見出し画像

数値は正常に戻ったけど短期間でガリガリに痩せて姿かたちはまるで死神さ。でも君を死の淵から救いに来た僕は天使なんだよ【改訂版】


俺はどうかしちゃってるのかも知れない。仕事でたまたま知り合った糖尿病仲間のユウさん(仮名)に、もう会える機会が無くなりそうになり、今ならまだ間に合う、食事療法と運動療法を何とか再開して!という思いを伝えたくて、実際に会いに行った。最後に連絡先を聞いておいたのは、ここで文章を書いてみるので、できれば読んでほしいと願っていたからだった。

先週それを何とかここに書き終えたあともずっとユウさんのことが頭に残っていて、一日の終わりに立ち寄ったリブロで関連本を手にとったときにも、最近追加されたと話してくれたフォシーガ(SGLT2阻害薬)処方の意図だとか、そこはやはりプロである専門医の治療方針があり、ニワカな知識でその信頼関係に影響を与えることは避けなければ…などと考えてもいた。

というような思いでユウさんにメールしてみたところ、少し時間をおいて返事を返してくださった(署名を忘れてたので不審者だと思われていたようで)ここの文章もリンクを貼って一応お伝えはしたのだが、(仮名とはいえ)事前に許可を得ていなかったのと、読んでどんな気持ちになるかなどの配慮が足りないと考えたことなどから、先週の記事はいったん削除した。

ユウさんは、やはりそんな小さな男ではなかった。わたしも最初からそのように信じて思いを伝えたし、ユウさんはユウさんなりに病気のことも、仕事や家族や人生のことも考えながら、これまで生きてきた自負がある。そのことをはっきりと伝えてくれるメッセージを添えて、再アップの許可をしてくださった。心から感謝して、改めて記事を載せることにしました。また最後にユウさんのあっぱれなメッセージも掲載許可をいただいたので、それもぜひ読んでください。

……………………………………………………
2023年7月1日 10:11

数値は正常に戻ったけど短期間でガリガリに痩せて姿かたちはまるで死神さ。でも君を死の淵から救いに来た僕は天使なんだよ。

今いる職場を、急きょ去ることになってしまった。ってことはあのユウさんのいる事務所に挨拶に…いや言うべきことを言いにいかなきゃだ。きっと嫌な顔をされるだろうけど、もう会えなくなってしまうから。人の命がかかってるんだ。

「また配置換えになってしまいました」(以上) それでその後、どうですか?と聞くと「いや最近足が痛いんですよ。そう、足がつるし痺れるというか痛いというか…」(以下省略)

……………………………………………………
「糖尿病そのものは怖くなくても、合併症は非常に恐ろしいものです。合併症には、糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害の三つがあります。腎症が重症化すると、血液透析が必要な状態に陥ります。網膜症がひどくなれば失明しかねません。神経障害があれば小さな傷などに気づかず、壊疽を起こして足を切断するという悲劇も起きます」
(牧田善二『糖質中毒』文春新書より)

売れてる?わりにメディアであまり見かけないのはなぜ?
冷静に考える必要はあるとは思う。けど…


……………………………………………………
ユウさん、あなたは私が事務所を訪れると、かならず仕事の手を止めてソファに案内してくれましたね。今回だって最後まで嫌な顔なんてひとつもしなかった。それどころか10キロ痩せた貧相な顔で、言いたいことまくしたてる私に対し、これまでの経緯や、子育てもひと段落した今を夫婦で楽しんでいるというユウさんの人生を、価値観を、今のあなたの生きがいであるSNSの写真を見せてくれながら、ガチで応えてくれましたね。それだけでも嬉しかったですよ。

なので私もここでまた、ガチな思いを伝えますね。ユウさんがおっしゃっていた「(美味しいもの食べながら)今の状態を保っていければいい」も「もっと悪い人はたくさんいる」も、「そのうちみんな食べたくても食べられなくなっていくんだから」も「足が痛いのは巻き爪かも」も、私には「正常性バイアス」にしか聞こえませんでした(職場の安全衛生委員会のときに、しっかりとまとめた内容を、毎回キチンと発表するのはユウさん唯一人でした。そんなあなたがこのワードを知らない訳はありませんよね)

詳しいことは書けないけれど、俺を信頼してくれて教えてくれた検査データと薬を見れば、ユウさんがもうキワキワな状態だと分かる。

最初に病気の話をしてくれたとき、「付き合いもあるだろうし、大変でしょう。無理せずにやっていきましょう」という今の医師を、理解あるとてもいい先生だとおっしゃってましたね(ニュアンスが違ってたらごめんなさい)最初それを聞いて私は「ヒドイなぁ」としか思わなかったんだけれど、プロである専門医の治療方針を、そう簡単に否定できるわけがないと思い直しています。私に話してくれたユウさんの人生を、価値観を、その先生もきっと肯定されてのことだとわかったからです。

……………………………………………………
「たとえば、糖尿病の患者さんと接するときは、病気の完治をすぐに求めるのではなく、少しずつでも良いので、着実に血液検査で良い結果が出ることを目指します。患者さんが日々の生活習慣を見直し、良い検査結果が出た場合、大きく取り上げて一緒に喜びます。たとえ他の検査結果に悪い数字があっても、それを注意することはほんのわずかに留めます」
(裴英洙『トリアージ仕事術』ダイヤモンド社より)

