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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1009.猫ドア


 ……無事? キープされたレイブはヘラヘラ笑っているラマスと、揃って首を傾げながらコソコソ話し続けている竜二匹と魔獣二頭を引き連れて、小屋のすぐ隣の頑丈そうな柵の所まで戻って来ると、後ろを振り返りつつ声を発する。

「ラマスやカタボラ、エバンガも味見してみたいんだったよね? じゃあ先に小屋の中で待っていなよ、俺ちょっと一搾りしてくるからさ!」

「ひ、一搾り、ですか? い、一体……」

 慌てた感じのペトラの大声がラマスの声を掻き消す。

『レイブお兄ちゃん! 今日のご飯当番はアタシじゃないのぉっ! 代わって貰うのなんて悪いわよぉ!』

 レイブは笑顔で答える。

「大丈夫だよペトラ、結婚や婚約はまだ保留だったけどさっ、その一歩手前、キープは受け入れて貰えたんだからね、やっぱり今日って特別な日だろう? 俺的にさ、うふふ♪ だからここは俺に任せて小屋の中で待っていておくれよ、いつもより丁寧に搾って持っていくからね、今夜はお祝いだろぉ?」

 キープでお祝い、か…… まあレイブ本人が嬉しそうだから良いのだが、もう一方の当事者ラマスは申し訳なさそうな顔で俯いているのだが?
 自分の中だけでは人生の大きな分岐点に達した気分のレイブが、自ら準備した夕食で仲間達に振舞いたい、その気持も判らなくは無い。

 そう思ったのだろう、ギレスラは無言で頷くと小屋の中へ進みつつカタボラとラマスもそれに続き、何とか小屋に潜り込めそうなサイズのペトラは巨大なエバンガに付き合うつもりなのだろう、小屋を挟んで反対側の空き地にその身を横たえたのである。

 先程は個室に喜び転がり回ってしまったラマスであったが、色々落ち着いてきたのか小屋に入った後はギレスラが招き入れたままに任せてリビング的な土間に置かれていた切り株状の椅子に腰を下ろしてじっとしていた、こうしていれば見目麗しい見た目も合わせて年相応で素直な少女そのものである、ふふふ、大人しいもんだ。

 改めて小屋の内部をじっくりと見回していたラマスの左手、丁度猪とトナカイが入って行った広場側の壁の下方から聞きなれた声が聞こえてくる。

『まあ、この仕組みって凄いですわね! ペトラ様、コレもレイブ様が考えたんですのぉ?』

『そうなのよ、アタシが大分大きくなって来ちゃったじゃない? このままじゃいづれ小屋に入れなくなるんじゃないか、そう危惧したレイブがね、作ってくれた仕組みなのよ♪ 凄いでしょ?』

『うんうん、素晴らしいですわ!』

 獣共が何を嬉しそうにしているかと言うと、何と言う事は無い、空き地の広場に面した小屋の壁の半分ほどが開閉式で可動可能な板になっていた、それだけの単純な仕組みについてである。

 モンスターの皮製だろう、グラグラと不安定な蝶番ちょうつがいで止められただけの板を嬉しそうに何度も押して引いて又押して引く、それを繰り返しては笑い続けるペトラとエバンガの姿は、令和に生きる皆さんからしたら酷く残念に映るかもしれない……

 しかし、しかしだ…… ここは遥か先の未来、なのだ……
 全ての科学技術が失われ、合理主義が忘れ去られた不毛の世界、なのである……
 素人丸出しのレイブお手製なリフォーム技術を稚拙だと笑い飛ばす賢者は存在しなかったのではなかろうか? たぶん……



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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