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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
631.魔核回収

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 シヴァが感心した様に言った。

「以前ラマシュトゥ姉が漏らしていましたが、コユキ様は善悪様と違い天性のセンスがお有りになる、普通は言われて出来る物ではありませんよ、今回の一件が終わったら、俺がもっとお教えしますよ」

 コユキはカギ棒を手元に戻しながら戸惑った様子で言った。

「え、でも、今回の件が終わったらアタシと善悪は――――」

「いつも希望は有ります、絶望もですがね…… 余命宣告された者がその期限を大きく越えて生きて居たり、快癒を告げられた者が帰り道で事故にあって身罷みまかったり、普通に起こり得る事でしょう? ですから俺はコユキ様と善悪様が消滅する、その瞬間でも希望を捨てませんよ! 良く仰っているじゃないですか、今出来る事を一所懸命にやるだけだ、って、俺もそうです、この一件が終わって、皆で幸福寺に戻ったら魔力操作を教えますよ、良いですよね?」

 コユキは驚いた顔を浮かべたが、直ぐに満面の笑顔に変えてシヴァに返したのである。

「そ、そうだね! うんシヴァ君、この一件が無事終わったら、教えてね! 魔力操作」

「了解です、ビシバシ行きます」

「えへへへ」

「お、来たみたいですね、手が増えるのは大歓迎だ」

 合流を果たしたトシ子とリエ、リョウコ、シヴァと一番仲が良い兄のパズス、虎大と竜也、カルキノスにフンババ、北の魔王カイム、レグバ達も加わって魔核拾いを頑張っていると、やがて敵を殲滅せんめつしたのか、スカンダとガネーシャ兄弟も追いついて作業を始めたのである。

 因みにこの間、魔力が枯渇気味になってしまっていたヒュドラは皆の作業を見守る様に、腹這いでぐったりとしていたが、それでも最後まで付いて行く、見届ける、そんな感じの目の光を消すことは無かったのである。

 永遠に終わらないのではないか? そんな風に思えた収拾作業を効率化させたのは、意外な事に自称、『北の大魔王』であるカイムのスキルである。

 動物や植物、なんだったら雨とか風とか雷や雪、そんな自然現象の言葉まで聴く事が出来、話し掛ける事も出来る魔王が魔核たちに語り掛けた結果、コユキ達に従いたい、そんな気になった魔核たちだけが僅かに光を強めて、目を凝らさなくても見つけ易くなり、作業効率を格段に上昇させたのであった。

「よしっ! 粗方回収出来たわね! んじゃあ、次に向かおうか? お婆ちゃん、ってか皆自由に意見を言ってね! 次はどっちに向かおうか?」

 即座に答えたのは百四十センチ位の金属戦士っぽいパズスであった。

「コユキ様の足指が大丈夫な様でしたら、無理やりラマシュトゥを探すのは止めにして、順番に向かいませんか? 長兄が指示した外輪から徐々に内側に向かうのでしたら、プレゲトーン、分かり易く言えば『炎の川』に向かいましょう! あそこには今、アジが向かっている筈ですから合流してコキュートスに向かいませんか? どうですかね、コユキ様?」

 大好きなパズスにはイエスマンのシヴァが頷くのを確認した後で、コユキはシンプルな質問をしたのである。

「『炎の川』か、不思議なんだけどさ、極寒のニブルヘイムにそんな風な暖かそうな場所が有るんだねぇ、アジ・ダハーカちゃんがいるんだったらそこに向かってみようよ! ちょっと冷えて来た事だしね、ねえ、どう? 皆」

 パズスが如何にも申し訳なさそうな口調で答える。

「あー、えっと、申し訳ないのですがプレゲトーンはここより随分寒い場所でしてぇ、確かに炎は燃えてはいるんですが、燃焼温度は全て氷点下なんですよねぇ、何故なら燃え盛る炎は全て知性の炎、過去から現在に至るまで、悪魔に縋ってでも真実を知りたい、そう渇望した学者たちが集う場所なんですよ、本当にゴメンなさい…… あ、あれは身に付けていないのですか? 坂田公時さかたのきんときの腹掛けとか? どうです?」

 コユキはツナギの腹を叩いて答えた。

「大丈夫、着けてるわよ! お腹は冷えないと思うわ、多分だけどね!」

「良かったです、では参りましょうか」

「うん、行こう!」

 こんなやり取りを経た一行は、知識を欲する余りに堕落してしまった、学者や知識人、哲学者たちや詩人がたむろしているプレゲトーンを目指して進み始めたのであった。

 因みに、未だ回復し切れていなかったヒュドラはソフビサイズで小さなシヴァが片手で持ち上げて連れて行ったのである。

 強さのレベル、と言うか位階が違う、そう目を見開いたコユキは、今回生き延びれるとしたら絶対教えを請おう、そう心に誓うのであった。


拙作をお読みいただきありがとうございました!


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