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【6,000字超え!】SHIBUYA Classic2023 トップ選手&コーチ講習会備忘録

こんにちは、ケロクマです。

SHIBUYA Classic2023にて行われたトップ選手&コーチによる講習会の内容をまとめてみました。トップ選手やコーチの考え方を聞ける大変貴重な機会でした。

また、質問の質も高くて学びの多い講習会となりました。
ぜひ、今回のまとめをあなたのアーチェリーにも活かしてもらえればと思います。

講習会の内容は、基本的には講師の方のお話のままですが、文章的にわかりやすくするためケロクマなりに解釈した内容も含まれています。

講師の紹介

左からキムコーチ、ピットマン選手、ジャック選手。

講習会の内容に入る前に講師陣を紹介しておきます。

キム・チョンテコーチ(以下、キムコーチ)

シドニーオリンピック団体金メダリスト
現在は近畿大学でコーチをされており、トップ選手を多数輩出されています。

ブライオニー・ピットマン選手(以下、ピットマン選手)

現在世界ランク2位
世界フィールド優勝経験を持っています。

ジャック・ウィリアムス選手(以下、ジャック選手)

世界ランキング19位
ワールドカップファイナル優勝、世界ユース選手権では団体優勝、個人準優勝の実績を持っています。

◆講習会まとめ〜事前に募集した質問編〜

Q:使ってみてこれはいい弓だと思える基準について。

A:ジャック選手

ときどき自分の射がいいと感じたときでも、グルーピングが良くならないことがある。なので、リムやチューニングを変えることによって良い状態に合わせていく。

A:ピットマン選手

フィーリングと音を良い状態に持っていく。
そこから点数を見て、ミスをなるべく拾わないように自分が100%の射じゃなくても点数が出るようにチューニングをしていく。

A:キムコーチ

最初からチューニングで点数を出すのは難しいため、まずは自分が求めるところ(振動なのか、バランスなのか)を見る。
※求めるものは人によって違う。

その後、今自分が射てる距離を射ち、チューニング(矢尺含め)を行った結果、そのセッティングが自分に合うかどうかになる。

セッティングが合った状態でもチューニング含めて距離を射ったときに

  • ミスを拾ってくれるか(ミスしても大きく外さないか)

  • 自分の感覚が良くなくてもグルーピングするか

が大切。

最初はわからないので、射った瞬間の感覚(振動なのかバランスなのか)や、自分の求める基準によっても変わる。

ケロクマなりのまとめ(解釈)

ジャック選手とピットマン選手は、自分が100%の射じゃなくても点数が出る(当たる)ようにチューニングして良い状態に持っていくことが印象的でした。

つまり、ミスが出ても大きく外れないような弓が基準ということ。

キムコーチは、最初からチューニング云々は難しいため、まずは自分が何を求めるかで決める。

求めるものは人によって違い、振動なのか、バランスなのか、点数なのかで変わる。その上でチューニングなどを行ない、結果セッティングが自分に合うかどうかがまず1つ。

そして、セッティングが自分に合っている場合でもチューニングを含めて距離を射ったときにミスを拾ってくれたり、感覚が良くなくてもグルーピングするかが大切。

つまり、自分の求めるものに対してチューニングした結果、そのセッティングが自分に合っているかつ、ミスを拾ってくれたり、感覚が良くなくてもグルーピングするのが良い弓という基準になる。

Q:ベストパフォーマンスを発揮したい試合に向けてのスケジュール調整について

指導者目線で選手に意識的に取り組ませていることはあるか、ピーキングにおける考え方も合わせて教えてほしい

A:ジャック選手

練習量で調整している。

普段は毎日200〜300本打っているが、移動もあるため、練習量が1日90本くらいに減ってしまう。そのため、質を高めることと、自分を疲れさせないことをかなり意識している。

そして、大きな試合の後から次の試合までの間(2〜3週間)に普段の練習をしつつ、量を減らしたりすることで調整している。
高いパフォーマンスでプラクティスできるように心がけている。

1日4,500本射つ人もいるが、最後の200本は質が落ちてしまいただ射っているだけ(トレーニング)になっている人もいる。
なので、自分は質が落ちると感じた時点で辞めるようにしている。

