おめでとう『膝枕』100日リレー記念~もしも膝枕がワニに拾われたなら~

おめでとうございます!

5月31日にはじまったClubhouse朗読#膝枕リレーが、本日9月7日をもって、なんと!連続100日を記録いたしました。

膝枕番号34番に名を連ねさせていただいている、私きぃくんママといたしまして、この記念すべき日に‘テツアツ’の思いを込めて、作者の今井雅子先生の絵本『わにのだんす』を組み込んだなんちゃって朗読バージョンをノートに追加いたします。

元祖『膝枕』の正調に添えて私きぃくんママの二次創作処女作『あの夜からの膝枕外伝』を弄って、強引にワニを登場させました。

みなさんぜひとも笑ってお楽しみください。


あの夜からの膝枕~ワニに拾われるの巻


「ダメヨ ワタシタチ ハナレラレナイ ウンメイ ナノ」

それは夢だった。

雨のごみ捨て場で濡れそぼった箱入り娘膝枕は、
ダンボール箱に梱包されたまま、男の元に帰った夢を見ていた。

「ドンナニ ガンバッタトコロデ ワタシハ カレノ ヘヤヘモドル シュダンガナイ。

 ワタシハ ショセン ヒザマクラ」

膝枕シリーズは、
ユーザーの膝枕となる以外の機能を持たないのがお約束であった。

正座の姿勢は崩せず、この足は決して立って歩くことが出来ないのだ。

せめて、ダンボール箱に閉じ込められていなければ、
全力でにじりにじり動くことも出来た。

「タ ス ケ テ……」

激しく雨が叩きつけるダンボールの中で、
段々しみいってくる雨と傷だらけの膝小僧から滴る自らの血とで
赤黒く染まったスカートの裾のレースが、太ももに張り付いて気持ち悪い。

憔悴しきった箱入り娘膝枕は、祈るような気持ちで、
慣れ親しんだ男の頭をこの膝に乗せたまま、一つになる夢を見ていた。
男の頬は箱入り娘の膝枕に沈み込んだまま、吸い付くように一体化して、互いの皮膚が溶けてくっついていく…

「ソウヨ ワタシタチ ハナレラレナイ ウンメイナノ」


箱入り娘膝枕の思念は、彼女を捨てて自宅に逃げ帰った男の夢の中に
そのままそっくり再現されていた。
それは悪夢の顛末か?
いや、男にとっても案外と心地の良い結末だったのかもしれない。


でもそれは現実ではない、膝枕の夢。
目覚めた男がゴミ捨て場に来て土下座してくれるだろうか。
それとも、男は覚めてホッとして、また眠りにつくのだろうか。

薄れゆく意識の中、雨のゴミ捨て場に一つの影が立った。

「アァ カレガ ヤット ムカエニ キテクレタ」

いや、それは男ではなく、ワニ。

「アレレ? ダンボール箱がおどってるわにぃー」

ワニは、濡れるのもかまわず、
ごみの山の中をかき分けて、
うごめいていた箱入り娘膝枕を取り出した。

「うわぁぁぁ、こんなに濡れて、傷だらけになって、大丈夫かい。」

抱き上げると、箱入り娘膝枕の膝から滴り落ちる血とぐっしょりしみた雨とで
ワニのきらきらした背広は赤黒く染まってしまった。

「早く手当てしなきゃ。」

自分のことには気をとめず、ワニは膝枕を抱えて一目散に自宅へ連れ帰った。

「しみたらごめんね、消毒するからね。」

ワニは膝枕をいたわりながら、泥を丁寧に拭き取り
優しく消毒液を塗ってから、傷の手当てをした。
それからドライヤーの温風と冷風を使い分けながら
時間をかけて念入りに、箱入り娘膝枕のスカートを乾かし始めた。

「そういえば、この前ゴミ捨て場で拾ったショートパンツがあるよ。」

黄色いショートパンツ。
それは、工場から出荷された時に箱入り娘膝枕が身につけていたソレだった。

先日それを見つけたワニは、
その新品同様のショートパンツがあんまりもったいないもんだから、
拾って洗濯してちゃんとアイロンがけして納めていた。
誰かにあげようかと思いつつ、拾ったものだからやはり躊躇していたのだ。

「なんと!あつらえたようにピッタリだね。」

着替えてびっくり、箱入り娘膝枕は傷さえ癒えれば出荷当初の膝枕の姿だ。

「そうだ!
その傷がすっかり治ったら、膝頭でカスタネットを叩いておくれよ」

ダンスワニには相棒ができた。

箱入り娘膝枕は、男への恨み辛みや情をきれいすっぱり切り替えて
ダンス膝枕としての新しい人生を歩きはじめたのだ。

めでたし、めでたし


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