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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
160.魔獣

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 「オルクス君、一体どこに送ったのでござるか? 」

善悪の問いにオルクスが答える。

「トリマ、チカク、ノ、ヤマ、ダヨ…… ヒガシノ、ホウ」

ラマシュトゥとシヴァも驚いた口調で続いた。

「あの熊、魔力を使ってましたわ! 」

「ああ、信じられん事だが、その通りだ」

その会話を聞いたモラクスが唸る様に答えた。

「では、モンスター、魔獣だったと言う事であろう、大変珍しい事ではあるが……」

「馬鹿な! 」「ぬうぅ!」

アヴァドンが信じられないと言った感じで叫び、アジ・ダハーカが同時に唸った。
 コユキが不思議そうに質問した。

「そういえば、悪魔とか魔王とか出てくるから当たり前だと思っていたけど、皆の反応見ると魔物って珍しいのかな? 」

代表してモラクスが答えてくれた。

「いいえ、魔物は珍しくありません、魔界ならどこにでもいますから、珍しいのはさっきのヤツみたいな魔獣でございます」

コユキはハテナ顔で聞き返した。

「へ? それって違うの? 」

「はい、魔物は主に家畜が変化した物でございます、対して魔獣は野生種となります、が、最近は見掛けない筈なのですが……」

「へぇ、昔はいたでござるか? 魔獣が? 」

「はい、ジュラ紀や白亜紀は多かったですね、御存知でしょう、恐竜とか言われる物です」

 ふむ、悪魔達の中では魔物と魔獣には大きな違いがある様であった。
 話していて少し落ち着いたコユキたちは、再び溶岩窟の奥に向かって進み始めるのであった。

 溶岩窟をズンズン進んで行くと、やがて通路全体に赤と黒のまだら模様のオーラ、瘴気だろうか? が張られた場所に出た。
 手前で足を止めた善悪が、自身のふところに入ったオルクスに尋ねる。

「この向こうが本格的に魔界、と言う事でござるか? 」

「ソソ」

オルクスが普段通りシンプルに答えた。

「ここは、地上への瘴気の流出を防ぐ為の簡易的な結界ですな、中に入ると普通の人間にはやや苦痛でしょうな」

流石に説明不足だと思ったのか、コユキの肩の上からパズスが補足してくれた。

「へ? 」

話しを聞きながら瘴気の壁をシラっと越えた……
えっ? 越えてしまっていたコユキが間の抜けた声を上げた。
 驚いたのは善悪であった。
 何しろ、善悪にとって幼馴染のコユキは、体型こそ浮世離れした化け物であったが、パズスのいう所の『普通』の範疇はんちゅうであったからだ。

「こ、こゆきちゃん! だ、大丈夫なの! 」

善悪が心配しているそばから、案の定コユキの様子がおかしくなってしまった!

「んぐっ! た、助けえっ、ぜん、善、あ、く…… さ、よ、う、な、 ら……」

ガクリッ!

「こ、こゆきちゃ────ん!! 」

善悪の絶望の叫びが、溶岩窟中にむなしく響き渡るのであった……
 善悪はコユキに寄り添うように、瘴気の壁を通り過ぎ、ピクピクしているコユキを抱え上げ、悲しそうな声を上げるのであった。

「こゆきちゃん! しっかりして! しっか、かはっ! ぐぬぬぬぅ! む、無念っ! があはぁぁ! 」

ガクリッ!

 なんと! 善悪までコユキに続いて倒れ込んでしまったでは無いか!
 こんな! こんな中途半端で終わってしまって良いのだろうか?

「てへへ、良いノリだったわね、善悪! 体調どう? 」

コユキが言った。

「なはは、であろ? 体調でござるか? ん、いつもより良い位でござるよ! 」

「まじ? アタシもなのよん! 」

 馬鹿二人のいつもの悪ふざけであったようだ……
 やれやれ、全く…… 人騒がせなデブ共め!!

 心配してしまった私と違い、スプラタ・マンユの面々は慣れているのだろうか?
 全く気を使っていなかったようで、少し笑ったりしている…… ちきしょう!

 兎も角、魔界の瘴気も何故だか二人には一切の悪影響を及ぼす事は無く、その後もテクテク気楽に歩いて行くと、先の方に何やら真紅の光りが見えた。
 真紅の光りが指し込む先には、溶岩窟の中とは違い、広大な広さを感じさせる空間の存在を感じ、二人の足の運びを速めたのであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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