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健やかであるために。

彼女からカップに入った顆粒状の飲み薬のようなものを渡される。味はラムネ味。懐かしい味と言っていいのか微妙な味だ。

彼女はいくつくらいだろう。15歳くらいは歳の差はあるだろう。いや、20歳くらいの違いはあるだろう。
私はおじさんになった。いつのまにか。
もちろん彼女は歳下だろう。結婚はしていないだろう。髪の長さは長いとはいえないだろう。若さは羨ましい。私はおじさんになった。

好感が持てる案内と誘導で、「それではひと口含んで顆粒を飲み込んで下さい。後は自分のペースでゆっくりと全部飲み切って下さい。」と。そしてにこやかに「ゲップは我慢して下さい」と難題を投げかけてくる。年に一回の難題を私はクリアし続けている。つらい。でも、えらい。

この局面はドリフの名場面だ。幼少期、喜劇王志村けんにはとても世話になった。いつも見ていた。だけど、ここでゲップをしてはならない。

彼女に指示に忠実に従い、可動式の台に横たわり右に左にゴロゴロと身体を回転させ、胃壁にバリウムをへばりつかせる。時には息を止めるように指示されたり、逆さまに可動され台から落ちないようにしっかりと手すりを掴む。これはもう筋トレだ。

来年からはもう胃カメラにしよう。しかし、あんなもの口から入れるなんて考えられない。どうかしてるぜ。

すぐに下剤を飲むように案内される。私は外回りの仕事なのだ。それで、一度、大変な目にあった。どうかしてるぜ。夕方、タイミングを見計らい下剤を服用する。便意はまだこない。どうかしてるぜ。

私はつくづくおじさんになった。

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