詩)嘘ならば良かったのに
波打ち際を走る子供達は
声を上げてはしゃいで
薄水色の空には
飛行機雲が1本の線を描き
太陽はプリズムを作り出して
木々は温かな風に揺れていた
当たり前の様に流れる景色は
昨日迄の出来事が
まるで映画か作り事みたいで
嘘のように目の前を広がる
ゆっくりと流れる時間の中に
私だけが虚像の世界からやってきた様で
異物として防波堤の上に座っていた
口ずさんだ歌はマスクを通って
耳に届く頃には灰色に燻んでいた
増えゆく数字が頭をかすめて
束の間の安息は
重いため息と一緒に
また何処かに消えてしまった
燻んで…くすんで