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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
368.マリトッツォ

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 翌日の朝を迎えたコユキは色々あったとはいえ、寝つきも目覚めも良かったせいか体調は万全に感じる。
 さっさと朝食を済ませると、誰が送るのを待つでもなく、テクって幸福寺へと向かったのである。

「おはよー!」

庫裏くりの玄関で元気に挨拶をしたコユキを善悪が迎える。

「おはようでござるコユキ殿! 今日はまた早いでござるな」

コユキは笑顔で答えた。

「うん、ご飯だけ食べて急いできたのよ、デザートは茣蓙ゴザから出そうと思ってさあ、良いよね? 本堂かな?」

「ああ、そーいう、今は本堂でスプラタ・マンユの朝ご飯に使っているでござる、お茶淹れてくね」

「サンキュー♪」

 嬉しそうに本堂へ歩いていくコユキの後姿を見送った善悪は台所へ戻っていくのであった。
 自分やアスタロトとトシ子、アフラ・マズダ達の食事の片付けを済ませると、お茶の準備をして本堂に向かうと、茣蓙の上でコユキとオルクスの二人が寝そべったままでマリトッツォを頬張りながら笑い声をあげている。

 楽しそうな姿を目にした善悪は二人に話し掛けるのであった。

「随分楽しそうでござるなぁ? 何か面白い事でもあったでござるか?」

言葉に振り向いたコユキは口の左右に生クリームを付けたまま笑顔で答える。

「昨日アタシが床下にいたの知ってたんだってぇ~? 恥いわねぇ~、一杯食わされちゃったってわけね、てへへ」

「なんだ、オルクス君がバラしちゃったのでござるな」

「バラシタ、ヨ」

「んで、騙されたのに怒らないのでござるか? 珍しいでござるな」

「怒ろうかとも思ったんだけどね、考えたら頼もしいかなってね、今度の相手のバアルって色々暗躍している感じじゃない? ペナンガランとかさ、今回の善悪の華麗な対応とか見ると、スパイとか送り込まれたりしても大丈夫そうだなって、感心しちゃったわよ」

「ほほぅ、お任せあれ! でござるよ~! 確かにチロの件と言い、今回コユキ殿の動きに合わせるように足柄山に手下を配置していた事からも所謂いわゆる曲者くせもの、一筋縄ではいかなそうな相手っぽいのでござる、今後はお互いもっと注意するのでござる」

「そうね」

ここで、生クリームに頭から突っ込んでいたオルクスが二人に言うのであった。

「バアル、ズルソウ、ダッタ、カラ、ナ~」

この爆弾発言にコユキは目を見張り、善悪は驚いた声で問うのであった。

「お、オルクス君! バアルに会った事あるのでござるか? 勿論昔ならあるでござろうが、最近、ここ二、三十年の間にでござるよ、会ったの?」

「ウン」

 事も無げにさも当たり前って感じで答えるオルクス。
 コユキは思うのであった、こいつら一度本格的にホウレンソウの大事さを教えなきゃならんな、と、そして決意するのであった、伝言ゲームでもさせるしかないな、と……

 こうして二人はオルクスからバアルの情報を聞き出すために短くない時間を費やすことになるのであった。
 何分拙いつたないオルクスから聞き出すのである、早送りして見た所、何と二日もの間中質問と聞き返し、メモと書き直しに費やし続けたようであった。

 こういう時に便利なのが私の能力『経験』である、話を聞いてメモにまとめた物を読み直した後に、善悪かコユキのどちらかは一連の流れを要約しているはずである。
 それを、一緒に経験すれば時間短縮、ノンストレスって訳である。

では、早速……

………………
…………
……

結論から言うね…… 非道い思いをしたよ……

 聞き取った話を要約は、二人ともしていた、予想通りだった。
 只二人とも何て言うか、雑念が多すぎるのだ……
 揃って地頭が良いからだろうか? 纏めまとめストーリーの編集作業中に一々脱線するのである。

 具体的な内容を言うと、善悪の場合突然今週の戦隊ヒーローのあらすじが出てきたり、新発売のフィギュアを手に入れてご満悦な自分の姿だったり、葺きふき直す必要もないのに瓦を取り換えた際に集まるであろう檀家たちからの浄財がお幾ら万円、いやお幾ら何千万位になるかの計算とかである。
 コユキの場合は、食べ物の事とBLであった、結構頻繁に……

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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