堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
204.エピソード204 おぼこ
コユキの内心を読んだかのように『淫蕩のルクスリア』は痛い所をついてくるのであった。
「今までの階の皆さんを手本にして、我と貴女の淫蕩比べをする事としましょうよ、お互いの男性、いいえ同性でも構わないわね、経験を比べて見るのはどうかしら? そうしましょう? 」
「…………できない」
「あら、どうして? 皆してることでしょ、恥ずかしがる事はないのよ? 」
コユキはいつも通り無表情なままだったが、肩の辺りを注意深く観察すると、僅かに震えている事が分かった。
そう、コユキは未通女所謂処女であるだけでなく、百合的な意味でも未経験者、つまりビギナー又はノービスだったのだ。
屈辱にその身を震わせながらも、頑張ってルクスリア(全裸)に告白するコユキ。
「だって、アタシ、経験…… ないもん……」
「えっ? 何? もう一回言って? 」
聞こえていた筈なのだが、そういう意味でもイヤラしいルクスリア。
「…………アタシは、ヤスウリ、しない、その、シュギ、だから……」
「あ──、そうなのね! でも、自分でそう決めてるんだったら良いんじゃない? うん、口惜しくない口惜しくない、泣かないのよ、泣かないのよぉ~」
「くっ! 」
コユキは涙を一滴流したが、それは間違いなく悔し涙であった、故に、コユキは全身に負けん気を満たし、見る見る内にいつもの元気を取り戻して見せたのである。
「別に口惜しくは無いわよ! それより勝負の方法よ! アンタは豊富な性体験をあたしに見せれば良いけど、生憎アタシにはアンタに見せれる経験が無いわ、残念だけどね! そこで、アタシが理想だと思った恋愛、って言うか大人の恋のイメージを見せるわよ! それで、どっちが淫蕩、『スケベ』か勝負をつけましょう! 」
いつもの傲慢さを取り戻したコユキの提案をしっかりと吟味していたのだろう、考え込んでいた『淫蕩のルクスリア』はニマァといやらしい笑みを深めて答えた。
「うふ、それで良いなら我も受け入れてあげてよくってよ、大人の世界を教えてあげるわね、うふふふ」
────初心で純情な聖女様の理想の行為? ふふふ、どんな妄想を抱いているのやら? 高原のプチホテル? 都心のスイートルーム? 白馬の王子様かしら? その子供染みた理想、叩き壊して差し上げるわ!
娯楽と快楽の殿堂、室内に足を踏み込んで以来、ルクスリアだけが見えて、周囲は景色も無くただ夜の闇の様な『ミッドナイトブラック』がどこまでも続いている様な、殺風景な空間の中で二人は向かい合って立つ。
全裸のピンク美女の前に立つコユキも又、ピンクビキニを身につけた特大の肉槐である、見つめあう両者の瞳が同時にキラリっ! と輝くと揃って動きを止めたのであった。
ピクリとも動かずに向きあっているだけの、端目には大変地味な対決であったが、内面では凄まじい戦い『遂に決着! ピンクの真剣勝負、残暑の昼下がり、お色気一番勝負! 』的な事が競われている事は、先程のやり取りを見ていた者であれば容易に想像がつくだろう。
………………
数分後。
ゆっくりと目を開いた二人はその一瞬前、揃ってその身をブルルっと震わせてから、その視線を交錯させたのであった。
最初に口を開いたのは我等が聖女、コユキであった。
「ふぃ~! アンタ凄かったわネェ? 良く言う『ヤリマン』いいえ、あれね、あの『サセコ』ってヤツかしら? 凄まじかったわよ! 高校一年だもんねぇ、恐れ入ったわぁ! 」
「ん? ああ…… そうね、うん」
なんだかルクスリアの歯切れが悪い。
コユキは映画を見た後の女の子みたいに、感想を誰かに言いたくて仕方ないみたいな感じだった。
「ほら、いろんな男、それこそ数十人に翻弄された後、最初の、初体験の相手に再び巡り合って、愛し合い、割とすんなり結婚するじゃない! ドラマティックだったわよ──」
「ん、うん、そうね……」
やはり、何故だろうか? 反応がイマイチ、どころか心ここに有らず、何か気になる事でもあるのであろうか?
コユキは一切気にせず話し続けた。
「んでも、結婚後、最初に勤めたレンタルショップのバックヤードで店長と、とか、長男出産後のスーパーの冷蔵庫で売り場主任ととか、割と良く見るAVっぽくって面白かったわよ! 特に、旦那がバイトしてる最中にそのコンビニの駐車場で…… とか、リアルで良かったわー! 本物の迫力とスリルが面白かったわよぉー! 」
だ、そうだ。
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