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#岡田彩夢生誕祭2022

 目を閉じてイヤホンから聴こえてくる声に耳を傾ける……ただそれだけで幸せだった。初めて歌声を聴いた瞬間、長く夢に見ていた女の子と遂に出逢えた気がした。
 平凡な日常の中で彩夢さんの存在が大きくなり依存度が増していく。「もっと~して欲しい」そんな要求ばかりが胸の中に溜まっていく。
 もっと沢山の歌割りで声を聴きたい、グラビア写真集で可愛い姿が見たい、配信やツイートで日々の何気ない出来事を知りたい、好きな映画や小説や漫画、興味のある事や考え方を知りたい……。
 無理はせずにしっかりと休んで欲しいと、多忙な君を労わるようなリプをしながらも、(控えていたつもりでもポロっと出てしまう時もあったが)矛盾した要求が奥底で渦巻いていく。
 知れば知る程に魅力的な新しい一面に気がついて、これまで以上に想いが募っていく。だがそうして君の事を知る程に、様々な魅力に触れる度に、好きになればなる程に、何故だか以前よりもずっと遠くに君がいるように感じた。

 アイドルとは言葉の通り偶像なのだろう。本来の彼女達がどうであるのか、それを知るよりも、容貌や振舞いが理想に近く在る事を望む。追っているのは彼女そのものでは無くて、己の理想とする女の子。だから何らかの理由で彼女が突如消えたとしてもその代わりを見つけ出せるし、更に理想的な対象が現れた時、理想を映した彼女を追っていたのと同じ理屈で別な子を追い始める。推す対象が変わっても、己の理想を満たす存在である事は変わらない。その衝動が無ければ、そもそも初めからアイドルを追い掛けはしないのだから、推し変は誰かのファンになった時点から決定していた気がする。
 気が多く飽きっぽい既存ファンを離さぬ為に、若しくは新規ファンを獲得する為に、刺さる楽曲や企画を四苦八苦して提供する運営側は、同様にファンの好みを分析把握し、所属アイドルのポスト的な位置づけのフレッシュな子達を次から次へと供給する。事務所側がプロモーションするのはアイドル個人では無くて、ファンを魅了する要素として循環できる概念的な物なのではないか。業界的に見れば所謂"単推し"よりも"DD"である事の方が望まれていると思う。その様なマーケティングをされているのだから、情報強者なアイドルファンが推し増しや推し変を繰り返すのは当然で、アイドル寿命の短さ、代替の現れる循環の速さ、ファンの気の多さなどから考えると、「推しは推せる時に推せ!」という言葉は、コンテンツの提供側からすれば最高のキャッチフレーズであり、個々のアイドルからすれば悪夢の様な呪文だ。

「応援しています」手紙やリプの最後に付け加える言葉。そう書く度に、君を応援するという事がどういう事なのか、ずっと考えていた。
 俺は自己の享楽の為に、彩夢さんの貴重な人生の一部を喰らっているのだと思う。君は承認欲求が満たされ、自己肯定感が上がり、仕事のモチベーションを保つ。有名になれば遠い存在になって行くという寂しさはあるが、知名度が上がる程に俺達の前に姿を現す機会が増え、「もっと~して欲しい」な欲求を満たしてくれる。だがずっと表舞台にいられるのはほんの一握りだ。それは皆も分かっていて、それでも夢を見て君達は今そこにいる。
 BE MYSELFを聴いた時、10年後の虹コンメンバーについて想像した。女優、バラエティー番組、歌手、声優、絵やゲームに携わる仕事。そして、20年、30年……君は笑うかも知れないが、俺は君の50年後を想像した事がある。未来の彩夢さんがどこに居ても、何をしていても、その時その時を幸せに生きていて欲しいと心から願った。
 もしもアイドルの今日を懐かしがる日があるのなら、輝く舞台へ立つ事の辛さや充実感、達成感、煌めくアイドルでいた事への誇り、沢山の人達との関わり合いと、君を愛し応援したファン達を想い出して欲しい。

 漂流者を演じた少年はどんな思いで島での生活をしていたのだろうか。島の人々へ見せた涙の真偽はどうだったのか。
 最後まで上手に騙され続けたかった。
 演者という立場上、己の考えを口に出せない事。傍観者が真実を知るすべは無い事。
「それでも信じてついてきて欲しい」心を動かし希望を与え、誰かを幸せにするのがアイドルであるのならば、アイドルの役割に徹した言葉を俺は望んでいただけ。
 そうは割り切れず、上手に責任転嫁できずに潰されそうになる心の脆さと、自分を責めて攻撃し続け、それでも最後にはギリギリの所で踏み留まって自身を正当化できる芯の強さ。
 理想とはかけ離れていたが、俺が好きになった弱くて強い岡田彩夢。理想の少女としても、実在する一人の女性としても、彩夢さんが特別だったというのは嘘では無い。人間嫌いの俺はそんなに簡単に誰かを好きにはなれない。
 歌声が堪らなく好きだった。そこに居てくれてありがとう。(2022.08.08)

 彩夢さんを好きになって本当に良かった。

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