A:ピットマン選手

冬と夏でトレーニングメニューが変わる。
※イギリスNチームのポリシーでもある

冬:体力をつけるためにたくさん射ったり、集中的にトレーニングをする。
夏:質を上げるために試合形式での練習や、ゲーム形式での練習で精度を高める練習をしている。

夏は、トレーニングや練習量を減らすことで身体に疲れを溜めないように気をつけている。

A:キムコーチ

本数を含めて自分の体力を維持するために腕立て、腹筋、体幹トレーニングをして短い時間でもたくさん本数を射てる方法を考えて練習する。

例えば、1エンドでたくさん射って矢取り往復走ったりなどがある。
しかし、こればっかりすると本数だけが上がって質が落ちてしまう。

インシーズンに合わせ体力や自分がやりたいパフォーマンスを発揮できるよう本数を増やすことで、射を固めていく。
シーズンが近くなる程、質を高めるほうに持っていく。

重要なシーズンに入ってきたら、質を落として本数を増やすなどで良いパフォーマンスにつなげていく。

Q:ウエイトトレーニングや瞬発を高めるトレーニングなどの必要性について

A:ジャック選手

以前はウエイトトレーニングをやりすぎて肩を負傷したことがあるため、ウエイトトレーニングは少なめにしている。
※今でも肩を負傷した影響が残っている。

そのかわり、動きを良くするトレーニングを重視している。
ウエイトトレーニングを重要と考える選手は多いが、ケガをした経験から気をつけてほしい。

A:ピットマン選手

体力トレーニングは重要と考えている。

ただ射つだけだと大会などの移動によって練習量が減り、自分の射が変わったり同じように練習できなくなる。しかし、基礎体力が高く、それを補う体力があればパフォーマンスの低下を防ぐことができる。

ピットマン選手は週4回、体力トレーニングとランニングや耐久を重視したトレーニングを行っている。

天候などの外的要因による影響も自分の体力が高いと影響を受けにくくなるため、自信につながる。

練習とトレーニングがしっかりできていれば、大会中に何かの要因によって自分のパフォーマンスが落ちそうな状況があっても影響を受けにくくなる。その結果、パフォーマンスを発揮しやすくなる。

A:キムコーチ

アーチェリーは、片方の動きが多いため、バランスよく身体が動くようにするためにトレーニングをする。

毎日の練習で崩れた部分をトレーニングをすることでカバーできる。
弓をたくさん引くことが一番だが、時間を確保できるのであれば身体のバランスのために体幹トレーニングなどをすることが大切。


Q:セッティング:Vバーの角度について。

アジアでは水平の選手が多いが、欧米ではとダウン角の選手が多い。
水平とダウン角、それぞれの魅力について&アジアと欧米でなぜ違いがあるのか、考えを聞かせてほしい。

A:ジャック選手

Vバーの角度だけでなく、サイドの長さ含めてセッティングはかなり違うと感じている。

ジャック選手は、ダウン角で14インチのサイドロッドを使用している。

アジアの選手だと、フラットで10、11インチのサイドロッド、4インチのエクステンションの選手が多い印象。

ジャック選手はエイミングと飛び出しのバランスを意識している。
飛び出しが早すぎるとコントロールが減っていると感じるため、少し遅めにしている。

全く飛び出さないわけではなく、手元に残ると自分がトルクをかけたり影響を与えてしまうため、飛び出すようにはセッティングしている。

A:ピットマン選手

長所短所というより、自分に合うセッティングに合わせるのが大切。
それぞれ考え方が違うため、色々試して自分の合うものを探すのが良いと感じている。

また、アーチェリーの始め方と教え方の影響が大きいと考えている。
アジア圏は子どもなど小さい頃から始める人は多いが、ヨーロッパ圏は大人から始める人が多いため、指導者の影響もある。

