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エッセイ『羞恥心ヲ捨テヨ』

電車の中は暇である。だから私は無意識に人間観察をしてしまうのだが、人がスマートフォンを持つ角度というものは実に面白い。ほとんどの人は地面に対して斜めに持っているが、地面とほとんど並行で持っている人や、顔面のちかくで周りの人に見られないように持っている人もいる。

ここで私は、男性を代表して女性の皆様に一つ知らせたいことがある。若い男性が顔面の近くで周りに見られないようにスマートフォンを持っている場合は99%ティンダーなどのマッチングアプリで右スワイプをしている。これは間違いない。このような人が隣に座っていることはよくあるのだが、どうしてもその事実が本当なのか確かめたくなってしまう。私は毎回チラ見をくりかえす。チラ見がばれたときの気まずさはとんでもないが、どうしても確認したいのだ。その結果、ほとんどの人がしていた。ほら、やっぱりって感じ。

1年前ほど前、とんでもないシチュエーションに遭遇した。私の両隣の男がマッチングアプリをしていたのだ。右隣の男は顔面の近くで周りに見られないようにスマホを持っていた。その一方で、左隣の男は地面とほとんど並行にスマホを持って、わざと周りの人に見せているのかと言わんばかりの角度でマッチングアプリをしている。羞恥心なんていうものはないのだろうか。カッコいいとさえ感じる。こいつは強者だ。ほとんどの人がコソコソとしているのに、この男は潔く堂々としている。コソコソしている男を忍者に例えるなら、堂々とマッチングアプリをしている男は大和魂を持った武士だ、俺も堂々とした武士みたいな男になりたい。そう思った。

まあ武士はマッチングアプリなんてしないんだけど。

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