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身勝手な楽園

3
五月
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楽園の植物人間

「爪の中が黒いね」
今朝がた四時過ぎ街路のまだみどり色の紫陽花を根から掘り起こして持ち去ろうと車道脇の花壇の土を掘っていたのが、シャワーを浴びてもちゃんと落ちなかったらしい。雨の日曜なので庭園に出かける予定を諦めて私の住まう部屋に長靴でやってきた男が長靴を脱いで部屋に上がり、私の座っていたソファの空いていた右に座ってしばらく黙ってくれていたが退屈にでもなったのかもてなしもせず膝を抱えて一人茶を飲む

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「楽園で遅い朝食」

「あなただったんだろうな、本当に」

登録のない番号からの、ショートメールだった。
…いつだって通り魔のようで、鼻腔に麝香が強く香る。舌は冷え切っていた。

あれは夏にしては涼しい夜で、車達の尾灯ばかりが彼の眼にひかって、煙草を吸っている指は陶器のようだった。
果物の腐ったにおいが辺りに充満していた。
愛していたし、愛されていたことを知っていた。誰もおらず、誰も要らなかった。
彼は暗い森に火を放ち

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楽園の湿度に跪く

疲れのピークから一転して脱力に変わった瞬間にイープラスからよいタイミングでメールが届いたので、急遽来週末にあるクラシックのコンサートチケットをとってしまった。閉店間際までカフェで粘って本を一冊読み終えたし、人格統制に少し力を注いでるしいいよね。いいでしょう。

というわけで、今まで流して聴いていたショスタコーヴィチ交響曲第5番ニ短調Op.47を聴き直して40分。