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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
275.アーティファクト ① (挿絵あり)

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「おや、早かったじゃないの、見つかったの? あーてはくと」

居間に戻って来た三人の姿を見て問い掛けるコユキに善悪が笑顔で答える。

「うん、無事見つけて来たでござるよ」

 文箱ふばこから茶巾袋を取り出した善悪は座卓に着きながら言ったのである。
 コユキは半分程に減ったホールケーキをモグモグしながら善悪の後ろに座った二人にも労いねぎらいの声を掛ける。

「ルクスリアとイラもお疲れ様、どう? 善悪んちのお蔵、面白い物でもあった?」

突然の爆弾投下、二人の表情に緊張から来る引き攣りが浮かぶ。
 ゆっくり顔を二人に向けた善悪がニタァっとした笑顔で言った。

「どうしたでござる? コユキ殿が聞いているでござるよ? ん?」

 イラの背筋に冷たい汗が流れた、善悪の表情は笑顔そのものだったが、反してその瞳は全然笑っていないどころか、確かな殺意を込めてコチラを凝視している事に気が付いたからである。
 
 られる、そう思ったイラは慌ててコユキに対して返事をするのであった。

「いえ、何処にでもあるような物ばかりでしたよ、めちゃくちゃ古そうな竹簡ちくかんや、いわく有り気な偶像の数々、見るからに呪われていそうな刀剣や面、本当にそこらに転がっているような普通の物ばかりでした、な、なあ? ルクスリア」

「は、はい、普通でしたよ普通、珍しい物や変な物なんか一つもありませんでしたわ、それこそ、ストーカー的な気配がするノートや、気持ち悪い細工を施したエロ本なんか無かったですわ」

「ば、馬鹿っ!」

「はっ! し、しまった!」

善悪の右手が静かにふところへと差し込まれる、その時コユキの明るい声が響くのであった。

「なーんだぁ、只のエロ本かあ、ルクスリア、男の隠し物なんて皆そんなもんなのよぉ、なははは、にしても、そんなの見て興奮したって自分の彼女や奥さんに出来る訳でもないのにね? 馬鹿だよねぇ~男ってさぁ~」

彼氏や旦那どころか、存在もしない二次元のBL漫画の主役たちに夢中なくせに、良く言えたモノである。

「まあ、ルクスリアに見られちゃって格好悪かったわね、善悪! ケラケラケラ」

イラとルクスリアの視線を集めていた善悪を包んでいた凶悪な殺気が一瞬で消え去り、コユキの方へ顔を戻した善悪は言うのであった。

「そうなのでござるよ、恥ずかしいのでござるぅ~、てへへへ」

 可愛らしい声音で返した善悪の後姿を眺めながら、ボシェット城で直接の戦いにならなかった『聖魔騎士』、善悪の恐ろしさを初めて知るイラとルクスリアであった。

 二人の戦慄など何処吹く風で、善悪はご機嫌に聖遺物の説明を始めるのであった。

「さて、この派手な茶巾袋の中身が我が幸福寺に代々伝わる『聖遺物』、昼夜チュウヤ叔父さんが残したアーティファクト、『キビ団子』でござる」

 言いながら、座卓に広げたティッシュペーパーの上にカサカサっと茶褐色のパサパサした団子? ボール状の物体を数粒取り出して転がして見せる。
 コユキは内心でガッカリしていたがそれも仕方あるまい。

 宗教とかに特段興味の無いコユキが、アーティファクトと聞いて最初に思い出したものが、考古学者が世界中を探索しまくって、聖櫃せいひつや聖杯にまつわる冒険を描いたハリウッド映画であり、伝説の物とか言われれば、聖剣エクスカリバーだったり、雷槌らいついミョルニルや、帝国剣、ロンギヌスの槍がパッと来て、理想は王者のマントだとか、光りの盾とか勇者の剣、百歩譲ったとしても小さなメダル百枚位はあるんじゃないかと想像していたからである。

 そこに出て来たのが、カサカサでパサパサのポソポソな貧相極まりない元団子だったのだ、小ばかにした様な口調も仕方ないだろう。

「なんだ、只の腐った団子じゃないのよ、期待して損したわー、んでもド田舎のしがないお寺さんじゃあこんな物かもね…… んで、効果とかあるの? これ」

中々に失礼な言い草にも善悪は胸を反らして自信満々に答えるのだった。

「ふふん、そう思うであろ? ところがどっこい、これの効果はご先祖様達のお墨付きでござる、これを食べさせた悪魔や魔物、動物まで――――」

「何これ食べれるの? どれどれ――――」

「す、ストップゥ~! ダメダメっ! ステイ! コユキっ! ステイっ! ふぅ~、危なかったでござる! それを食べたら、最後に団子に触った僕ちんの言いなり、下僕になっていた所でござるよ! んもう、意地汚いんだから!」

 何でも口に運ぼうとする自分の意地汚さを指摘された事よりも、そんな危険な物を予告も無く自分の前に転がした善悪に、何やらスケベな狙いでもあったのでは無いか?
 そんな自意識過剰なパラノイアを感じた勘違いデブなコユキは、自らの豊満すぎる胸元を隠すようにしながら善悪から距離を置いて、怯えた様な視線を送るのであった。

「いや、今止めたの拙者だったじゃない、そういう態度は些かいささか心外でござるよ、コユキ殿!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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