今後も学習塾を存続させたいなら

2020年代で学習塾がどうなるか私なりの考えを書いていきたい。大手塾と中小塾がそれぞれどのように変革していくかを何段階かに分け考察していく。

以下の考えは映像授業の広がりを前提とするものであるから、以前の記事(「映像授業の現在、そして塾との共生」)を読んでもらえるとより理解して頂けるかと思う。リンクを貼っておくので良ければぜひ読んでほしい。

先に前記の note の要点を簡単にまとめる。現在では中小の塾や個人でも youtube などで積極的に無料ないし安価で授業を公開することが増えており、これは生徒達にとってメリットが大きい。しかし、現状では動画内容は玉石混交であり、これによる危険性や欠点を指摘したところである。

2020年代の着地点は?

はじめに結論として今後の学習塾について私の考えを簡単に述べると、大手塾は自身で映像授業を公開するのはもちろん、今以上に実際に生徒の目も前で行う授業(以下、ライブ授業とする)を行う実績のある講師を特定のクラスに集中させ、ライブ授業のブランド化を図っていくのではないかと考える。その上で、常時設置型の質問ブースのようなものをさらに拡充していくものと考えている。

そして、中小塾は公開された映像授業を活用しつつ、生徒達の勉強時間の管理やカリキュラム設定、質問対応の仕事が増えていくタイプの塾が一つの大きなパターンとなる。それと同時に、授業をライブでやることを前面に押し出して現在の映像授業をあまり活用していないタイプの塾が存続する。このように言ってしまうとただ当然のことを言ったまでだが、特に中小塾はそのあり方が大きく分化してゆき、それぞれの特徴を伸ばし宣伝していく必要性が今以上に強く求められるようになると考えている。

以下、ここに至るまでどのような経緯を辿ると考えているかについて述べていく。ここから先は想像というより、妄想に近く根拠の薄いものを含むが付き合ってもらうと嬉しい。

塾の将来(第1段階)

現在でも既に映像授業を無料ないし安価で大量に公開しているサイトやサービスは数多くある。生徒達によるこの利用はますます増えていくだろう。そして、現在はまさしくこの段階に差し掛かっていると考えているが、塾業界全体が最も苦労する段階だろうと考える。

なぜなら、無料で質の良い授業も無料で多く提供されているためである。こうした自分の好きなときに見ることのでき、学習塾にわざわざ行く必要の無い映像授業に生徒達の関心が移っていくだろう。つまり、生徒達が学習塾に通う必要性を感じなくなってくるということである。この第1段階では学習塾に通う生徒の総数が緩やかに減っていくと考えている。

塾の将来(第2段階)

先程の第1段階で、多くの方の努力により無料で視聴できる素晴らしい授業がたくさんあることは間違いない。しかし、現状として玉石混交であることを否定できないことは以前に指摘した通りである。多くの生徒達にとって自分に役立つ授業が何かを判断するのは難しい。そして、少しずつ生徒や保護者がこのような現状の問題点を気にするようになる。

大手塾はその状態だからこそ、今以上に実績のある講師を前面に押し出した映像授業の拡張を図り、他塾との差別化を狙ってくる(自分のコンテンツを充実させるともいえる)のではないか。既に信頼を得ている塾と塾講師によって積極的に授業を公開する動きがより強まってくると思う。また、大手塾に限らずとも、今よりも充実度の高い授業を提供する投稿元(サービス、中小学習塾、個人・・・)が少しずつ増えてくるだろう。

この段階で無料ないし安価で公開される映像授業の質が高まってくるだろうと考えている。そして、大手塾は自身の発信している内容を利用することはもちろん、中小塾もこうした映像授業の利用する度合いを高めていくと考えている。

大手塾としては生徒のクラスなどによって受けさせる映像授業を体系化していくことになるだろう。また、中小塾としても生徒にとって必要な映像授業が何かを適切に指摘する必要性が出てくることとなる。そして、授業を映像に任せる結果として大手塾か中小塾かを問わず、自習室の環境の拡充、カリキュラムの設定、質問対応のシステムの拡充を図る動きが強まるのではないかと思う。

