食を科学したい1/2:What To Cook
動機
普段料理を自分でしたり、ご飯を食べたりしていて、食に対して、考えることがある。特に、『食に対する美味しさの科学』に対して、定量的に「どのようなものが美味しくて、どのようなものがまずいのか」、また「どのようなものが食べることができて、どのようなものが食べることができないのか」がまとまっている記事が見当たらない。
特に「食に対する科学」ということを考えたときに、一番最初に思いつくのは、「栄養学」であるが、栄養学の本を見るとカロリーや、各栄養素のグラムという定量的な指標はあるものの、その栄養や食材の組み合わせ、どの調理方法が美味しさに繋がるのかが体系化できていないと個人的には思う。
理系出身の私が、ついこのようなことで自分なりに考えた結果として、今回は「物理」という科学の道具を使って食を考えたときに、どのような風景になるのかを考えたいと思う。
料理の構造的整理
料理を次のように整理する。
What To Cook:何の食材/調味料で料理するか
料理は有機物(一部無機物)をベースにされている。料理をする上で食材や調味料は料理をする過程でいっぺんに混ぜることはないが、基本的に料理を決定する上で何の食材/調味料を料理するかで、料理が決定する。
How To Cook:どう料理するか
集められた食材/調味料をどの順番でどう混ぜるか、その過程で焼くか、炒めるか、ミキサーにかけるか、その時系列と手法の羅列により、料理が構成される。
要素分解したのち、それぞれを科学的にさらに分析してみたい。
What To Cook:食のピラミッド
料理を作る上でどの食材を選ぶべきか、既存にある五大栄養素で整理する。
特に五大栄養素のうち、体を動かすのに必要な三大栄養素のタンパク質、炭水化物、脂質を3角形の土台として、体を整えるために必要な残りのビタミンとミネラルを上部に置いてみる。
料理をする上で、三大栄養素のバランスはやはり料理の要であり、バランスのよい料理が美味しい。(ただし、ポテトチップスなどを考えるとタンパク質はなくても美味しく感じるかもしれない。特に現代人はタンパク質が足りていない)
先ほどは栄養素ベース(物質ベース)で考えていたが、さらにそこから味覚という舌で感じる要素をプロットしてみる。物質とそれを享受する人間の化学反応が料理とすると、やはりこの要素は欠かせない。味覚として有名な5つの味と第六の味覚である、旨味をプロットする。それぞれの味覚と五大栄養素をの関係を見てみると、直接結びつくのは、ビタミンとミネラルかと思う。味覚に関して、経験上一つの料理に全ての味覚がある必要はない。特に酸味と辛味と苦味に関しては、そのような味覚がない料理が大変であるので、マストではない気もするので、3つを並列に記載した。また甘味と塩味は食事のベースになるが、それぞれ両方が必ずしも必要かと問われるとそうではないので、並列に記載した。
味のベースには何かしらの旨味が必要であると思っている。
さらに、旨味の下のレイヤーに「コク」、一番上のレイヤーに「香り」があるのでないかと思っており、上に行けばいくほど、食べ物を味わう上で早く感じることができ、下に行けば行くほどゆっくりと感じることができる。
食のピラミッド:例
上記に代表的な食べ物を列挙してみた。このように整理すると、料理をする上で、どの組み合わせで料理が作られているか、想像しやすい。
食材が最小限で成立する食べ物から考える
それでは、この三角形を使って、既存の料理を整理したいと思う。特に食材数が少ないものに着目する。ペペロンチーノは、最小限の食材でかつ、人気の料理である。食材をこの三角形にプロットすると上のようになる。パセリの香り、辛味のレイヤー、塩の塩味、にんにくの旨味レイヤー、炭水化物・脂質がバランスよく配置されている。バランスの良さが、おいしさを決める一つのポイントかもしれない。
日本の料理でいくと、卵かけご飯は上記のようにシンプルな構成になる。こちらもバランスよく配置されている。
たまごかけご飯はそれ自体では美味しいが、辣油とネギをかけるとさらに三角形のバランスがよくなる。ちょい足しをするとしたならば、この三角形の補完を考えると、さらにおいしくなるかもしれない。この場合面白いのが、卵かけご飯単体だと、醤油の香りがたつが、ネギが入ってくるタイミングで香りの強いネギに負けてしまい、トップの座が変わることであろう。醤油の香りを味わいたいのであれば、ネギをかけるのは得策では
ない。料理の足し算引き算はそれぞれ活躍する食材を選びつつ、有限の枠の中で何をひきたたせるかを考えるものかもしれない。
いくらたくさんの食材をまぜたところで、一口にする量は限られていて、舌で感じることができる味覚も限られている。その有限性の条件の中でどの部分を立たせるかを考えることが料理では重要ではないかと思う。また長年経験を積んだ料理人は食材の無限の組み合わせを試し、自分の舌でPDCAをまわし、その感覚や自分なりのセオリーを見つけているのではないかと想像し、料理人を尊敬している。
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