラパーの「今夜はブギーバック」が大ヒットし、コーネリアスの1st ALを個人的にヘビロしていた時期にあたる。ゆえに本屋で「めざせ1等賞」というタイトルを見つけたときあまりのダサさに倒れそうになった。ちょうど実家に帰省していた頃でHMV仙台店の「今週の渋谷店チャート」コーナーをチェックしスパイラルライフのep「GAME OVER」(名曲)を買った帰りだったんじゃないかな。当時仙台駅前にまだ立ち読み可能なコミックコーナーがあり、そこでボクはこの作品と運命的出会いを得ることになったのだ。手に取り立ち読んで1巻前半で涙腺決壊。ダサい話なのにグザグサ胸に突き刺さる。結局ボクはその場で全巻購入し涙腺崩壊しながら全巻読破を一晩で果たすことになる。

もし連載終了後、全巻発刊後に出会ってなかったらボクは確実にコミック高岡に連日通って早売りでゲットしていたと思うな。それぐらいいい話、泣ける話のオンパレードな「めざせ1等賞」。最近読んでて気持ちのいいマンガって少なくなった気がします。小山ゆうなら「がんばれ元気」に「愛が行く」、佐藤宏之の「気分はグルービー」、多田かおるの「愛してナイト」とかね。次にどうなるかわかんないぎりぎりの焦燥感もアリなんだけどさ、ただ読後感が「あーよかった」ってマンガ、もっと増えてもいいと思いますけどね。そう思ってんのはボクだけ?

そういう作品って他にあったっけ?と思い出してみる。石渡治の「火の玉ボーイ」、、はちょっと違うんだよな。村上もとかの「NAGISA」はちょっとだけ近いけどなんか違う(いい作品ですよ)。浦沢直樹の「踊る警官」は?うん違うね。

マンガがマンガであるために。ボクらは読み続けなきゃいけない。おそらく今のようなご時世になって自宅でエンタテインメントを求めることって増えたと思う。読めてなかった小説読んだり動画配信サブスクにどっぷり浸かったり。ならばこれまで足を踏み入れてこなかった領域に踏み込むチャンスでもある。なのでこのnote読んでる方々にはぜひ読んでほしい。みやたけしの「めざせ1等賞」を。努力は必ず報われる。だけど必ずしも自分が望む形じゃない。ほろ苦い結末に感じるひともいるかもしれないけど、それゆえに青春、いや青シュン!なんですよ。なので今夜ぐらいは韓流ドラマは我慢してご一読を。アマゾンの読み放題でもありますよ。

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