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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
530.父の出迎え

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 フェイト神を伴って富士山静岡空港を出たコユキを迎えたのは、寺で忙しく働いている善悪では無く父ヒロフミの姿であった。

 善悪の軽バンで来たのだろう、運転席に座ったままでチラリとこちらを見ただけで不機嫌そうに視線を逸らす。

 コユキは首を傾げながら声を掛ける。

「お父さんお迎えありがとね、どうしたの? なんか怒ってるみたいだけど…… お母さんと喧嘩でもしたのん?」

 ヒロフミは前を見つめたままでコユキを見ずに答える。

「以前からお前が口にしていた死ぬとか消滅するとか言っていた話、善悪君に聞いたんだよ、詳しくな…… お前達二人がこの世から消え去る様に画策しているのが運命神だそうじゃないか! そいつはその一人なんだろう? 判るだろうコユキ! 善悪君やお前を消そうとしている奴なんだぞ? 協力するなんて信じられん! 他の悪魔共と同じようにぶっ飛ばしてやれば良いじゃないか! プスリとやって消しちまえよ!」

 なるほど、父親だもんな、そりゃそうなるよな……

 ヒロフミの予測が当たっていたのかフェイト神はコユキの大きな体に隠れてプルプル震えている。

 どうやらカギ棒が効くらしい。

 コユキは両手を広げて父親をなだめるように言ったのである。

「待ってよお父さん! レグバの皆も好き好んでアタシ達に消えて欲しいって言ってる訳じゃ無いのよ! もう何度も何度も色々試して、他に手段が思いつかなくなって今回そういう方法に辿り着いたんだよ! ここに戻って来る間だってずっとアタシに謝ってばっかりだったんだよ、フェイトさんてば! 頭ごなしに怒らないでよ!」

 ふむ、確かにね。

「怒るだろう? 普通! 親の気持ちにもなってみろよ! こんな事言ったら問題かもしれんが俺は言うね! よその子にしろよ! なんでうちの子なんだよ? 何だったらツミコで良いじゃないか! おい、フェイトだっけかそうしろよ!」

 酷いな、幾らツミコさんだからって……

「あのねぇ、これから訪れる未曽有の危機を回避する為には、あんな性格破綻した出涸らしじゃ物の役に立たないのよ! アタシと善悪が犠牲になるしか道は無いんだってばぁー!」

 どちらかと言えばこの親子の方が人格的に問題あるのでは?

「ほーう、何だかお前喜んでるみたいだな? あ、そうかニートで結婚も出来ない惨めな人生を終わらせたいとか? そうかそうか役に立って死にたいってか! この親不孝者っ!」

 ああ、もう、そんな言い方したらダメでしょうが……

「キーッ! ニートは兎も角、もう少しで死ぬのに結婚とか無理に決まってんでしょうがぁ! なによっ! 自分だって引き籠ってたくせに! 男の癖に情けなかったわよねぇ? その上高々ゲームできないからってウジウジしちゃってさぁー、お婆ちゃんに聞いてみなさいよ? きっと比べてくれるわよ、お父さんとアタシのどっちが親不孝者かってね! 負ける気がしないわっ! 敗北が知りたいわねっ!」

「なんだとぉ!」

「なによ!」

「ブスっ!」

「クソジジイっ!」

 単なる喧嘩っぽくなって互いのウィークポイントを攻撃し始めたら白熱の一途を辿るしか無いのだが……

 私が先行きに不安を感じていると、自分達が元凶だと自覚したのかフェイトがコユキの後ろから顔を出して二人に向けて言うのであった。

「あのー、ちゃんと皆さんにご理解頂けるように説明しますんで、取り敢えずお寺に行きませんか? ほら、人も見てますし! ね?」

「当たり前だろう! 最初からお前らが順を追って説明した手紙でも出して来てればこんな言い争いなんかして無いんだからな! だが言っとくぞ! 説明聞いた所で納得出来なかったら俺は断固反対するからな! 何だったら俺自身の手で祓ってくれるからな! 覚えとけっ!」

「そうよ! アンタ等がコソコソ勝手に動いていたからこんな喧嘩みたいになっちゃったんじゃないのっ! 最初から分かり易く説明とか出来なかった理由を是非聞いてみたいもんだわねっ! アスタの復活だってバアルちゃんとの戦いだって、ちゃんと全員を集めて言葉で説明すりゃ良かったんじゃないの? なんかアンタ等の計画って奴にも疑問が湧いて来たわよ~! どれ、幸福寺でじっくり聞かせて貰おうじゃないのよ! その上で気に入らなかったら遠慮なく祓わせて貰うんだからね! 行くわよ! お父さん!」

「おお、行こう行こうっ! 行って話を聞いてその後リンチだからな! 楽しみにしていろ!」

「え? え? ひ、ひいぃっ!」

 コユキに押し込まれる様に後部座席に座らされたフェイトは、恐怖でブルブルガクガクと震えるのであった。

 コユキがぬかりなくチャイルドロックをした為脱出不可能だったのである。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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