画像で短編物語 その2
「今日もお勤めご苦労さん…と。」
パンッ!と乾いた発砲音と共に吸血鬼の眉間に銀の銃弾が撃ち込まれる。
そこかしこに巻き上がる炎、立ち昇る煙、森の木々を焼く一見香ばしくも感じられる匂いが辺りを埋め尽くす。
炎に明るく照らされ、深夜にも関わらずまるで昼間かと見まごう程の森の中、レティは吸血鬼の命を刈り取った事を確認すると、愛銃を肩に担ぎ、もう興味はありませんとばかりにクルリとそれに背を向けた。
「コイツも「知らなかった」か…。」
小さく舌打ちをし、その場を立ち去ろうとすると、ガシリと後ろから肩を抑えられる。
レティをその場に埋め込もうとせんばかりの膂力を持って彼を止めるのは、その力に見劣りしない程の筋骨隆々な体躯を持った青年だった。
「レティ、後処理が残ってる。ほっとくと面倒だ。あと、毎度の事だがやりすぎだ。」
「おいおいジルバ。俺はお前らが手に負えないって言うから、わざわざ遠路遥々こいつをブッころしに来た助っ人様だぜ。後処理とお小言は仕事の範囲外だっての。」
「それにしてもやり過ぎだと言っているんだ。これじゃ、吸血鬼による被害なのか、お前による被害なのか、区別付かんぞ。」
「だったら全部、そこにオネンネしてる吸血鬼のせいにしな。死人に口無し、だぜ。」
レティはするりとジルバの腕から抜けると、気怠そうな足取りでその場を後にした。
「今日はどうっだった?!」
ジルバは、去り行くレティの背に尋ねた。するとレティは、振り返る事なく、片方の手をフラフラと振りながら夜の闇の方へ歩いていった。
「ジルバ隊長。なんなんですか、アイツは。」
ジルバの部下が全身を返り血で真っ赤にして、ジルバの元へやって来た。
「『魔弾のレティ』。教会が抱える最高戦力の一人さ。」
「最高戦力ですか…。でも、最高戦力だが何だか知りませんが、勝手な人ですね。」
「いや、あいつは…、あいつは寂しい奴だよ。」
闇に紛れて行くその背に、一体何を背負っているのか、それはジルバも知らない。
唯一知っている事があるとすれば、彼は上位の吸血鬼の元へ一人で現れては、トドメを刺す直前に何かを聞き出そうとしていると言う事だ。
しかし、それが何なのかをジルバは知らない。
彼はいつでも独りだ。
かつてはその孤独な背に寄り添う者も居たらしいが、今は独りだ。
独りで必死に何かを探しながら、夜から夜へと渡り歩いて生きている。