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画像で短編物語 その3

【生命の木】

その木は、朝焼けの中にのみ姿を現す。
大陸の東端、水平線から昇る朝日を臨める場所にその木はある。

その木は、生命の象徴である。
葉は万病を治す薬となる。樹液を撒けば、未来永劫痩せることの無い土地が生まれる。
根、葉、樹皮の一片に至るまで、全てが生命で溢れている。

しかし、その木の姿を見たものはいない。
葉で煎じた薬を飲んだ者もいない。
樹液を土地に撒いた者もいない。
根、葉、樹皮の一片をも持ち帰った者はいない。

大陸の東は人の踏み込める場所ではないからだ。
魑魅魍魎が跋扈し、猛毒が蔓延し、生命ある者が踏み込めば、立ちどころに死を迎える事になる。

果てしなく続く死の大地のその先に、この木は立つ。
多くの命がその木を求め、力尽き、朽ち果て、亡骸となり大地に折り重なっていく。
死が蔓延するその大地を背負い、この木は朝日を浴びて生命を照らす。

これから生まれる生命に祝福を。
朽ちて行った生命に安寧を。

夜と朝の境目の一瞬。その木は生命を照らし出す。

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