小説 シャワー(2007年)
ほのじろい水のつぶてが、たわたわとうちつけてきて、気立てのよかった裸の気分を、すっかりこそぎ落としていく。かすかな衝撃の連続が、自我を繰り返して消滅させては再生させていく。向こうで開いた、脱衣所に通じるドアのむこうに、見覚えのある女の影がそっとたたずんでいる。なにもいわずに、見るともなしに、こっちを見ている。――だけれどわたしは、スポンジみたいに、カッテージチーズみたいに、体中に穴をあけられて崩れ落ちていく自分自身を省みている。なんの痛みも感じない。しだいしだいに輪郭をなくし