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死のうと思っているあなたへ 人類最強のドラマーの伝言  #8月31日の夜に

中学2年生のころ。友達のMが、学校に来なくなった。僕一人しか、彼の家に遊びに行かなかったらしい。Mのお母さんは美容院をやっていて、忙しくしていた。

プリント持ってってくれとか、宿題伝えておいてくれとか。なんか、いろいろな教師から言われて、伝達係みたいになってた。

でも、そんなこと僕は忘れちゃうからダメなんだな。僕に頼む方が間違っている。僕は放課後Mの家にたまに遊びに行って、うちに帰って来るだけだ。

僕は僕とて、学校では、全然提出物とか出したこともなかったし、作文とか400字埋めるとか、全然できない。そんな僕が、プリントとか宿題とか遊びに行く間、覚えてるわけがない。

ある日、Mの担任に呼び出された。なぜかうちの母も一緒だった。やばいよ。親も一緒だよ。なんか悪いことしたかな。んで、教師は言った。

「宇田川、Mが学校に来ないのはなんでだ。来るように説得できるのは、お前だろ。お前はMの友達なんだろ。学校に来るように言ってくれないか。」

不思議だった。僕はとてつもない混乱に陥った。だって、あいつは、Mは学校に来ないだけなんだよ。なにか、悪いことをしてるわけじゃないし。その教師はなんておかしなことを言ってるんだろうと思った。疑問に思うし、その教師は間違っていると思った。この世に疑問に思っちゃ行けないことなんてない。んで、僕は言った。

「先生、あのさあ、人生にはいろんなことがあるんだよ。別にあいつのところには行くけど、学校に行けとは言わないよ。必要ないじゃん。」

ただ素直に思ったことを言っただけだったけど、教師は言ったよ。変なこと。

「お前、なんて冷たいやつなんだ。そんなこと言っていいなんて思ってるのか?お前がそんなやつだとは思わなかったよ。お前、ひどいやつだな。」

僕は不思議だった。なんで俺が冷たいの?ひどいの?この人、何を言いたいの?疑問に思っちゃ行けないことなんて、この世界にあるの?悪いこと俺言ったかなあ。混乱したけど、

「先生、あの、学校に来ることばかりが、今やることじゃない。誰だってそうだろ。いろいろあるのが人生だよ。」

まあ、怒られたね。殴られはしなかったかな。よく覚えてないけど。早く解放してほしかったな。怒鳴るから黙ってるしかないよ。こっちは。

「宇田川、もういい。もう、帰れ」

と最後に教師が言ったから、ささっと逃げ帰った。帰り道、母親が

「お前は、立派になったねえ。お母さんは嬉しい。」

うちの親も、とても不思議な人間だ。俺は教師に怒られた直後だよ。親にも怒られると思ってた。

でも誰でも中学校は自動的に卒業するじゃん。けど。結局Mは美容院やってた母親の勧めで、中学を卒業して、ふらふらしてて、1年後に理容美容の専門学校に行きはじめたらしい。

8月の終わりは、若者の自殺率が高いって、ラジオで言ってた。

もうどうしようもない、どこにも行くところがないとか、死にたいとか、思っていうる人がいたら、それを貴重な経験で、不思議だと思った方がいいよ。もうそろそろ終わるから、最後まで読んで。

死にたいという気持ちを若いときに持つということは、これまで人生で経験のないことをしているわけで、それを不思議な体験だと思えればいいんだけどな。誠実に素直に自分の死にたいという思いに対して、なぜだ?ここまで自分はかんがえるのだ?と思えればいいんだな。原因なんて、いろいろだから、考えたらキリがない。犯人探しはやめといた方がいい。なんでそう考えるのだろうって疑問にたどり着けると、そこから始まる人生もあるかもしれない。

人間という存在は、自分の死に誠実に向かい合うことから始まるって、ハイデッガーという人が書いてる。いや、書いてたと思う。ハイデッガーも、そこから人生が始まったのかな。というか、ハイデッガーのキャリアはそこから始まったんだ。だと思う。

絶望を死に至る病などと書いた人もいるけど、逆に、人間はすでに死に至っている生を生き続けているんだ。セットなんだ。生を受け、死ぬことは。自分が選べることじゃない。でもセットなのは誰のせいでもないんだ。犯人はいないんだ。

大学時代に本当に2回自殺未遂をした僕だから、別にあなたが死にたいと思うことを頭ごなしに否定はできない。しないし。してもしょうがないし。でもそれが、本当の気持ちではないことは知っている。後になるとわかるんだ。ただ、すべて終わりにしたいということを狭く表現すると、そう言わざるを得なくなる、思わざるを得なくなるだけだ。

経験から言うと、すべてを終わりにすると決心した後、気持ちがすごくハイになる。人類最強の人間になっちゃう。で、僕は人生最後の記念に何をするかばかり考えていた。ハイなままだと実行しちゃうんだな。

でね。僕は、実際に自殺未遂を2回して、大学生だったけど途中で大学をやめさせられた。このことは今考えると、状況を変える最高の出来事だったんじゃないかな。ま、何もかも終わりになった。でも学校を追い出されても、人生にはいろいろあるんだ。

僕は何もかもを終わりにしたいと思っていただけだ。死にたいという気持ちを持つのは、その表現のひとつだ。数ある表現のひとつだ。だから僕は自殺未遂をしたんだ。

でも、思っちゃいけないことなんて世界にはないだろ。表現しちゃ行けないことなんて世界にはないだろ。誰がそう決めたんだ。でね、終わりにする、人類最強になる、実際に実行に移すと、後悔することばかりだった。でも誰も人類最強の人間は止めることはできないんだよ。それは、ウィトゲンシュタインという人がそう書いている。と思う。

でも、子供の頃、素直になんでも言えた僕が、いろいろあって、わかったことがある。

思ったことや、疑問に思うことを口にできなくなったり、言っちゃいけない、思っちゃいけないと思いはじめる時期が人生には来るんだ。そういう時期が来ると、混乱するし、人生はいろいろなんだな。常識が身につくって、苦しいことなんだ。

ところで、Mは、普通に暮らしている。かえって僕の方が特殊な生き方になったかな。精神障害者にもなったし。

僕が生き延びたのは、たまたまだと思う。運だ。2回目の自殺未遂をしようとしてたとき、人生の終わりにジャズのライブを見て死のうと思った。そしたら、ライブが終わって、サインをもらって、さああとは何もかも終わりにするだけだと思ったとき、ドラマーのエルビン・ジョーンズという人と会話できた。最後に言われた。

「Ken, keep loving music, and wait natural death.」

人類最強の人間に人類最強のドラマーからの命令だな。

学校に行けないことはよくないとか、親を安心させるために、どこかに行ってごまかさなきゃと思いこむことのほうが、不思議だということに、気がつくことが無理になったあなたへ。疑問に思っちゃ行けないことなんて世界には何もないんだ。

ただ、2回人類最強になった僕から命令すると、自動的に中学は卒業するし、自動的に自然な死がやってくる。それまで待て。

#エッセイ #ノンフィクション #メンタルヘルス #8月31日の夜に

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