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穴の中の君に贈る #毎週ショートショートnote

ピピピ…
閑古鳥かんこどりが鳴いているのぅ」
年老いたふくろうの言葉に、モズの母親は巣穴にいる子どもにエサをやりながら、「閑古鳥?」と聞き返した。
「閑古鳥とはカッコウのことじゃよ」
「ふくろうさんは物知りですね」
「知らん方がいいこともあるがな」
ふくろうは、母親より大きい身体の子どもを見てつぶやいた。

突然大きな鷹が、モズの巣をめがけて飛んできた。
母親は子どもを守ろうと巣に覆い被さったが、鷹が翼を一振りすると、放り投げられてしまった。
鷹は鋭い目を巣穴に向けた。

ピピピ…
鳴き声とともにカッコウが舞い降りた。
カッコウはくちばしで鷹を何度も突き、身体をくわえると、真っ逆さまに落ちていった。

母親は肩をなでおろした。
「カッコウさんが子どもを守ってくれた……」
「あんたの子どもを守るためじゃなく、自分の……」
ふくろうが言いかけたとき、

ピピピ…
と、巣穴の子どもが鳴いた。

ふくろうはそれを聞きながら、つぶやいた。
「自分の……誇りを守ったんじゃ」

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

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