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詩)墓守

墓守は穴を掘る
担いだ鶴嘴と背負ってきた円匙を使って
死体の山は埋めても埋めても増えるばかりで
涙もいつの間にか居なくなり
たった一人で穴を掘る
誰かの顔だと気にも留めずに
雨が降っても
風が吹いても
真っ青な空の日も

墓守は穴を掘る
土を掘り返す音は止まず
山が小さくなった頃
潰れた血豆は硬く固まって
思い出を語る口も閉ざされた
花が咲き蝶や蜂が飛ぶ日にも
凍えるような雪の日にも
黙々と黙々と穴を掘る

山が消え向こうの景色が見えた頃
大きな穴に墓守は入る
これでまたあの日に還れる
また明日と手を振った日々に

鶴嘴…つるはし 円匙…えんぴ(シャベル)

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