インドネシアには、どんな「日本語学習者」がいるのか
Kepo JepangのWebメディアを開くと、たとえば、
「『アリガトウ』はどういう意味?」
「日本語で『お誕生日おめでとう』は何て言う?」
など、単語の意味や用法、会話表現に関する記事や、日本語能力試験(JLPT)対策のための教材と練習問題、日本の大学情報や日本での生活に関する記事などがあります。
では、Kepo Jepangが提供しているようなコンテンツを必要としているインドネシア人は、何人くらいいるのでしょうか。
インドネシアで日本語を学ぶ人は、約70万人というデータがあります。(国際交流基金 2018年度海外日本語教育機関調査)
この70万人は、何のために日本語を学んでいるのでしょう。
実は、インドネシアには、第2外国語として日本語を採択している高校がたくさんあります。だから、興味があってもなくても、学校で良い成績を取るため(だけ)に勉強している人が大勢いて、彼らもこの「70万人」に含まれています。
実際、どの「段階」で日本語を勉強しているかという調査によると、「高校」という人が、60万人以上(正規科目・課外活動含む)いるのです。
60万人のうちの何人が、高校の授業が終わってからも、日本語を学び続けるでしょうか。
同じ調査で「高等教育」と答えた人は約2.9万人、「学校教育以外」は2.3万人。合わせて約5.2万人。
まあ・・そうですよね。
私だって、大学で第2外国語として選択した中国語を、他の機会に勉強しようとしたことは一度もありません。今も覚えているのは、「私は日本人です」くらいのものです。先生ごめんなさい。でも第2外国語なんて、多くの人にとっては、そんなものではありませんか。
だからといって、「なあんだ、将来のためにまじめに勉強している人って、ごく一部なんだ」「Kepo Jepang、いらないじゃん」と、肩を落とすのは早すぎます。
一部の、留学や就職のため大変な熱意をもって勉強している層の裏に、統計には載らない、「学習者とまではいかないけれど、日本と日本語に興味を持っている人」が、かなりたくさんいると思うのです。
私自身、「一度日本語学習から離れても、また日本語に触れる機会がある人は、案外多いのではないか」という印象を持っています。
私が住んでいるのは、インドネシアの首都郊外にある、外国人など私以外に一人もいない住宅街ですが、ご近所さんたちとお話しすると、
「昔、上司が日本人だったよ。電話ではモシモシって言うんだよね。」
「日本語知ってるよ。朝はおはよう、昼はこんにちは、夜はなんだっけ?」
「日本料理店でバイトしたことがあるよ。いらっしゃいませ!お待たせいたしました!・・でしょ?」
・・などなど、日本語に関する話題がとにかく豊富なのです。
レストランの店員さん、タクシーの運転手さん、荷物の配達員さん・・日々の生活の中で出会う色々な人が、私が日本人と知るやいなや、なんとか日本語を使っておしゃべりしようとしてくれます。
こういう人たちも、もしかしたらインターネットの波に乗って、Kepo Jepangに到着しているかもしれません。
外国語を学ぶということには、人それぞれのきっかけや目的、目標があります。
今、ライター兼翻訳者として活躍するKepo Jepangのスタッフたちも、最初はどこにでもいるアニメファン、ドラマファン、アイドルファンでした。
Kepo Jepangは、日本語を一生懸命学ぶ、かつての彼女たちのような人のためのメディアです。細かなニーズに応えられる、頼れる存在になりたい。困ったときのよりどころになりたい。今はまだ道半ばでも、そのために奮闘しています。
一方で、「日本人が現れた!今だ!」と言わんばかりに、頭の奥底にある日本語を片っ端から引っ張り出して披露してくれる私のご近所さんたちのような人もまた、応援したい。
どんなレベルであっても、語学を通してこそ触れられる、感動や喜びがあります。
何となくKepo Jepangに流れ着いて、ぼんやりと記事や動画を眺めているだけの人たちも、その感動や喜びに手を延ばせる機会があるかもしれません。
初めて学ぶ人や昔学んだ人の「きっかけ」になるようなメディアになることもまた、Kepo Jepangの目標の1つです。
執筆:鈴木理美
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