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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
580.乾燥注意報

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 ロット神の属性に合った方向は南である。

 自身の属性以外の場所ではその力を存分に発揮できない事は、軽薄なデスティニーに聞かされてはいたが、まさかここまでの窮乏きゅうぼうだったとは……

 コユキは慌てて言うのであった。

「何よ、こんな近くに居たんだったらここまで追い詰められる前に幸福寺に来れば良かったんじゃないの? 馬鹿ね…… んでも、もう大丈夫よ! あのお寺って食べ物豊富だし、善悪はメチャクチャ料理上手だからね! もう飢えや辛抱とはおさらばなのよ! 安心してね、さあ、汚らしいわ、ポイしましょうね、ポイ!」

 そう言って蛙干しをスニーカーで蹴り飛ばそうと近づいたコユキであったが、自らを盾にして干乾ひからび蛙を守ったのは他ならぬロット神であった。

 別に汚いと思ったわけでは無いが、コユキが咄嗟に足を引いたお陰で華奢な背中にダメージを受けずに済んだロット神は、驚いているコユキを無視したまま、たった今守ったドライフロッグを次々と口に放り込んだのである。

「あわわわ、ロットさんっ! もうそんなの食べなくても良いんだってばぁっ!」

 コユキの制止に耳を貸す事無く六匹分あった蛙の遺骸を食べ尽くす勢いで飲み込んでいたロット神であったが、残り二つとなった時、一旦口の近くに運び掛けた手をピタリと止めてスックと立ちあがりコユキに向き直ったのである。

「心配を掛けてすまなかったな、聖女コユキよ、私がレグバの長、南方の方向神にして太古の運命神、ロット・ラダである」

 何とビックリ、汚い元蛙四匹で復活とは! 心なしか肌艶まで健康的になった気がするし、でっかい頭の震えも止まってるみたいだ、凄い。

 私と同じように驚いているのだろう、あんぐりと言うよりはオエェと言った感じで口を歪ませているコユキである。

 ロット神はコユキに言う、ちなみに残った二匹分の生ゴミを大事そうに短パンのポケットにしまいながらである。

「私は他の三柱と違って運命操作ができるのだ、その気になればコユキや今回の聖戦士、善悪和尚の運命を変える事でここに導く事も可能だったのだ! それをしなかったのだから今が、丁度良い、そう言う事なのだよ」

 コユキは我に返って聞く。

「そんな事が出来るんだったら何でしなかったのよ? ロットさん、アンタ死に掛けてたわよ? それからポケットの中の捨てなさいよ、汚らしいっ!」

 ロット神は笑顔だ。

「ははは、だから言っただろう? その気にならなかったからだよ、それとこのかてを捨てるつもりも無いっ! 絶対な…… 何、念の為だよ、気にしないでくれ」

 コユキは負けない。

「捨てろって言ってんのよ! バイ菌だらけよそんなのっ! アタシの言う事聞かないんだったら協力しないわよ! 良いのそれで? 生命を救いたいんじゃないの? 

 ロットは大きな目を殊更ことさら見開いて聞く。

「それではお前達二人は協力してくれる、いいや、世界の為に自らを犠牲にする我々の提案を受け入れてくれると言うのか? えっと、本当に?」

 コユキの顔は紅潮している、多分怒りだ。

「そうよ! それより早く捨てなさいよっ! 本当アンタぶっ飛ばすわよっ!」

 ロットは感心した様に呟いた。

「なんと…… ありがとう…… 全生命に代わって礼を言う、ありがとう…… 本当に怒っていないのか?」

 コユキは怒鳴った。

「怒ってるに決まってんじゃないのっ! 早く捨てろって言ってんじゃないのよぉっ! アンタ何? 日本語知らない風でも無いし、アタシのこと馬鹿にしてんのっ? もう良い、分かったわあっ! ぶん殴るっ! 歯を食いしばんなさいよっ! キイィィッー!」

 両手を広げてコユキを制止する様にしながらロットは言った。

「おいおい、物騒だなー、何、いざという時の為の備蓄だってばー、気にするなよー! そんな事より、本当に怒って――――」

「『散弾ショット』(手加減バージョン)」

 ドドドドドドドッ!

「キュウ~」

 パタリ!

 かなり手加減したとは言え、コユキの連打を受けたロット神は意識を刈り取られて地に伏した。

 コユキはロット神の両足を掴んで逆さまに持ち上げ、小刻みに振る事によってポケットの中の物を廃棄する事に成功するのであった。

「これで良し、さて蛙か、いや帰るとするか、『加速アクセル!』」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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