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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
537.ループ2-1

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 その後、フェイトが語った二回前の内容は一回目とは大きく違っていた。

 話が通じない狂信者のハミルカルでは無く、復活したらしいルキフェルから、弟達を説得して貰う事にしたと言うのだ。

 ニブルヘイムで謁見した玉座の主は自らをルキフェルと名乗ったそうだが、メット・カフーだけは後に違和感を感じたと言ったそうだ。

 とは言え他に頼る手も無く、見た目も魔力の質も過去に見たルキフェルと同じだった為任せる事にした様だ。

 その後ヘルヘイムに赴いた自称ルキフェルの解呪によって、バアルがどこへでも自由に動けるようになった事を受けて、それ以上真偽を疑うことは無かったそうだ。

 その後、バアル配下の悪魔達が効率よく魂魄を集めアスタロトの復活へと至ったらしい。

 折よく中東で発生していたいなごを大量に取り込めたからであるが、当初魂魄を集める為に世界中の聖職者や聖女、聖戦士に挑戦したニブルヘイムの悪魔達が連戦連敗した事で、バアルが自ら軍団を率いると言う一幕があったそうだ。

 不思議な事にオルクス率いるアムシャ・スプンタの七柱以外はレッサー並みの弱さだったらしい。

 兎にも角にも、集結した三層の地獄の軍団はクラックを抜けて現世うつしよに顕現したのである。

 例の富士山麓に姿を現した悪魔の総数は千を越え、手当たり次第に命を自らの体に取り込んでいった、殺したのである。

 酷く残酷な虐殺では有ったが、命を吸収しすぎても魔法の行使や魔力を全身に高速で動かす術を持つ悪魔が、より多くの命を引き受ける事で世界の石化を抑え込む、そう信じて六柱の神々は彼らの蛮行に目を瞑ったのである。

 関東地方と東海地方は文字通り、地獄絵図であった。

 人々は我先へと他地域に疎開を始め、海外へと避難する者も後を絶たなかった。

 代りと言っては何だが、滅びの日は無事通り過ぎる事が出来たと言う。

 六柱の神々は犠牲になった人々に心中で詫びながらも、ホッと安堵の息を吐いたのだそうだ。

 しかし、安心したのもつかの間、数か月後には三層の悪魔軍団は消え失せ、一年後、又もや世界は滅亡してしまったと言うのであった。

 コユキが不思議そうな顔をしながら聞いた。

「途中まで残酷とは言え狙い通りだったのに最後はヤケに呆気ないじゃないのん? なに? アスタ、バアル、アンタ等飽きちゃったんじゃないでしょうね? 滅亡したのよ、滅亡! 何で途中でやめちゃったのよ?」

「いや、そんな事言われても我そんな事した記憶とか無いしなぁ……」

「そうだよ姉様、さっきのハミルカルと一緒で、その妾とこの妾は違うんだから判らないよぉ、フェイト、君なら知ってるんじゃない? 何でアスタや妾、偽ルキフェルの軍団は消えちゃったのさ?」

 フェイトがやれやれといった表情を浮かべながら言う。

「皆さんお判りでしょう? 古来より悪魔が顕現して人にあだ為した時、常に人々を守る為に戦って来たのは――――」

「あっ! そうか! 聖女と聖戦士ね! 殺っちまったのかー、あちゃー」

 叫んだコユキに答えてフェイトは言う。

「正解です、世界中から集められた聖女と聖戦士が三層の地獄から来た猛者もさどもを一掃してしまったのです、神器によって祓いました…… 結果、地上の魔力は悪魔や魔神の分も加えてさらに濃密になってしまったのです…… バアルやアスタロトは最後まで粘ったようですが、地元日本の二人、真なる聖女コユキと相方の聖魔騎士の前に奮闘虚しく敗れ去ってしまったそうなんです」

 善悪がアスタロトとバアルを慰める様に言う。

「あー拙者達が相手じゃ仕方が無いのでござるなー、何しろ僕チンとコユキ殿のコンビネイションは他の凡百の奴らと違ってダンチでござるからね♪ おまいらレベルじゃどうしようもないのでござる、まあ、ナイスファイト! 今後に期待っ! でござるよ」

「くっ! ムカつくぜっ!」

「まあ、妾達って今回も負けたから言い返せないね、仕方ないでしょ」

「ははは、でござろ?」

 フェイトがやや言い難そうな感じで調子に乗っている善悪に言う。

「いや、善悪じゃありませんよ、コユキのパートナーの聖魔騎士って」

 善悪は笑顔を訝し気な物に変えて聞き返した。

「へ? 拙者じゃない? んじゃ誰でござる?」

「光影ですよ、幸福光影」

「み、みっちゃんでござるか? えええっ! なんで、そんな……」

 善悪だけでなくコユキも驚愕に目を剥いている。

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