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Web Marketer, be a designer!のススメ

web広告が熱い。
というのはもうかれこれ十数年以上前から言われ続けているが、低予算で素人でもネットでちょっと勉強すれば簡単に広告出稿できる時代になったいま、さらに熱い。

しかし、あまりにも熱すぎて、web広告にまつわるビジネス全体が“熱湯オーシャン”化しているようにも思える。
もっと言えば、広告媒体だけでなく、バナー制作やLPすら、デザイナーやエンジニアじゃなくても制作できる素敵ツールも増えている。
ある意味、誰でも広告クリエイターになれる時代と言える。

かくいうわたし自身、Canvaでディスプレイ広告のバナーをつくり、STUDIOでLPをつくっている。
自己紹介が遅れたが、わたしはマーケターである。
キャリアの変遷は純粋なwebマーケではない。新卒から数年間はどっちかといえばマス広告を中心に扱っていた。

転職後はマーケですらなく、クリエイティブ(コピーライター兼クリエイティブディレクター)をやっていた。
ちゃんとwebマーケに触れるようになったのは、広告業界からITベンチャーの世界に足を踏み入れた、6年ほど前からだ。

わたしはマーケターであり、クリエイターでもある。「である」というと、その道を志して歩んできたかのように聞こえるが、実際には「なっていた」という方が近い。それはまた別のお話。


「1億総webマーケター」時代の到来で起きている、クリエイティブの二極化

数字は大いに盛ったが、今や学生や主婦でも、副業として広告運用やマーケティングサポートをしている。創業間もないベンチャー企業では、マーケティングの実務経験のない経営者が、ネットで調べながら広告を回していたりもする。

そこで気になるのが、世に出回っている広告クリエイティブの二極化である。これは単にデザインがイケてるかどうかではなく、デザインの根底に太い幹のような思想・ロジックがあるかどうか。

ちゃんとリソースを使って制作されたバナーからは、思考のプロセスと1つ1つの要素について考え、練られた痕跡が見える。(うっすらとではなく、くっきりとわかる)

  • どんな人をターゲットとして設定しているのか?

  • このバナーでは何を一番伝えたいのか?

  • なぜこの要素だけ違う色味を使っているのか?

  • なぜこの文言だけ違うフォントを使っているのか?

などなど。
しかし、最近ではこれらがまったく見えてこない、単に構成要素を詰め込んで見栄えを整えた(かのように見える)クリエイティブが多い。

こういったクリエイティブが増殖している背景には、やはりマーケティング的思考の基盤がない人がバナーを制作(ないし、ディレクション)しているケースが増えているのではないかと思っている。

Webマーケと広告クリエイティブは、9割がロジック

すごく当たり前のことを書いた。web広告に限らず、すべての広告やプロモーションなどのマーケ活動に共通すること。

「ロジック」というと難解複雑そうに聞こえるが、実際には「誰に」「何を」。この2つだけを徹底的に考え抜く、とてもシンプルな過程だ。

マーケターやPdMといった職種の人であれば、鍛錬を積むことで磨かれていく類のスキルでもある。しかし、それ以外の職種では意外とこの思考プロセスを考え抜くことはないと思う。なくはないが、やはりマーケターとかと比べると実践頻度も少ないはず。

「誰に」と「何を」を導き出すのは、単なる「直感」…などではない。
定量または定性的なデータ・情報からターゲットとなる生活者のインサイト(ペイン)の仮説を立てる。

このパートだけ1つの記事ができるので、ここでは深入りしないが、とても簡潔にまとめると、以下のような流れ。

  1. ターゲット設定】購入者の購買データ等を元に戦略ターゲットを決める

  2. インサイト抽出】ペルソナに沿ったユーザーにヒアリングを行う

  3. Who/Whatの言語化】①と②でやったことを整理して平易な言葉にする

  4. コアメッセージ開発】一番伝えたいメッセージを決める

  5. 制作】コアメッセージ+周辺メッセージを決めて制作する

シンプルと書いたが、結構な手間ではある。誰も簡単とは言っていない。

しかも、③と④の間で、いわゆる”クリエイティブジャンプ”が必要になる。クリエイティブジャンプとは、コアメッセージの内容を見せたいターゲットに届きやすくするようにキャッチコピーやビジュアルを工夫すること。

ようは数多ある広告の中で埋もれない、一度見たら思わずクリックしたくなる、行動を促すために共感を生むクリエイティブに昇華する行為。

ここが、ロジック以外の1割になる。1割だが、広告の成果を左右する重要度の高い行為だ。
しかしこの話は文字で簡単に説明するのが難しいので、また別のお話で。

いずれにせよ、まずは上記の①〜⑤をしっかりやり切れることが、成果につながるクリエイティブ制作の土台になるのは間違いない。

結局言いたいことは1つで、「誰に」「何を」を突き詰めて考えられるマーケターがクリエイティブ制作もできたら鬼に金棒。ということだ。「広告運用」や「バナー制作」の足し算的な価値でなく、掛け算的価値になる。
なぜならこの両方をワンストップで、高いクオリティで提供できる人や会社がまだそんなにいないから。

そして特にベンチャー企業の中には、集客のためにweb広告をやり始めたけど、とりあえず自分やインターンの子がつくった当たり障りのないバナーを仕方なく使っている。みたいなところは結構ある。

こういう会社からすると、マーケ戦略的な視点や考察を元にクリエイティブまで一貫して任せられる人材は貴重。成果に直結するから、単に運用だけする・バナー制作だけする人よりも、報酬もしっかりする。会社にもよるだろうけど。

そして何より。
有象無象のクリエイティブが日々SNSやWebサイトで垂れ流されている昨今、ただつくって回すのではなく、成果を出すクリエイティブを生み出し続けないと、マーケター自身の将来性も危うい

ちなみに、もしこの記事を読んでいるのが専任のプロマーケターがいなくて困り果てているスタートアップ経営者の方でしたら、わたしまでご相談ください。マーケとクリエイティブのご相談に乗ります。

うまくディレクションすればいいんじゃないの?に対するささやかな反論

個人的にはディレクションほど難しい仕事はない、と最近よく感じる。自分の中で言語化したものを、自分で形にするのは結構できる。

しかし、自分の中で言語化したものを、赤の他人に文字や参考情報だけで指示してつくってもらうのは、とーっても難しい。単に自分がディレクションの素養がないだけかもしれないが。

まずもって、1回のやり取りで完了することはほぼ皆無。
「もっと、ここのキャッチコピーを目立たせたいんだけど、Q数上げるか装飾的な感じで目立たせるかは、一旦任せます!」とか言って差し戻しているうちに、時間だけが過ぎ、ストレスだけが残る。

わたしもすべてのクリエイティブを自前でつくってないので、当然ディレクションして制作してもらうことも結構ある。あるけど、信頼しているデザイナーさんじゃない方に依頼する時の疲れる感じは半端ない。気をつかうし。

もちろん、表現の豊かなデザインを非デザイナーが制作するのには限界がある。その場合、ベースになるデザインは自分でつくり、それを元に具体的にこうしたいという要望を添えて、デザイナーに依頼するのも良いと思う。

マーケティングとクリエイティブの境界線は、日に日に薄くなっている。
だからこそ、やっぱり「Web Marketer, be a designer!」。
これだけ叫んで、今日は終わりにする。


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