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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
671.も~いけずなんやからぁ

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 可愛らしい欧州幼女姿だったバアルが、端正な顔を歪ませながら言う。

「なんなのサタン! 妾に嘘吐いていた偽者の癖にその態度って! 姉様達が居なかったらとっくに殺しているんだよ? お前さぁなんかさぁ! ちょっと態度悪過ぎるんじゃないの? 殺すよ? マジで……」

 アスタロトも厳しい表情を浮かべて続けた。

「全くだな! 我に至っては初対面だというのにその礼を失した態度、であるか…… なにやら善悪とコユキに反抗的なのは察しているが、いささか不敬なのではないか? 初めて会う魔神に対する態度としては? 死にたいのか?」

 一瞬ビックゥ! と体を硬直させたサタナキアであったが、バアルとアスタロトの足元に視線を漂わせながら、震え続ける声で答えるのであった。

「フ、フンッ! お、お前等魔神たちはいつもその理屈だな! き、気に入らなければ殺す、だろう? 良いよな強者はなぁー! それにアスタロトは言ったよな? 初対面? 初めて会ったぁ? 馬鹿言ってんじゃねーよぉ! 俺とお前等はとっくの昔に会ってるって言うんだよぉぉっ!」

「えっ! 妾とも? ヘルヘイムの呪縛を解く前にぃ?」

「えええっ! お前と我がっ! いつだっ?」

 二人とも覚えていないらしい…… 残念至極っ!
 前にあってるよ? 嘘、どこで? ゴメ、全く覚えていないわぁ!
 自殺物である……

 だと言うのにルキフェルの双子の弟、サタナキアは一所懸命にガッツを搾り出して二柱に説明をしたのである、中々に惨めな行為であるのに頑張っていたのだ。

 ほらほら、アン時に居たじゃないのぉ? 忘れっちゃったのぉ? もうっ! ウッカリさんなんだからぁー、え、思い出したっ! そうだよ、居たかもじゃなくて居たんだからねっ! そうそう、忘れちゃ嫌だよぉ? って奴をやり始めたのである、悲しい……

 しばらく聞いていたアスタロトがうろ覚え丸出しで言ったのである。

「んじゃあ、クロノスの腹の中に三柱揃って飲み込まれた時のルキフェルの身代わり、あの石がお前、サタナキアだった、そう言う事なのかぁ?」

「そうそう! それそれえぇ! それが俺だってばぁ!」

 バアルも大きな目を剥き出して聞く。

「あ、あの腹の中で何を聞いても『だな』しか答えなかった頼りないあの偽ルキフェルが君、だったのかぁ、あの後本物のルキフェル兄様に助け出された後、一度も思い出さなかった、あの石、それが君なのぉ?」

「あ、うん、あれ俺…… どう? 思い出してくれた?」

 アスタロトとバアルは揃って頷きを返し、兄弟らしく声を合わせて言った。

「「それで?」」

 この言葉が余程意外だったのか、サタナキアはやや戸惑った様に答える。

「そ、それでって、わ、判ったんじゃないのか? 俺とてもルキフェルと同様にお前等の兄弟、と言う事だ! そうだろう?」

 アスタロトとバアルは再び声を合わせた。

「「ふむ、それが?」」

「えっ?」

 素っ頓狂な声を出して固まったサタナキアに対して、改めてアスタロトが言う。

「お前があの時の身代わり、『石』だと言う事は理解したぞ、更に我の兄弟だと言う事も、まあ、そう言えなくもないかもな…… しかし、それがお前を生かす事と何の関係が有るというのだ? コユキと善悪に対する不敬、更に我に対する数々の無礼…… 弟だろうが『石』だろうが殺すだろう? 普通」

「げっ!」

 バアルも続いた。

「全くその通りだね、だけどアスタ! コユキ姉様と善悪兄様が言っていたじゃないか、殺しちゃ駄目だってさ! お許しが出るまでは辛抱しなくちゃ駄目だよ! それに許可が出たら殺すのは妾でしょ? このゴミが、『石』風情が妾に対してしでかした数々の嘘と三文芝居…… 妾、はらわたが煮え返っているんだよ! 譲っておくれよ、見物しているだけで満足できる残虐なスプラッターショーにして見せるからさ♪」

「なるほど、いいぞ♪」

「ひっ!」


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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