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時間に追われて、急いで塾へ駆け込む子どもたち。

夕方5時少し前、僕は進学塾の近くを通った。その塾は中学受験の子たちが通っているようだ。

小学5、6年の男の子が横断歩道で信号待ちをしていた。彼は急いでいる様子だ。「早く青にならないかな」。彼の心はそう語っているようだった。

信号が青になると、男の子は急いで横断歩道を渡った。少し遅れて彼の友だちも走ってきた。彼は友だちに「早く、早くー」と急かしながら塾へ入っていった。

その直後、塾の前に車が止まり、お母さんと女の子が降りてきた。二人は親子のようだ。お母さんに促され、女の子も塾へ急いで入った。この道は狭くて車を停めるのは大変だが、そんなことはお構いなし。塾に遅れないようにするのが先決なのだろう。

男の子たちにも女の子にも笑顔は見られなかった。その表情は「やらなきゃいけない」という義務感からきているように感じた。

      *

彼らは本当に塾に行きたいのだろうか?誰かから仕込まれたわけではなく、例えば、「塾に行くとワクワクする」「テストで高得点を取るのが本当に好きなんだ」「私立中学に行きたくてしょうがないんだ」という理由で、自分の気持ちで選んだのなら良いが、親の意見だけで決めているのなら、それはちょっと考えものだ。

親がしっかりした理由で中学受験を勧めるならいいけど、周りの流れや世間体を気にして子どもの道を選ぶのは良くない。

子どもたちには、自分自身のしっかりとしたアイデンティティがある。つまり、自分なりの考えや個性がちゃんとあるのだ。そういったものが、他の人の考えに圧迫されるのはどうかと思う。それの積み重ねで、大人の階段を登るころに「自分が何をしたいのか?」「自分はいったい何なのか?」と心が迷子になってしまうような気がする。

      *

こんなことを考えながら、僕は塾の近くを通り過ぎた。


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