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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
629.一盤散沙

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 独りで先にスミレの花の様な濃い紫のオーラが見えた平原に辿り着いたコユキはいささか戸惑った表情を浮かべて、その場に立つ唯一の存在である、いつも通りの大きさ、ソフビサイズのシヴァに問い掛けるのであった。

「ね、ねえ、シヴァ君? これってどう言うー、ってか手伝ってとか言って来たんじゃ無かったのぉ? 説明求むっ! よぉ?」

 シヴァは最近あまり見かけない、漆黒のビニール袋(透過性ゼロ)、恐らく幸福寺で見つけて来たのであろう、旧世紀の遺物を片手に、雪原を埋め尽くした魔核を一つ一つ確り吟味して拾い上げて収納しながら言葉を返したのである。

「へ? どう言うも何も、見た通りですよ、ここに散らばった魔核の中からイーチの馬鹿の配下、スケルトン共の奴だけ選んで集めているんじゃないですか? 分かりませんかね? 小ぶりだけど、混ざり気が無い真紅の奴ですよ! 狂信者の魔核です、これが分別するのに結構骨が折れましてね…… んで助力を求めたんですが…… ふふふ、まさかコユキ様自らが駆け付けてくれるとは…… 慮外の僥倖ぎょうこうだな、これは! さあ、早く拾い集めて下さいよ! はいっ、これっ」

 そう言いながら差し出された漆黒のビニール袋を受け取って、足元に馬鹿みたいな数が転がっている魔核の中から、シヴァが言った通りの狂信者、イーチの配下であるスケルトン達の物であろう、汚れない真紅の魔核を選んで拾い始めながらコユキはシヴァに聞いた。

「ねえシヴァ君? ここには敵はいなかったって事なのかな? んでも、何で味方の筈のスケルトン達まで魔核になっちゃってんの? おっ、見つけたっ! 一体何が有ったの? おおっ! ここにも二つあったわよっ! 経緯を聞かせてくれないかな? おっ! ああ、これは違うかぁー、んん、横に有ったわん! ってかこれ疲れるわねー」

「敵ならいましたよ、イーチ率いるスケルトン軍団と睨み合いでしたね、なんか濃い青紫のレッサーばっかりだったな、んでそいつらのリーダーみたいのが『紫の魔将ウィオラケウム』とか何とか名乗ってましてね、今にも激突だって感じだったんですよ、風雲急を告げる、すわ決戦、てっ所でしたよ」

 コユキは小さな魔核を拾い集めながら返す。

「へー、んじゃイーチもこの中に混ざっているのかな? んでシヴァ君も一緒に戦っていたの?」

 シヴァも目をしばたかせながら答える。

「いいえ、俺は魔力を極限まで小さくして物陰に隠れながらコキュートスに向かっている途中だったんです、長兄から指示が出ていたんでね、んで、まあ、ここら辺りも通り過ぎようとしていたら次兄から通信が入ったんですよね、コユキ様が言ったんでしょう? サタン喰わすなって、んでラマシュトゥがどこにいるかも、でしたよね?」

 コユキは一旦立ち上がって腰を伸ばしながら言う。

「ああ、そうだったわね、足の指をやっちまったと思ってね、でも杞憂きゆうだった様だわ、今は腰の方が痛いくらいよ、んで、どうなったの?」

 シヴァは眼精疲労から来る肩こりだろうか、首を左右にコキコキ鳴らしてから言った。

「ええ、通信を聞き終えると同時にスケルトン達を率いていたイーチが駆けだして行ってしまったんですよね、追いかけようとするスケルトン達に『付いてこなくていい、お前たちはここで敵を殺せ!』って命令して、もうあっと言う間に見えなくなってしまいまして…… あれですかね? コユキ様と善悪様の命令ってのがアイツ的には重大だったんですかね? 狂信者だし」

 コユキは一心不乱に拾い続けて居るシヴァの姿に視線を移し、ハッとした表情で言った。

「シヴァ君そこら辺はさっきアタシが拾った場所だわ! もう少し先の方、そうそう、その辺りならまだ見てない場所だわ、んで、その後どうなったのん?」


拙作をお読みいただきありがとうございました!


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