アジア圏の女子は、水平で成功していることが続いているため、セッティングを変える必要性がないという印象がある。
なので、水平のまま使っていると感じている。

A:キムコーチ

東洋人と西洋人の流れが違うためと考えている。

東洋人:韓国や中国からの教えを含めフォロースルーを大切にしている。
西洋人:アメリカやヨーロッパ圏は射つ瞬間を大切にしている。

射ったあとはコントロールできないので気にせず、狙うことを大切にしている。

狙いを重視する場合はダウン角にして下から引っ張ることで弓を安定させる。その分、弓の飛び出しは抑えられるが、自分のバランスによってサイドの長さなどを変えていく。

YouTubeなどの世界大会を見ていると、東洋人は水平が多くて西洋はダウン角が多いように見えるが、実際は東洋人でもダウン角を使っている人はたくさんいる。

理由は、自分で使ったり試した結果、そういったセッティングになっていると考えられる。

  • エイミングを重視し、ブレが出ないように射つか

  • フォロースルーを重視し、射つ方向を大切にして射つか

でセッティングも変わってくる。

ダウン角にすると、Vバーが重くなる。5インチや6インチにするとハンドルが遠くなるため、重く感じる。その分体力がいるし、身長が低いなどの観点から東洋人はフロントの軽いセッティングになると考えている。

瞬間的なエイミングよりもフォロースルーまでつながっていた方が動きとして選手にもわかりやすい。

射つ瞬間になると、弓を握ったり振ったりして1本1本違う形になることが多い。

キムコーチが憧れる選手はキム・ウージン選手。
機械のように風があってもなくても同じように射つためには、
流れの方向まで考えて練習した方が良い

講習会まとめ〜フリー質問編〜

Q:試合になると緊張していつも通り射てないことが多い。

緊張を克服する方法はありますか?

A:ジャック選手

瞬間的に呼吸を整えることも重要だが、練習からも常に緊張する状況を作ることが大切。

練習中から競う相手を見つけて自分にプレッシャーをかけながらの練習を常にやっていると大会で緊張する場面になっても練習と同じように射つことができるようになるため、常に意識している。

同じようなレベルの練習相手がいない場合は、

1:知っている選手で自分と同じくらいのレベルで良い勝負ができるような選手を選定。
2:試合の記録を調べて同じ点数を打つようにしたり、YouTubeの大会映像を見て競う。

レベルの高すぎる人を選ぶと、自分にプレッシャーをかけてしまい毎回負けて良い練習にならないので、近いレベルの選手を選ぶことが大切。

A:ピットマン選手

まず1つ目は射っている意味を思い出すこと。
射たされているわけではなく、自分の意思で楽しく射つことを思い出す。

2つ目は大きな試合になるとアドレナリンが出て緊張するため、少し時間をおいてメモ帳に今の気持ちを書く。すると、邪魔な考えが頭から出ていくので落ち着くことができる。

A:キムコーチ

試合で緊張しない選手はいない。
公式練習などで出ている緊張が理想的な状態。
練習より緊張があり、集中力もあるため当たって良い状態になる。

色んなメンタルトレーニングがあるけど、すべては集中力を高めるため。

緊張すること=周りが気になっている状態。
人と話したくなったりすると思うが、音楽を聴いたりして自分自身に集中するようにする。

場所は変わっても的に対して自分が射っている状態は変わらない。
練習から集中力を高める練習を取り入れ、そのなかで点取りをしながら成功率を上げていけば少しずつ緊張が落ち着いていく。

Q:アーチェリーに良い影響を与えるスポーツはありますか?

A:ジャック選手

ゴルフをやっている。
アーチェリーと似ている部分は自分の技術が点数につながるスポーツであること。これをすることで技術に集中する力が強くなると感じている。

また、ウォーキングも行うため性質的にもアーチェリーに似ているため、良いと感じている。

A:ピットマン選手

クライミングをやったことがある。
使う筋肉や体力を高める効果があると感じた。
負傷のリスクが高いため、ほどほどに。

他には、自分が向いていないと思うスポーツをわざとやる、もしくは精神力を高めるスポーツをすることで大会のパフォーマンス向上に繋げている。

A:キムコーチ

ゴルフがおすすめ。
スタンスから自分のテクニックを上げるために繰り返し同じことをするため、スキルを上げることが似ている。

団体スポーツにはなるが、野球もオススメ。
スイングにおいて同じことを繰り返し、1つのターゲットに対して自分のスキルを高めていく。

トレーニングでどの部分を使ってアーチェリーにプラスになるのかといえば、細かいところは違うかもしれないが、同じターゲットを置いてそこを目標にして自分のスキルを上げつつ目標を叶えていくような力をつけるなら野球とゴルフは似ていると感じる。