……………………………………………………
シングルヒットを積み重ねれば、「ちりも積もれば」敵に、良い循環に入り自然と大きな事を成し遂げられるというこのビジネス書をここで引用するのはちょっと悪意っぽくもあるにせよ(わかりやすいから引用しました)こういったスタンスが一般的なんだろうなと想像がつきます。
……………………………………………………

しかし一方で…

……………………………………………………
「『医者は患者に迎合的な姿勢を見せるよりも、パターナルに指導するほうがよい』という佐藤優さんの考えにしたがえば、私は患者・佐藤優さんにとって『物足りない医者』だったと思う。私は基本、患者さんに迎合的だ。医療現場におけるパターナリズムの重要性は、もちろん私も知っている。患者の意向をなるべく尊重しようとする私の医療は、ともすれば『中途半端な医療』『不完全な医療』になってしまうリスクがある。だから腎臓病の主治医として『ベストの治療』が佐藤さんにできたのかと問われれば、けっして自信をもって『イエス』と言うことはできない」

「『患者の余命宣告は、基本的に腎臓外来初診時に強めにして、透析導入時にはやや控えめにする』というのが私の基本スタンスだが、どうも佐藤さんの腎臓外来初診時にハッキリと余命宣告をしなかったように思う。本来であれば『透析導入までは、患者さんのお尻を何度でも何度でも叩いて生活習慣改善の応援をする』ところだ。佐藤さんのお尻をどこまで厳しく叩けたか、佐藤さんが自分の余命のことを心配して落ち込みがちになった今、主治医として佐藤さんの治療をやり遂げたという気持ちはあまり持てない」
(佐藤優 片岡浩史『教養としての「病」』インターナショナル新書 集英社より)

……………………………………………………
片岡浩史さんという腎臓病内科の医師はとても誠実で、ここ20年で広まった「エビデンスに基づく医療(EBM)に対して「属性に基づく医療(ABM : Attribute-Based Medicine)という概念を提唱されてたり、「私は『昭和な人間』だ。五十歳を超え、人生の折り返しを過ぎてもなお、青くさいことを考え、泥くさく生きている」(青くさ人間関係モデル『1+1=4』)などといった、主治医を対談相手に選んでこの本を出版することにした佐藤優さんの気持ちがよく分かる、興味深い先生だ。


何故にこんなことになるんだろうか



元々人の死にかかわるような病気の問題を、現状の問題を捉えた上で、真剣に解決しようという、権力や既得権益だとかを恐れない、真摯な医師や、作家やライターさんたちがいる。そういった本や、アップデートされた(されつつある)情報にアクセスできず、病気を悪化させてしまうままにいる人たちが、この国にはたくさんいるだろう。

本を読めない人、正確に言えば、本から情報を得るのが不得意な人って多数派だということをいつも思う(本を読むから偉いってわけじゃないのは言うまでもない。かといって『経験値』のみが本当に役に立つ生きる知恵だと信じて疑わないのも致命的だとここでは言いたい)

でもこの職場で過ごした約5ヵ月間、おもに本から得た糖尿病や糖質制限なんかの問題や健康法についての話題を、お昼休みに臆面もなく話し続けた結果、日頃はテレビや、今だとユーチューブなんかの動画とかから情報を得るのだろう仕事仲間のオジサンたちに、たくさんのことが伝わったし、教わりもした(『SGLT2阻害薬』のこともそのなかで知れた)

そうだ、大事なことを言い忘れるところだった。ユウさん、当初は医師に従ってマジメにカロリー制限に取り組んだんでしたね(それがやがてストレスになってしまったとのこと)でも今は、糖質(主食)さえ控えれば、タンパク質や脂質は摂ってもOK!ってなっているんです。美味しいものが、食べられなくなるわけじゃない。ユウさんに「例えばみんなでおいしいものを食べに行って、『実は今ちょっと…』って、kenziさん言えますか?」って問われたとき、あぁやはり、私とは住む世界が違うんだなぁと思いましたが(私は全然言えるので)今はそうした「ロカボ」な人も、仲間の中に必ずいるはずです。コンビニなんか進んでいて、ヘルシーなお弁当とか、たくさん置いてありますよ。これから楽しんで行こうというユウさん夫婦の時間が、そうしてでも、いつまでも長く続きますように。

こないだウォーキングの途中、冷たく固くなった猫をさわった。
(やわらかくって温かいときって、かげがえのない時間なんだね)

寝てるんだと思ってた(飼い主に会えたよね?)



どうか僕のすべての思いが杞憂に終わりますように。




…………………………………………………

主治医以上に気にかけてアドバイス頂きありがとうございます。

ユウは、自分の病気を受け入れて、自分がやるべき事を全うすること、悔いが残らないようにすること、楽しく余生は過ごす事を目標にしています。

だから、MTの車を購入しいろんな所に行く事を楽しんでます。奥さんと家族と行った所や食べたモノとか景色を思い返しながら。子供達も巣立ちましたが、まだ親が見て無いと不安が有る状態なので、陰で見ながら、こっそりサポートしています。

現状の身体を維持しながら。

それ以上は、望まないように、狭い範囲内で、自分が楽しむ事にしています。病は気からといいますから。あまり考えないようにしたら、気持ちが楽になりましたよ。

(ユウさんからのメッセージ)
……………………………………………



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?