塾の将来(第3段階)

この第3段階は、勝手なことを言えば第2段階の「映像授業の安定期」と呼べる局面に入ってからの話である。実際には第2段階と同時並行で進む流れと考えているが、便宜上、第3段階としてまとめる。

映像授業の利用はどんどんと増していくだろう。ただ、それと同時にこの段階では生徒の目の前で授業を行うライブ授業や実際に学習塾に通うことによるメリットが見直されてくるのではないかと考えている。質の良い映像授業が増えたとしても、ライブ授業の需要が無くなることはないと思う。生で授業を受けることには、映像授業では得られない利点が大きい。(映像授業とライブ授業の差異については別の記事でも詳しく検討したい)

例えば「わざわざ塾に行く」という手間が勉強のスイッチを入れることになる人はいるだろうし、目の前で授業をしてくれないと集中できないという人もいるだろう。すぐに目の前の先生に質問できないと質問する気が無くなってしまう何てこともあるだろう。

この段階になってライブ授業を行う学習塾に再び大きな需要が生まれてくるのではないかと私は考えている。そして、その影響で学習塾業界全体に再び大きな需要が生まれてくるものと考えている。映像授業を自分で見るだけでは得られない利点が見直されるという点で、第2段階で書いた塾のあり方の需要も増してくるだろう。

塾の将来(第4段階)

ライブ授業の良さが見直されるとしても、どうしても合う合わないがあるのは当然だろう。自分には自分にあった勉強のやり方というのがある。生徒達が自分に合った勉強のやり方を模索できるようになるのが第4段階である。映像授業が合う生徒は映像授業で勉強し、ライブ授業が良い人はライブ授業で勉強する。学習塾に通う方が良いと考える生徒は通い、自分でやる方が良いと考える生徒は一人で勉強する。こういった具合で自由に自分の勉強方法を選ぶことができるようになっていく。

今でも選ぶことは出来るがより映像授業が質やサービス内容が安定した段階での影響はやはり大きいだろう。ここから先で塾の分化がさらに進み、今よりも多様な塾が現れ、それぞれの塾の特徴と長所を伸ばしていくことが強く求められるようになる段階に入ると考えている。

そこで、大手塾は実績のある講師を前面に押し出したライブ授業を行いライブ授業のブランド化を図ることで、ライブ授業を臨む生徒の囲い込み(この表現が正しいかはわからないが)を図ってくるのではないか。そして、ライブ授業を臨まない生徒に対しては第2段階で書いたあり方をさらに強化していくものと考えている。どちらの需要にも十分な対応ができるというのは大手塾の強みだろう。

中小塾は映像授業を多用するところ、映像授業とライブ授業を併用するところ、あくまで授業はライブに拘るところと様々な特徴を持たせる動きが今よりもずっと活発になると考えている。(もちろん提示した3つどころではなく色々な要素を加味しての分化である)安定した高いレベルでの「映像授業の供給」と「ライブ授業の需要」の両方があり、塾側に運営の選択肢が増えたことでそのあり方の幅が大きくなった結果といえる。多様な塾のあり方を模索できるが故に、自分自身の特徴をはっきりと意識しなければならなくなる。こうした意味では特に中小塾は改めて気を引き締めなければならないと言えるかもしれない。

まとめ

これまで述べたことは私自身の現在の捉え方であり、根拠があやふやな部分もあることは否定しない。自分の全く想像していなかったサービスが生まれて考えが根底から覆るようなこともあるかもしれない。ただ、学習塾を存続させたいなら、今よりもずっと今後の教育のあり方の時代の流れを敏感に捉え、その都度で生徒にとって重要なものを正確に捉える姿勢が全ての塾に求められることは決して変わらないだろう。こうした姿勢を常に持つ重要性は時代がどうなろうと変わることはないと私は考える。

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