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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
374.アンドロマリウス

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 コユキは受け取った魔核を改めてしっかりと観察したが、なるほど、赤さはうっすらとしほぼ透明になっていて、弱々しい光も今にも消え去ってしまいそうに見えた。

「やっぱり…… 何となく気が付いてはいたけど、アーティファクトや神様って魔核持ち、悪魔だったのね! ってことは魔核を手に入れて依り代に入れれば実体化出来るのよね?」

「まあ、そうですね、魔核も大体神社内にありますよ、見つけ難いですけどね~、私に掛かればちょちょいのチョイ! ですけどね」

「ええ? そうなのでござるかアンドロマリウス?」

「覚えてたんですね、はぁ~、まあ、私『ぬすみ』の悪魔ですから、お宝探しはお手の物、ですね!」

「じゃ、じゃあさ――――」

 コユキは公時きんときはじめライコーと残りの四天王、カメのキトラに、ついでと言っては何だが桃太郎の吉備津彦命キビツヒコノミコトの魔核収集をアンドロマリウスに頼むと神社を後にするのであった。

 分かれの瞬間、コユキと善悪の背に向けてアンドロマリウスは声を掛ける。

「コユキ様、善悪様…… どうやら未来に待つ運命は楽観的なものでは無いようです…… お二人が旅立たれる時には、このアンドロマリウスもお供いたします…… お二人を頼むぞゲルド、ウカノミタマ、稲荷いなりよ、目覚めたらスクナビコナ、中納言にも伝えてくれよ」

『承知しました道真みちざね様、暫ししばしのお別れですね、どうぞお元気で……』

「なに、我ら悪魔にとってはほんの玉響たまゆらよ」

 答えて笑顔を浮かべた途端、アンドロマリウス、菅原道真すがわらのみちざねの姿は消え去っていた、コユキと善悪の目の前には有名な千里の天神さんが先程までの神社と同様に建ってはいるが、所々洗練されていてどこか違った印象を受けた。

「きっとクラックの中の出来事だったのでござるよ、ほら」

 善悪の指し示す先に目を向けたコユキには、受験合格のお礼参りだろうか、沢山の参拝客が階段を上って行く姿が映ったのである。
 実の所、この多くの人々からの信仰篤い小洒落たムードの姿こそが、本来の『千里の天神さん』上新田天神社の実際の姿なのであった。

 余談だが、こちらの神社は大変フレキシブルな事でも知られ、様々なモダンコンテンツとのコラボレーションにも積極的なのだ。
 コロナ禍では、ユーチュ〇ブの『千里天神チャンネル』に様々な噺家はなしかさんが出演し静かなムーブメントとなっているし、令和三年十月には俳優でヴァイオリニスト古澤巌さんのコンサートも開かれる。
 興味のあるオーディエンスの皆はぜひ参加して欲しいと願う、私、観察者である。

 不思議な気分を振り払うようにコユキは大き目の声で言うのであった。

「よし、んじゃあ、家に帰ろっか!」

 帰りの道すがら、必死に今日中に食べるからと善悪に頼み込み、二十円のカップ麺を十二個 (あるだけ)買って貰ったコユキは嬉しそうにほくそ笑んでいた、隣で店長もホクホク顔であった、つまりウィンウィンの結果となったのだ、思いがけず実利の多い大阪遠征となったのである。

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