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落語:「少子化でコオロギ屋が儲かる」

今日も沢山のお客様に来ていただいてありがたいですね。
右の席から、べっぴんさん、べっぴんさん、一つ飛ばしてべっぴんさん。
なんて怒られちゃいますよね、本当に。

いやぁ、でも最近じゃ少子化、少子化って世間じゃ騒いでますけれども、それってどんな騒ぎか、よく分かんないよってのが困ったもんです。

「ねえねえ、おじちゃん。少子化って何?」
「おいおい、いきなりこまっしゃくれたこと言うじゃねえか。」
「おじちゃん、僕そんなに顎でてる?」
「そのシャクレじゃねえよ。」
「そうか、そのシャクレじゃないのか。」
「そんなことも知らねえのに、なんで少子化って言葉知ってんだ。」
「お母ちゃんに、弟が欲しいよって言ったら、ウチは少子化だから弟は出来ないよって言われたの。」
「何だい、お前のお母ちゃんがそう言ってたのかい。」
「そう、言ってた。」
「なら、おじちゃんが少子化ってのを教えてやろう。」

 なんてことで、少子化の説明する羽目になったんですけどね、なんせ相手が子供だから、分かりやすく説明しなくちゃならない。
 平日の昼間っから、こんな寄席に来てるお客さんも賢くはないだろうから、丁度良かった。なんて言ったら、怒られちゃいますよ本当。

「ねえねえ、おじちゃん早く始めておくれよ。」
「何でいせっかちなガキだね本当。分かった分かった、今教えてやるから慌てるんじゃねえ。慌てる何とかは貰いが少ないって言うだろ。」
「何とかってなーに?」
「え?何とかって、そりゃアレだよ。」
「アレって?」
「アレったら、その、あの、馬鹿野郎!コンプライアンスで言えねえんだ、
そんなんじゃ落語が進まねえじゃねえか。」
「ああ、BPOに引っ掛かるんだね。」
「何だい、知ってんなら聞くんじゃねえ!」

もう本当ね、Z世代なんてのは物心ついた頃から、炎上、炎上てなもんですから、余計な知識ばっかりついて困っちゃいますよ本当に。

「いいかい、少子化ってのはだな。」
「おじちゃん、もういいや。おじちゃんがお客さんと話してる間に、ChatGPTに聞いてみたの。」
「へー、そのChatGPTはなんて言ってるんだい。」

「少子化とは、ある特定の地域や国の人口構成において、出生率が低下し、子供の数が減少していく現象を指します。少子化は一般的に、経済の発展や都市化、教育水準の向上、女性の社会進出など、様々な要因によって引き起こります。
 少子化の影響は社会的・経済的な面で広範囲に及びます。例えば、人工減少により労働力が不足し、社会保障制度や年金制度の持続可能性に問題が生じることがあります。また、消費の低下や市場の縮小も懸念される要素です。
 少子化の進行により、将来的には人口減少が予測される社会において、食糧供給体制は大きな変化をせまられる。この変化の中で、コオロギなどの昆虫が主食として広く受け入れられるようになる可能性がある。
 コオロギは高い栄養素を持ち、飼育が容易で繁殖力も高いため、人間の食糧としての需要に応える効果的な選択肢になると考えられる。また、コオロギを食べることは環境への負荷が比較的少なく、持続可能な食糧供給を支える一つの手段となる可能性がある。
 したがって、少子化が進行する社会においては、コオロギが主食として普及し、人々の食生活において重要な役割を果たす。可能性があるという仮説が提唱される。」

「おいおい、穏やかじゃないね。」
「おじちゃん、コオロギなんて食べたくないよ。」
「そうだな、俺だって食べてくなんかない。」
「おじちゃん、少子化対策を考えたよ。」
「え!お前が少子化対策考えたのかい?ちょっと聞かせてみな。」
「やっぱ生活設計が出来る支援が必要かな。月々3万円貰えるからって子供産まないしさ。3万円って、お駄賃程度だよ。毎日1,000円貰って「子供産もう!」ってなるかい?」
「うん、ならないね。」
「仮に、月々3万円で、20歳まで給付しますって事にしたとしよう。でも、産まないよね。どうしても産めよ増やせよって思ってる様に感じない。だって、生活が見えないし、不安を解消してないもの。じゃあ、月々3万円で、20歳まで給付したら幾らになる?」
「720万円。」
「それ、産まれてすぐに一括で給付されたらどうかな?」
「え、720万円を一括で。そりゃ助かるね。」
「更に、2人産まれたら、1,440万円。3人産まれたら、2,160万円。4人産まれたら、2,880万円。なんか、生活設計できそうだよね?」
「はい、出来そうです。」
「さっきは、毎日1,000円貰って「子供産もう。」ってなるかな?って事だったけど、今度は逆に1人の人が、毎日500円税金を納めたとして、1年間で、182,500円。80年間で、14,600,000円。1人の納税で、2人分の子供支援が出来る。1人の人が、毎日1,000円税金を納めたとして、1年間で、36.5万円。80年間で、29,200万円。1人の人生で、4人分の子供支援が出来る。単純な例え話に過ぎないんだけどね。」
「あ、はい。」
「極端なんです。でも、なくはないよってこと。」
「おじちゃん、なんか怖くなってきた。」
「え、どうして。80まで税金を納める仮説だから?」
「違うよ。お前さんが怖いんだよ。」
「僕は怖くなんかないよ。本当に怖いのは、大人が政治に無関心なのが一番怖いんだよ。」
「お前さん、普段は講演会かなんかやってらっしゃるの?」
「うん、普段は公園で遊んでるの。」
「何だい、急に子供らしいね。さっきまでのお前さん見てたら本当に怖くなっちゃたからね。」
「おじちゃん、僕には弟が必要なんだ。お願いだから少子化対策だと思って720万円ちょうだい。」
「やっぱり怖いよ。」
「大丈夫だよ、コオロギ屋は儲かるらしいから。」

お後がよろしいようで。


子供の頃しか落語見たことないけど、こんな感じだったかな。
文字だけじゃ伝わりづらいね。難しい。
噺家さんの話術って大事。
本当、尊敬します。

正直、少子化とかコオロギ食とかね、お前が語ってんじゃねえって
なんて思われるだろうから、落語に落とし込んでみたんだけど
その落語のハードルが高かった。
50過ぎのおっさんの戯言なんでお許しください。

でも、コオロギ食べたいですか?

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