Q:リリースが膨らむことについて。何をやってもリリースが膨らんだりしまう。骨格的にできない人が存在するのか。

A:ジャック選手

動きに集中しすぎて内側での伸びじゃなく、腕が実際に動いていることに集中することで上腕と指に力が入りすぎて矢筋が崩れてしまう。

A:キムコーチ

リリースがとられる=方向が決まっていない。

アンカーに入って動いて伸びようとしたり、引いてクリッカーを落とそうとする意識があるため、アンカーが甘くなる。
射つ瞬間に矢が少し戻る=リリースが膨らむしかなくなる。

なので、アンカリングをしっかり入れる方向で、伸びる方向を決めて矢筋の上で伸びれば綺麗に抜ける。

膨らむ=取られるのと一緒。
矢が戻って射っている可能性が高いため、矢が戻らないように射つ練習をする。アンカーが安定した位置から伸びて射てば膨らむ感じは良くなると思う。

Q:アーチェリーを始めた手の自分に今の自分からアドバイスをするなら?

A:ジャック選手

楽しむことを意識して練習すること。
やらされることをやるだけでなく、楽しくやる方ががモチベも上がる。
楽しむことで、より練習ができて高い目標を目指すことができるようになる。

コーチや親などから言われることもあるかもしれないが、まずは楽しむことを意識して練習することが大切。

A:ピットマン選手

計画的に練習すること。
最初の頃は、ひたすら本数を射つことやポンドを上げることで上手くなると思ってたけど、もう少し同じポンドで続け、目標を立てて競技に挑む方が早く成功できたと感じている。

なので、焦らず目標を立てて計画的に進むことを意識することをアドバイスしたい。

A:キムコーチ

最初から射たせてもらえることがなく、トレーニングばかりだったけど、
そのなかでも楽しみを見つけること。

一緒に始めた人のなかでも一番になれるようにしてみたり。
例えば、
・他の人が10回のところを自分は12回やったり
・12本射っているところを15本射ったり

など。
自分が成長していることを楽しむ。

Q:近射と距離でまったく違う。最後の引き込みが上手くいかずに悩んでいる。気持ちの問題なのかどういった考え方をすれば治せるのか教えて欲しい。

A:ジャック選手

アメリカNチームでやっているのは、
1回目:狙って打つ
2回目:目を閉じて射つ

を交互の繰り返して同じ射で射てるように近射で練習している。

A:ピットマン選手

狙って射ったり、距離と同じ角度にするため狙う場所を高くすることで距離に近づけることができる。

近射であっても意味を持って練習をする。

・射形の気になったところを治すために近射する
・メンタルトレーニングをしながら近射する

など、何か目標を決めて練習することを意識する。


A:キムコーチ

近射と距離では、伸び合いと狙いが違う。
近射でも狙って射つ、狙った方向に矢が飛んでいくように射つ。

近射:無識的に身体の動きで狙いが甘くなる。
   距離でも30mとかだと身体の動きが大きくなり、狙いが甘くなる。
距離:狙いがきちっとなるため、動きにくくなる

近射で狙う場所を決めて、狙った場所に飛ぶように射つ。

近射で狙って射っている場合は、近射が多く、距離が少なくなっている可能性もある。近射は1エンドで距離を射つ時間を長くした方が伸びの形など感覚的な部分は距離の方が作りやすい。

同じ練習でも近射を500本1000本射っていても距離の200本、300本くらいの力しかつかない。

なので、近射より距離をたくさん射つ練習をする。

最後に

以上が講習会のまとめでした。

大変勉強になる内容ばかりで、今後の指導にも活かせそうなことをたくさん聞けてよかったです。来月のアーチェリー雑誌に講習会の内容が掲載されるかは分かりませんが、ぜひ、当noteも活用いただければと思います。

それでは、また次回noteで。

p.s
SHIBUYA Classic2023のレポートはこちら。

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